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2018.06.25
【2019春夏パリメンズ ハイライト4】メンズモードのすべてはパリにある
6月24日(仏現地時間)、パリ・メンズ・ファッションウィーク(以下パリメンズ)が閉幕した。最終日は、「ランバン(LANVIN)」「アニエス ベー(agnès b.)」、「バルマン(BALMAIN)」「ポール・スミス(Paul Smith)」「クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)」「ダンヒル(DUNHILL)」「ケンゾー(KENZO)」などがショーを開催した。前夜のショーを含めると約6日にわたって行われたパリメンズだが、その求心性はさらに増している。日本でいういわゆる“モード”だけでなく、ストリート発のデザイナーも増え、ミラノやロンドン、ニューヨークから発表の場を移したブランドも多い。世界最強のファッションキャピタルとして、パリは特別な存在として君臨し続けるだろう。
ケンゾー(KENZO)
パリメンズの幕引き役として、すっかり定着した「ケンゾー」。今シーズンは、カルチェラタンでジャズクラブ仕立てのセットを組んでショーを開催した。ジャズバンドの演奏、花棚のセットにビームが放たれたところで、ショーがスタート。最初にウィメンズのルックを披露した。ウィメンズコレクションは、クラシカルなアイテムをケンゾー流に提案。ドット、フラワー、チェック、パイソン、レオパードなど甘めの柄と辛めの柄を、切り替えやレイヤードの手法でミックスした。カラーもヴィヴィッド、ブライト、スモーキーと様々なトーンが登場。色に溢れたコレクションだ。シルエットは、フリュイド、フィット&ボリューム、タイトと多様性を見せた。
メンズは、レトロなカジュアルやワーク、そしてテーラリングを提案。色は、カラフルなものと秋冬色のものが混在。褪せた黄色やオレンジ、ブラウンとネオンカラー、ヴィヴィッドカラーなどが登場した。シルエットはいずれもリラックスしたもの。タックの入ったパンツや、ショートパンツ、軽やかなジャケットでフュリュイドシルエットを描く。柄はチェックやストライプ、キューブが目に飛びこみ、レトロな雰囲気が広がった。
ポール・スミス(Paul Smith)
モンマルトルの劇場で、ナイトクラブ風のセットを組んだ「ポール・スミス」。ブリティッシュスタイルに、様々なサブカルチャーの要素をミックスしたコレクションを発表した。
メンズコレクションとウィメンズコレクションが交互に登場し、両コレクションの統一性を高めた。ショーの序盤は、クラシカルなテーラリングを中心としたストーリー。チェックなどの英国調のパターンではあるが、ビッグでソフトな仕立て。技術革新により、生地を半分以下に軽量化したからこそできるシルエットだ。上下異なるチェックを合わせたり、大きなドット、コントラストの効いたブロックチェックをインナーに合わせたりするなどポールらしい遊び心を感じさせる。
中盤は、ワークジャケットやボンバージャケット、シャツをキーとしたレトロなカジュアルのストーリー。ダークカラーがベースで、デザイナー初期の時代にポールが考案したフォトグラフィックも採用した。ショーのラストは、レザーのロングコートなど、艶感のあるルックで締めくくった。
バルマン(BALMAIN)
今シーズンは、ぐっと明るく快活なイメージにシフトした。ショーの前半には、ストライプやボーダー、錨(いかり)モチーフなど、マリンイメージのルックが次々に登場。レッドやブルーなどコントラストの効いたスポーティーなカラーに目が奪われる。しかし、そこはクリエイティブ・ディレクター、オリヴィエ・ルスタンが手がける「バルマン」。ただのマリンでは終わらせない。スパンコールを贅沢に使用したり、ウィメンズのドレスに長いストライプのトレーンをあしらったり、大胆かつ前衛的だ。ショーの後半は、黒のスパンコールにスリップオンや白ソックスなど、BGMに使用したマイケル・ジャクソンにオマージュを捧げたかのようなルックを披露した。ショーのフィナーレは、オリヴィエが赤のボーダーシャツを着てモデルたちと登場。若さ溢れる快活なイメージでショーを終えた。
ダンヒル(DUNHILL)
リセの回廊でショーを行った「ダンヒル」。クラシカルな建築物とグリーンをバックに現れたのは、60~70年代を思わせるエレガントなルックの数々だ。アシンメトリーで着丈の長いジャケットのセットアップ、遠目でも上質さが伝わるレザージャケット、風になびくビッグなアウターなどを、ワントーンやダークトーンなどで組み合わせ、気品ある男性像を描いた。注目は、裾の横にボタン付きスリットが入ったフレアパンツ。エレガントなレザーシューズを合わせているところが新鮮だ。
アニエスベー(agnès b.)
「アニエスベー」は、ワークウェアをアニエスらしくパリのエスピリを効かせてアップデートした。ショーの冒頭ではオールインワインを着たモデルがモップで床を拭きながら登場。その後もオールインやサロペット、吊りズボンなどのルックが続く。ショーの中盤からは、パリの日常を切り取った多様なルックを披露。中でも、カラフルなグラフィティーパターンが目をひいた。また、会場の壁にはTシャツを展示。これはアニエスの仲間のアーティストたちの作品をプリントしたもので、ショーの中でもルックのインナーとして組み入れていた。
クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)
写真家・荒木経惟氏の亡き妻への思いを綴ったノートをゲストに配った「クリスチャン ダダ」。以前も荒木氏とコラボレーションしフェティッシュな世界を提案したが、今シーズンは、荒木氏が妻の死後に撮影した写真の数々をコレクションに取り入れ、同氏の思いを表現した。老若男女のモデルたちが見つけたドライフラワーの花束。これは同氏の写真の中に出てくるもの。荒木氏の妻へ捧げたものだろう。会場として選んだリセの回廊に現れたのは、白が多いピュアなコレクション、クリアな白から、グレーがかった白、部分的に汚れた白と、白の多様性と儚さを感じる。アイテムでは、ビッグアウターが印象的だ。中には、スーパービッグなシャツが登場。裾がドレスのトレーンのようになっており、インパクトを与えた。ワイドスリーブを半分に切ったかのような袖や猫モチーフもユニークだ。ショーのフィナーレは、モデルたちが色とりどりのプリント生地をまとって登場。アートなショーの余韻を残して、ショーを終えた。
取材・文:山中健