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2017.11.15

強みはファストファッション 5年目に突入した「神戸ハーバーランドumie」

 神戸・三ノ宮からJR新快速電車で数分の場所にある「神戸ハーバーランド」。以前、西武百貨店やダイエー、阪急百貨店などが入居していた準郊外型の商業施設だ。2013年4月18日、イオンモールが所有者の三菱倉庫等からプロパティマネジメント業務を受託し、「神戸ハーバーランドumie(ウミエ)」として再開発・再スタートを切った。強みはファストファッションの集積で、ファミリー層を中心に幅広い客層を取り込んでいる。今回はこの「神戸ハーバーランドumie」を取り上げる。

衣料品を主軸にしたテナント構成

 「神戸ハーバーランドumie」は大きく3つの館に分かれている。「SOUTH MALL」(南館)と「NORTH MALL」(北館)、それから「MOSAIC」(モザイク)だ。「SOUTH MALL」は、数年前まで阪急百貨店が売り場を構えていた。総店舗面積は約8万5,000平方メートル(うちモザイクが1万5,000平方メートル)、延べ床面積は19万8,000平方メートル(同3万3,000平方メートル)。テーマパーク「神戸アンパンマンこどもミュージアム」も隣接している。ファミリー客をメーンターゲット層にした典型的な複合型商業施設だ。30代の利用比率が最も高く、また40代の利用客数も多い。

 

 立地は“準郊外型”――三ノ宮や元町などの繁華街に近い場所だが、構成テナントは郊外型だ。自家用車で来館する顧客にとっては、郊外型施設の意識が強いようである。売上推移は堅調で、実数は非公表だが、前年度対比では2015年度が103.6%、2016年度は改装による閉鎖部分があったため98%だった。しかし対予算比では102%と健闘した。5年目を迎えているが、これまでのところは堅調な推移のようだ。

 

 衣料品の構成比率が高く、売り上げのおよそ30%を占めている(モザイク含む)。ファストファッションを軸に比較的、感度の高いカジュアルブランドを集積している。「H&M」「ZARA」「Gap」「ユニクロ」「ジーユー」のほか、「無印良品」「グローバルワーク」「ライトオン」といった大箱のアパレル系テナントも出店している。また、今年7月14日には、北館をリニューアルオープンし、新たにイオンリテールが運営する食品スーパーの「イオンスタイルumie」が出店した。

広大な延床面積を活用した時間消費型施設

 「神戸ハーバーランドumie」は、広大な延床面積を活用した時間消費型施設である。テーマパーク「神戸アンパンマンこどもミュージアム」も貢献しているし、来館の大きなモチベーションになっている。今年9月、神戸=ファッションの街というイメージを活かし、「神戸ファッションウィーク」に合わせてショーなどのイベントを開催した。反応は上々で、従来の3倍に来場者数が増えたという。地元・神戸の特性を活かした販促活動が土台になり、地元住民のほか、車で来館する広域からの顧客も取り込んでいる。

 

 今年10月度の推移は、衣料品が2ケタ増と好調だった。週末のたびに襲来した台風の影響で、後半は苦戦したそうだが、基本的な流れは悪くない。ちなみに衣料品のテナントは比較的、規模の大きいショップが多い。ファストファッション系は言うに及ばず、先ごろオープンした「グローバルワーク」は400坪と国内最大級を誇る。売上推移も順調だという。「ZARA」や「ジーユー」などのテナントもけん引役になっている。

 

 先日9月20日、一駅隣の立地に同じイオングループが開発する「イオンモール神戸南」が新たに開業した。目と鼻の先の場所だが、この開発は「umie」より前から進んでおり、織り込み済みだったようだ。「イオンモール神戸南」は食品に重点を置いているほか、衣料品のテイストは「umie」よりもカジュアルに寄っている。食品関連で競合が見られるというが、衣料品の影響はほとんどないようだ。

課題は来店頻度の増加 インバウンドにも期待

 今シーズンの反省点は、「秋の仕掛けが不十分だった」(神戸ハーバーランドumie、真野宏晃・営業マネージャー兼インバウンド推進リーダー)こと。台風が来たマイナス面もあったが、「ハロウィンに頼らない商材の提案が足りなかった」という。テナントに対して、「館ができる後方支援に力を入れる」(真野マネージャー)。

 

 継続した取り組み課題は、来店頻度を高めることだ。商業施設全般に共通した課題だが、平日の集客も重要なテーマである。週末の来館者数は平日の2.2倍で、やはり土日集中型の傾向が強い。来館客の約80%が神戸市内のため、リピーターを増やすことも重要な取り組みポイントである。

 

 しかしマイナス面ばかりではない。前述のファッションイベントにも手応えを感じているほか、テーマパークの色合いがある「モザイク」(アンパンマンのミュージアムと隣接している)と、衣料品の大型テナントが集積する物販主体の北・南館とのバランスが「同施設の持ち味、車の両輪」(真野マネージャー)だと考えている。また、港湾施設に近いこともあり、インバウンド客も多い。既存のイオンモールの中で、インバウンド推進施設に指定されている数少ない館でもある。ファンの数を増やしていく方法は、まだまだありそうだ。

■神戸ハーバーランド http://www.harborland.co.jp/
■神戸ハーバーランドumie http://umie.jp/


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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