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2018.06.24

【パリメンズ2019春夏 ハイライト3】「ディオール」がキム・ジョーンズによる初コレクション発表 存在感を増す日本人デザイナーたち

 今回のパリ・メンズ・ファッションウィーク(以下パリメンズ)での目玉が、「ルイ・ヴィトン(LouisVuitton)」と「ディオール(Dior)」の新アースティックディレクターによるショー開催だ。「ルイ・ヴィトン」はヴァージル・アブローを迎え、新たな世代とターゲットに向けたコレクションを発表。一方、「ディーオール」は、「ルイ・ヴィトン」から移ったキム・ジョーズによるショーを行った。また、パリメンズにおいて存在感を示して久しい日本人デザイナーたち。そこに、ミラノでコレクションを発表していた「ヨシオクボ(yoshiokubo)」や「サルバム(sulvam)」も、パリに発表の場を移しコレクションを発表。日本人デザイナーの存在感が増している。

ディオール(Dior)

 「ディオール」は、パリ・フランス共和国親衛隊兵舎に会場を設置し、ショーを行った。会場に入ったゲストが目を奪われたのが、コンテンポラリーアーティストのKAWSのアイコニックな巨大オブジェ。目がバッテンになっているお馴染みのオブジェは、なんと全てバラで作られ、その豪華さに圧倒される。そのオブジェを囲むように円形のランウェイを設置。中央のシートには、ヴァージル・アブロー、エイサップ・ロッキー、ヴィクトリア&ブルックリン・ベッカム、ケイト・モス、ナオミ・キャンベル、村上隆、阿部千登勢、野村周平、秋元梢らセレブリティーが着席。同メンズのエポックとなるショーを見守った。

 キム・ジョーンズによる初コレクションは、キム・ジョーンズらしいワークやカジュアルをモードに昇華させたものであった。まばゆい白や淡いパステルのボンバージャケットやアノラック、ワークジャケットのルックが、しなやかなアシンメトリーのセットアップとともに登場。シアー素材も多用され、サマーコレクションにふさわしい開放感とフェミニンなムードが漂う。中でも目をひくのが、ショー後半を占めたフラワーパターン。ハンドペイント調のもの、前衛的にミックスしたものなど様々なパターンが広がる。花々の中には「ディオール」のアイコンの一つである蜂をポップに描いたものも見られ、遊び心を感じさせる。メゾンのロゴやアイコンもキムらしい解釈で生まれ変わった。シアー素材のトップスやスニーカーに総柄であしらい、ベルトやキャップの金具に使用した。

 ショーの締めくくり、ムッシュ・ディオールを彷彿させるブラックのセットアップ。ムッシュ・ディオールのプライベートと作品からインスピレーションを得てつくりあげたという本コレクション。新たな出発にふさわしいものであった。

「ディオール」2019春夏コレクション

アレキサンダー マックイーン(Alexander McQueen)

 「アレキサンダー マックイーン」の2019年春夏コレクションは、20世紀最も重要な画家の一人とされるイギリス人画家、フランシス・ベーコンと、フランシス・ベーコンの絵画制作に使われた写真を撮影したことでも知られるジョン・ディーキン、そしてロンドンの歓楽街、“ソーホー(SOHO)”にインスピレーションを得た。コレクションのベースとなるのはアレキサンダー・マックイーンらしい端正なテーラリング。そこにフランシス・ベーコンが作品で表現した人間の顔のデフォルメや歪みを加えていく。人の顔をモチーフにした直接的なパターンや、様々なカラーの入り混じった抽象的なペインティングがその代表だ。さらには、トレンチコートやテーラードジャケットなど、クラシカルなアイテムを解体し、異なるアイテムと繋ぎ合わせて再構築するなど、アレキサンダー・マックイーン独自の解釈でアイテムにデフォルメを加えていた。

「アレキサンダー マックイーン」2019春夏コレクション

トム ブラウン(THOM BROWNE)

 「トム ブラウン」は、子供の遊び場、風船、花が設置されたガーデンのセットの中でショーを行った。ヒゲととんがり帽子を着けた2人のモデルが登場。芝刈りなどを始め、のどかでハッピーな雰囲気が広がる中、ショーがスタートした。

 今シーズンは、真のアメリカンプレッピーを、ファンタジーのようなポップで夢のある世界感に落とし込んだ。ピンクやイエロー、ミントグリーン、ライトブルーにオレンジ。ロリポップのような可愛らしいカラーパレットで彩られた可笑しいほど大げさなプロポーション。シアサッカー、ギンガムチェック、オックスフォードストライプ、ラグビーストライプなど、用いられるバターンや素材は定番でも、組み合わせの妙によってハッピーなアイテムに仕上げている。また、ボウラーハットと丸眼鏡で完成させるスタイリングに、ザリガニやカニの刺繍、クジラ型のバッグなどユーモアあふれるモチーフで、トム・ブラウン流プレイグラウンドを表現した。

 フィナーレは、男性モデルが2人ずつ腕を組んだり、手をつないだりして続々と登場。それまで披露していたカラフルなピースが連なり、会場全体にレインボーカラーが広がる仕掛けだ。ハッピーな日常とダイバーシティーを訴えてショーを締めくくった。

「トム ブラウン」2019春夏コレクション

アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)

 

 「アン ドゥムルメステール」は、会場に褪せたピンク色のランウェイを設置してショーを行った。その色が表すように、コレクションはクラシカルなムードに包まれた。同ブランドが得意とするレースや白いシャツを使用したレイヤードルックを軸に、首にレースのついたハイネック、大きな飾り襟のシャツ、ブルマーなど貴族趣味を加えた。カラーはモノトーンが中心だが、褪せたパールカラーも見られる。そして、ベールをつけた帽子もこのショーのキーだ。夏の日差しを避ける古き良き時代の貴婦人を思わせ、優美なムードをつくりあげた。

「アン ドゥムルメステール」2019春夏コレクション

ヘンリック・ヴィブスコフ(Henrik Vibskov)

 

 「ヘンリック・ヴィブスコフ」の2019春夏コレクションは、“Due to Sudden Weather Change(急な天気の変化のせいで)”をテーマに、風をインスピレーションにコレクションを紡ぎ上げた。ショー会場には、大きなプロペラを設置。それを昔の飛行隊のようなコスチュームのキャストが回したところでショーがスタートした。テーマに沿い、レトロなアビエイターを思わせるアイテムや、風にとらわれたようなアウター、紙飛行機やパラシュートをイメージしたアイテムなどを提案した。

「ヘンリック・ヴィブスコフ」2019春夏コレクション

サカイ (sacai)

 

 「サカイ」はブランドのシグネチャーであるハイブリッドを、春夏らしく軽快に、スポーティーなムードで表現した。印象的なチマヨ柄でネイティブな雰囲気を醸し出しつつ、パーカーやハーフパンツ、アノラックなどアクティブなアイテムを繰り出していく。デニムジャケットが露出するツイードジャケットやMA-1とデニムジャケットの融合、袖にジッパーを施すことによってマントのように着られるシャツやアウターなど、アイテムの本来の構造を、サカイらしい自由な発想で変換した。そして、繊細な線でニットやバッグに描かれるアートは、世界的に有名なタトゥーアーティスト、ドクター・ウー(Dr. Woo)によるもの。また、今シーズンはナイキ(NIKE)とのコラボレーションを発表。「sacai × Nike」のハイブリッドスニーカーは2019年1月に発売予定だという。

「サカイ」2019春夏コレクション

メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)

 今年3月、2018年秋冬コレクションでは東京で圧巻のショーを繰り広げた「メゾン ミハラヤスヒロ」。今シーズンはコレクション発表の場を再びパリへと移した。

 会場には、レコードプレイヤーを数箇所に設置。そのレコードプレイヤーの音がショーのBGMだ。

 アナログな音が醸し出す独特の雰囲気の中で発表された本コレクション。ブランド20周年という節目の年、今回も先シーズンに続き、これまでのコレクションを見直して、新しいものへとリプロダクトしていくことにフォーカスを当てた。ブランドらしいモード、ワーク、テーラリングの融合、デニム使い、それらが今シーズンは複雑なパターンで構造的に組み合わせられて、1つのアイテムとして表現される。ジャケットを何枚も重ね着したようなディテールやスカーフ使い、複雑な袖の重なりなど、ファッションにおけるステレオタイプを打ち破っていく。三原康裕が、“ファッションとは何か?”と今一度自身に問いかけながら紡ぎ上げたという今シーズンのコレクション。日常とアヴァンギャルドの間を行き交いながら、ブランドとしての新たな時代への挑戦を見せた。

 ショーのラストに登場した三原が、レコードプレイヤーを止めて歩くという、アナログなパフォーマンスでショーを締めくくった。

「メゾン ミハラヤスヒロ」2019春夏コレクション

ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)

 

 左岸のリセの図書室で行った「ホワイトマウンテニアリング」のショー。ロケーションに相応しい若さに溢れたルックでスタートとした。赤、青、黄色などコントラストを効かせてアウターに配色。マドラスチェックやカモフラ調のチェック、カレッジロゴなど様々な柄と合わせ、パターン・オン・パータンの楽しさをふんだんに伝える。ショーの中盤になるとミリタリーカラーのストーリーに移行。ラストは、アディダスとのコラボコレクションで締めくくった。ショーの中では、「イーストパック(EASTPACK)」とのコラボアイテムも披露した。

「ホワイトマウンテニアリング」2019春夏コレクション

 「サルバム(sulvam)」(写真左)は、左岸のクラシカルな会場でコレクションを披露。これまでのイメージを変え、レースなどを使用した優美なルックを提案した。また、「ヨシオクボ(yoshiokubo)」(写真右)は金庫の前でショーを開催。金庫破りのギャング軍団をイメージさせる、アウトローなルックを披露した。PVC素材、ギラついた装飾、マフィア風スーツはストリートギャング風ジャージルック、そして同ブランドらしい総柄ルックなどが印象的であった。

「サルバム」2019春夏コレクション

「ヨシオクボ」2019春夏コレクション

 

取材・文:山中健

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