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2018.11.21
「ルクア大阪」開業以来最大の売上規模へ 春・秋の改装が起爆剤に
樋口尚平の「ヒントは現場に落ちている」 vol. 58
大阪・梅田の複合商業施設「ルクア大阪」が、好調なシーズンを送っている。今年、関西一円では、地震や台風など天災による被害が相次いだため、一時的な閉館を余儀なくされた施設が多かった。「ルクア大阪」も営業日数が減少する苦しい状況におかれたが、4~9月の累計で前年同期比2ケタ増と順調な推移だった。今秋以降も好調を持続していて、8月下旬以降、五月雨的に新規導入したテナントなども貢献している。
館の世界観の発信力が強まる
売り上げが伸びてきた「ルクア」6階のヤングレディスフロア
「ルクア大阪」は旧本館の現「ルクア」(東館)と、JR大阪三越伊勢丹の棟を居抜き改装してオープンした「ルクア イーレ」の2館体制の商業施設だ。JR大阪駅の改札口とは歩行者通路で連絡しており、梅田地区有数の好立地である。今年4月1日、1年ほどクローズしていた地下2階部分(三越伊勢丹のデパ地下跡)が、新しいスタイルの飲食関連フロアとして全面オープン。2015年春の開業以来のフルオープンに至った。それまでは、旧館のコンセプトが残ったフロアや区画があり、完全な「ルクア大阪」の売り場を表現するまでには至っていなかった。
その点で今シーズンは――4年目にして、ではあるが――ようやく館の世界観が整った時期と言えるだろう。ターミナル立地というアドバンテージはあるが、総売り場面積が5万3000平方メートルと中規模の百貨店並みで、運営しながら“居抜き”改装でテナント構成を整えていくことが、実はかなり骨の折れる仕事ではないかと、取材を通じて感じた次第である。
館のコンセプトが完全な形になったシーズンという訳ではないだろうが、今期の売上推移は順調だ。前述したが、4~9月の全館の売上推移は119.9%と2ケタの増収を達成した。9月単月では、台風などの天災で2日間、閉館したが、既存店ベースは前年をクリアした。健闘している商材は化粧品関連で、石鹸や香水類も好調だという。主に「イーレ」2階に集積しているテナント群だ。同階にテナントとして入居する「isetan」の化粧品売り場も好調だという。インバウンド客の利用も増えている。コスメ関連は“自家需”に加え、ギフトのニーズも高いようだ。
アパレル、欠品や機会ロスが減少
「ルクア イーレ」8階に導入した「サンワコーヒーワークス」
衣料品関連は総じて前年並みの推移で、堅調な推移だという。天災続きの今シーズンを考えれば、健闘していると言えるだろう。在庫や売れ筋の管理をデベロッパー側とやり取りしながら運営する手法、またその精度が高まっていることが、健闘している要因らしい。その成果として、欠品や機会ロスが減ってきている。今年の10月は昨年よりかなり気温が高めだったそうだが、売れ筋をうまくコントロールすることができた。
「ルクア」館で伸びているのが、6階のレディス。「ローリーズファームエト」「フリーズマート」「ミスティック」「ピーチ・ジョン・ザ・ストア」「マーキュリーデュオ」「ムルーア」「シェルターラボ」「プラザ」などのヤング系レディスブランドが集積している。今秋以降の伸びは120%と好調な推移だ。同様にメンズでは、7階フロアが好調。「アーバンリサーチストア」「フリークスストア メンズ」「アダムエロぺ オム」「ルイス」「ティーケータケオキクチ」「モンキータイムビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」などのショップが軒を並べている。20代顧客の掘り起こしに力を入れてきたそうだが、その成果が表れてきた。
そのほか、興味深い動きをいくつかご紹介する。昨年、「ルクア」館1階にオープンした「コンバーストウキョウ」だが、2年目に入り、さらに売り上げが伸びている。前年比30-40%増で推移しているそうで――1階入り口という恵まれた場所ということもあるだろうが――着実に顧客を増やしている。地下1階に出店する「ユニクロ」と「ジーユー」の複合店舗も、2年目の方が売り上げは伸びているという。
また、「イーレ」の8階では、非アパレルテナントを導入したことで、顧客の流れが変わった。同8階はアパレル主体のメンズフロアだが、周辺をファッション関連テナントで囲まれた“平場”にコーヒーショップ「サンワコーヒーワークス」を今秋オープンした。コーヒー豆なども販売する個性派ショップで、コーヒーを飲みながら、周囲のショップを眺めることができる。やや価格が高い商材が集まる同フロアの感度に合ったショップを導入し、回遊性をさらに高める狙いがあった。女性客の利用もあり、反応は上々である。
非アパレル以外では、今年春に開業した地下2階の飲食店テナント群も、その80%以上が順調な推移だという。思いのほか、“イートイン”の需要が高かったようだ。各種メディアで紹介された店舗へ行き、その場で“追体験する”というユーザー心理が働いたのではと分析している。ちなみに同館では、飲食を「流行や自己表現の手段としてのファッションとして、カテゴライズできるかどうか?」を意識している。そのコンセプトが、ユーザーにある程度、伝わっているのだろう。
今期は開業以来、最大の売上規模に達する見通し
今期は開業以来、最大の売上規模に達する見通しだ。初年度の計画が770億円で、実績は761億円だった。このまま行けば、2018年シーズンは初年度計画の770億円を超える推移だという。
春と秋の改装では、飲食系や雑貨系のテナントが増加したこともあり、全館では非アパレル系の店舗数が増えている。今秋も、国内2店舗目のコスメショップ「ニックス」や、パルコがプロデュースするアクセサリー・雑貨ショップ「スペシャルメドレー バイ ミツカルストア」など、新しいタイプの非アパレル系テナントを導入している。
当面の課題はないと言うが、中期的には20代前半の客層を積極的に取り込もうとしている。5年後の主要顧客になってもらうための“布石”である。併せて、コスメ関連フロアも強化ポイントだ。
樋口 尚平
ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。
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