NEWS
2018.09.20
【ミラノ2019春夏 ハイライト1】ミラノコレ開幕 ジル・サンダー、N°21らが描くセンシャルでデコラティブな女性像
このところ快晴の続いてきたミラノで、ファッションウィークの初日もまだまだ夏の暑さを十分残した好天でスタートした。今回はパリでショーを行う「グッチ(GUCCI)」やデザイナー交代のためにショーを行わない「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」等、ミラノ目玉ブランド達の不在もある中、2日目に控えた「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」のリナーテ空港を使ってのメガショーや、公式カレンダーに入った「アニオナ(AGNONA)」、イタリアの老舗ブランド「フィラ(FILA)」など、話題のショーも多い。
初日はそんな中、「アルベルト ザンベッリ(ALBERTO ZAMBELLI)」で幕を開け、「アルトゥール アルベッサー(AUTHUR ARBESSER)」などのミラノの注目株から、「ジル・サンダー(JIL SANDER)」、「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」、「ヌメロ ヴェントゥーノ(N21)」などの大御所陣、そして「モンクレール(MONCLER)」は、ビデオインスタレーションで「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」のコレクションを発表した。
ジル・サンダー(JIL SANDER)
就任以降、毎回ショー演出のテイストを変えているクリエイティブ・ディレクター、ルーシー&ルーク・メイヤーによる「ジル・サンダー」は今回、ファッションウィーク初日に登場。前回にはメンズコレクションも登場したが、今回はウイメンズのみ。場所もこれまでのニュートラルな雰囲気とはがらりと趣向を変えて、コヴァというミラノの老舗菓子店のパネトーネ(クリスマス菓子)工場の廃屋を使い、会場内には木や花を持ち込んで自然光をふんだんに活かしたナチュラルテイスト溢れるショーを行った。
全体的に流れるのはユニフォームのような実用的、機能的なテイスト。ボックスシェイプのボリュームトップやロングシャツなどと、ワイドパンツやロングスカートまたはマイクロプリーツのミニスカートのセットアップが様々な組み合わせで登場。張りのある素材とソフトに流れる素材または透け感の素材がミックスされる。「ジル・サンダー」らしいミニマルでエッセンシャルなムードの中にも、背中や胸元が大きく開いていたり、袖口部分が強調されるなどの驚きのあるディテールや、厚底の下駄風サンダルや足袋風ブーツなどのユニークな小物類が登場。または肌の見えるニットや透ける素材など、デコラティブでセンシュアルな要素も各所に盛り込まれ、コレクション全体にリズム感や高揚感が溢れていた。
アルベルタ・フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)
今シーズンの「アルベルタ フェレッティ」は、ちょっと懐かしく若々しいカントリー&サファリテイスト。レトロな感じのカットレース使いのシャツやワンピース、透け感のある素材やニットで肌の見えるドレスなどと、トラベラージャケットやジレ、ミリタリーパンツやワークパンツ風ショーツ、ウォッシュトデニムなどの元気溢れるアイテムがミックスされている。
テーマは「EVASION OF CONTEMPORARY INNOCENCE」。ナチュラルでイノセントな現代的な女性を応援するコレクションだ。が、フェレッティが創るゆえに、デイリーウエアさえクチュール的な美しさが備わる。BGMとして流れる「ホテルカリフォルニア」にも影響され、昭和世代の筆者にとっては懐かしいイメージを抱かずにはおれず冒頭ではレトロ云々と書いたが、それはミレニアルズにとっては新鮮なデイリーウエアとして、大きな注目を浴びることだろう。
ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)
今回の「ヌメロ ヴェントゥーノ」の会場には妖艶な赤のライト。前回の健康的なお色気から一転して、センシュアルな大人の女性像が展開される。「BARE ESSENTIALS」というテーマで謳っているように、コレクション全体において、プリントや細かい装飾を“必要最小限”なところまで排除し、シェイプやボリュームへの細
心の計算がなされている。
シンプルなシェイプのブラックミニドレスのシリーズで始まるが、それはフェザーや大きなリボンなどの強調されたディテールやまたは光沢感のあるエコ・オーストリッチやシフォンなどの特徴的な素材感で演出される。中盤からはもうひとつのデラクアカラーであるヌードカラー、そして後半に向けてネオンカラーへ。そこではジャケットやパーカなどメンズライクなアイテムを肌に直接纏ったり、マイクロミニと合わせることで、お得意のマスキュリンとフェミニンさのミックス技を入れている。クリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・デラクアが追求してきたセンシュアリズムを、彼の原点に返って見直したようなコレクションだ。
モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)
2月に発表されて大きな話題をさらったモンクレール(MONCLER)の新プロジェクト、モンクレール・ジーニアス(MONCLER GENIUS)。その際には様々なバックグラウンドを持つ、今世界で最も旬な8人のデザイナー達が、“モンクレール”というキーワードを基に作り上げた8つのカプセルコレクションを同時発表したが、その後、これらのコレクションは異なるイメージのローンチプランを持って毎月個々に展開され、年2回のコレクション発表というこれまでの既存のファッションシステムを揺るがしている。
そしてこの「The Next Chapter」で、同プロジェクトは次のステージへ向かう。今回は5デザイナーがそれぞれの独特なビデオインスタレーションによってコレクションを発表。「モンクレール 1952」はその都会的でカラフルなコレクションをビデオコラージュで表現し、「シモーネ・ロシャ」は世界の庭園からインスピレーションを受けて花びらや葉を用いたコレクションを幻想的な映像で見せた。「クレイグ・グリーン」は、テントと凧からインスピレーションを受けたコレクションを彫刻的なテンションや独自の防御的側面をビデオの中に再現し、「ノワール ケイ ニノミヤ」は反復性やモジュール性を持ち、抽象的で幾何学的なコレクションを3Dのバーチャルガーメントモデルを使って表現。「フラグメント ヒロシ・フジワラ」 は、「ワールドツアー」をテーマに旅や音楽からインスピレーションを受けたコレクションをシネマティックなアニメーションで表現している。
グッチ(GUCCI)
今回は“フランス三部作”の最終作品としてパリでコレクションを行う「グッチ」だが、ミラノコレクションへのリスペクトを込めて(?)、「グッチ・ハブ」でマイケル・クラークによる最新作パフォーマンス「to a simple, rock‘n’ roll . . . song」を上演。エリック・サティ生誕150周年へのオマージュとして、サティのメロディに乗せたスローテンポなパフォーマンスから、デヴィッド・ボウイのアップテンポなナンバーまで。終盤にはグッチの最新コレクションを纏ったパフォーマーたちも登場した。
ブルネロ・クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)
「ブルネロ クチネリ」はプレゼンテーション形式でコレクションを発表。「RUSTIC CHARM & PURE SENSES」というテーマで、情報やイメージが氾濫する現代の消費社会の中で結局行きつくのは、時を経ても変わらないオーセンティックでシンプルなものなのではないか、という結論のもと、リネンやコットンをメインとした自然素材で、白、ベージュに差し色のサフランイエローやブルーグリーンを加えた自然の色を使ったコレクションを発表。サファリやエスニックの要素や同ブランドお得意のメンズ風テーラーテイストも入れつつ、ラグジュアリーなクチュール感が漂う。
取材・文:田中美貴