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2018.08.15
好調な滑り出し 阪神タイガースのお膝元に今春改装オープン「コロワ甲子園」
樋口尚平の「ヒントは現場に落ちている」 vol. 55
関西で人気の高いプロ野球チームと言えば、阪神タイガースだ。本拠地は甲子園で、現在、夏の高校野球大会が開かれている。最寄りの駅は私鉄・阪神電鉄の甲子園駅で、球場へは徒歩数分で行くことができる。その駅と球場の間にあるのが、今回ご紹介する商業施設「コロワ甲子園」である。かつてダイエー(のちイオン)が運営していた施設だが、2017年2月に三菱地所が物件を取得し、再開発を進めていたが今年4月26日、グランドオープンを迎えた。
地元客、ファミリー層を意識したテナント構成
1階の「マックハウス スーパーストア」
「コロワ甲子園」の延床面積は約7万9527平方メートル、店舗面積が約3万平方メートル。地下2階、地上7階の構造だ。大型テナントを主体に約60の店舗で構成する。前述の通り、同施設は甲子園球場と隣り合わせの立地で、試合開催の有無によって入館客数などが大きく変化する。しかし、ダイエー時代から通う地元の顧客が多いそうで、新しく生まれ変わった同施設の軸足は足元商圏に置いている。“駅前快適”がキーワードで、デーリーユース、子連れ客、分かりやすさを重視した。
地下2階には、イオンが運営していたころから出店していたスーパーの「イオンスタイル」が内装を一新して再オープンした。元々、周辺にスーパーが少ない立地のため、「イオンスタイル」の出店は必要性が高かったようだ。甲子園球場前の大通りを渡り、徒歩数分の場所には「ららぽーと甲子園」があり、「イトーヨーカドー」がアンカーテナントとして出店しているが、大きな競合はないようだ。
甲子園駅の北側には古くからの戸建が多く、南側は新興住宅が多いという。「ららぽーと甲子園」は南側の新興住宅街に近い立地で、その上MD構成があまり被らないこともあり、「コロワ甲子園」との競合がそれほど見られないようだ。
地下1階には、子供が遊べるスペース「ピュアハートキッズランド」や子供服の「西松屋」を誘致。生活雑貨の「セリア」、「スギ薬局」「くまざわ書店」など、日常使いのできるテナントも集積した。前述した子連れ客を重視したテナント構成である。
地上1階には、「マックハウス スーパーストア」とホームセンターの「ハウスデコ」の大型店舗が出店する。また、飲食店やアクセサリーショップ、「SM2 keittio」などのアパレルテナントもショップを構えている。
地上2階はアパレル主体の構成。珍しい出店スタイルだが、“しまむら”の主力業態3店が横並びで店舗を構えている。「しまむら」「バースデイ」「アベイル」の3ショップである(関西では、神戸・ハーバーランドに同様の形態の店舗がある)。その他、紳士服の「はるやま」、レディスファッションの「ハニーズ」もあり、ファミリー層を意識したアパレル主体のテナント構成になっている。3階は家電の「コジマ」と「ビックカメラ」の複合店や、ペットショップ「ひごペットフレンドリー」、手芸の「ドリーム」などのテナントが出店している。4階から上は駐車スペースだ。
野球オフシーズンの今秋以降がカギ
2階の「アベイル」。正面奥が「バースデイ」。集客力が高まった
開業後、健闘しているテナントは、「ハウスデコ」や「ひごペットフレンドリー」「ドリーム」など。その他、飲食店が安定しているという。アパレル系では、3業態を要する「しまむら」が集客力を高めている。ファミリー層の利用が多いようだ。
平日は年配客やバギー客が多く、週末は自動車の来館客が増える。隣にホテルがある影響で、インバウンド客の利用も少なくない。甲子園で試合のある日は、もちろんタイガースファンが増加する。平日と週末の集約の比率は1対1.5くらいとのこと。あまり週末偏向型の施設ではないようだ。
まずまずの滑り出しのようだが、甲子園球場のそばという立地特性のため、今後の見通しについては「野球シーズンが終わる秋以降に(施設の)真価が問われる」(三菱地所リテールマネジメント運営本部運営2部、上村直未Corowa甲子園リーダー)と慎重な姿勢である。関東では知名度のある「マークイズ」業態を運営する同社だが、既存の商業施設を再開発したリニューアル案件は初めてのケース。「より認知度を高めていく必要がある」(上村リーダー)と考えている。ちなみに「マークイズ」は広域商圏対象の屋号だという。「コロワ甲子園」は地域密着型である(自転車の利用客も多いという)。足元商圏を中心にしながら、広域からの来館者も取り込む必要がある同施設。秋以降の推移に注目したい。
樋口 尚平
ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。
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