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2018.11.13

【インタビュー】オーティーエス小橋重信執行役員に聞く オムニチャネル物流へ ファッション業界の課題

株式会社オーティーエス 執行役員 マーケティング部長 小橋 重信氏

 オムニチャネル実現に向け、ファッション業界が抱える課題にはどのようなものがあるの か、ファッション業界からIT、物流業界で培った経験をもとに業界へ提言を行ってきた株式 会社オーティーエス(以下OTS)の小橋 重信氏にお話を伺いました。

――まずは小橋さんが現在のお仕事をされるまでの経緯を教えていただけますか。

 

 個人としては、新卒でアパレル業界に就職して10年、IT業界を経て、現在のOTSに入りました。

 

 アパレル時代は、上場から倒産まで経験しました。倒産時には在庫を抱えていたため、在庫を消化することがどれだけ重要かを知りました。その後IT系企業に就職して、ネットワークの構築などを行っていたとき、当時のOTSで、大型のファッション物流の立ち上げがありました。ファッションとITの経験をしている人は、その当時は多くなく、OTSに誘われ現在に至ります。

 

――OTSではどういったお仕事をされているんでしょうか。

 

 OTSでは、物流業者としてただ受託して業務を受けるのではなく、どういった価値が提供できるかを考える「おせっかい物流」を掲げて、マーケティング活動をしています。 

 

 たとえば、その考え方にともなってできたサービスが「回転倉庫」というサービスです。

 

 現在、OTSの倉庫内には5万平米、東京ドーム1.2個分の在庫が眠っています。倉庫内にフラッシュセール系の業者さんが出入りしていることに注目して、在庫を倉庫側で束ねてその消化を手伝うことはできないかと考えたのがきっかけです。

 

 ブランド側が倉庫内の在庫をフラッシュセールへ出荷、催事が終わって返送されるまでに21の工程があります。これを、実際の商品は動かさずに、商品データのみを連携することで14工程に削減でき、明らかなコストカットに繋がります。実はこれは、フラッシュセール業者側からなかなか受け入れられず、部署間での連携、商品画像の撮り直しへのこだわりなどを理由にデータ連携でのサービス提供をうまく進められませんでした。

 

 結果、現在はOTS自体が在庫を買い取る形でこの運営を進めるしかありませんでしたが、売れる商品の判別などのノウハウがたまってきています。

 

――これまで培った経験から「おせっかい物流」、「回転倉庫」の考え方が生まれたのですね。

 

 それもありますが、ジュエリー部門のセンター長をやっていたときに、事業者側の業績が悪化すると、物流費用を単純にカットしようという動きが出るんです。物流サービスは便利なだけでは簡単に切られてしまう。本当に必要とされるためには経営にコミットする必要があると思いました。

 

 物流コストを削減する提案を考えることは、ある意味では弊社の売上を減らすことにもなります。ですが効率化することで、長期的に必要とされる物流を考えたいと思いました。

 

――ファッション業界に限りませんが、オムニチャネルが議題としてよくあがります。物流側ではどのような変化が起きるのでしょうか。

 

 オムニチャネルではデータ連携といったバーチャル部分が注目されますが、実際にモノを動かすことはリアルでの出来事に変わりはありません。 そのためリアルの動きに則したバーチャルでの連携をしっかり設計し、組み立てる必要があります。

 

 たとえば、DB(DistriButor)さんがデータを見ながら商品を動かす際に、いざ動かそうとすると商品が無いなんてことがよくあります。元々、ファッション企業様が持っている基幹システムと倉庫側のWMS(Warehouse Management System)は連携がうまくいかないことが多く、しっかり設計しようとすると全体の設計、システムの仕様などノウハウと知識が必要になります。一般的な物流業者、基幹システム業者はこの連携に対して消極的なことが多いです。

 

 新しいファッション企業だとEC(ElectronicCommerce)販売を中心に連携をベースに考えた設計ができるのですが、既存の仕組みを繋げるのはとてもハードルが高くなります。リニューアル型のシステム設計を行う場合には、システム連携の設計段階で物流会社を噛ませることが重要です。そうしないと、モノの動きに合わない仕組みが出来上がるという状況も少なくありません。

――アパレルウェブ「AIR VOL.15 」(2018年9月発刊)から一部抜粋

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