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2017.11.24

「デコーデッドファッション」NYサミットから学ぶ テクノロジーで変わる店舗とモバイル

Photo credit: Alex Staniloff for Decoded

 「デコーデッドファッション(DECOADE FASHION)」は、ファッションとリテールビジネスを前進させるイノベーション、ファッションとテクノロジー、また起業家を促進するグローバルイベントとして2011年に誕生。毎年開催されるこのイベントは、ロンドン、ミラノ、ニューヨーク、東京でも開催されています。今年ニューヨークサミットは11月1日、2日に、チェルシー地区にあるArtBeamで開催されました。

VRによる疑似体験が商機を生む

Photo credit: Alex Staniloff for Decoded

 店舗という場所が、単に商品を揃えお客様に試着や購入してもらう場所から、エクスペリエンスとエンゲージメントという位置付けに進化していく中で、店舗で活用できる様々なテクノロジーがあります。River IslandStore 8MM.LaFleurがスピーカーとして登壇したセッションでは、RFIDからVRに至るまで店舗で活用できるテクノロジー、今後可能性を感じる使い方などについて会話されました。

 

 印象に残ったなかには「VR」を使った新サービスがあります。これまで私も様々なブランドのポップアップショップでVRを体験してきました。しかしそれらの多くはブランドのコレクションの紹介や、デザイナーからのメッセージなどが多く、それがコマースへと繋がるには遠いものが多かったです。

 

 しかし今後注目したいコマースに繋ぐ新たなVRサービスがあるそうです。例えばキャンプに行こうとなった時、まずテントを買いにお店に行ってみますよね。お店では多分、一部組み立てられたテントがあったりするものの、基本は販売員さんにスペックを確認したりすることが普通だと思います。しかし新たなVRのサービスを店舗で取り入れ、お客様が売り場でVRを装着してみると、自分が行くキャンプ場に実際購入してみようと思っているテントを設置してみたり、テントの中で立ってみたり、座ってみたりとサイズ感を確認したり、様々な体験ができるといいます。 VRで“購入する前に体験してもらう”ことで、 想像を膨らませてコマースへと繋ぐ。こうしたVRのサービスは消費者のショッピングエクスペリエンスにおいて大きなインパクトを生むのではないかといいます。

 

 テントの様な実用的な商品だけでなくとも、ファッションでもユニークな世界観や、顧客に関連するコンセプトでシチュエーションを作れれば、VRの機能はストアエクスペリエンスとして大いに活かされ、またコマースへと導くきっかけを生むでしょう。

“スマートフォンオンリーの時代”が到来する前に考えておきたいこと

Photo credit: Alex Staniloff for Decoded

時代はモバイルファーストだと言われています。とはいえ、多くのブランドの売り上げはまだモバイル経由での決済よりデスクトップ(パソコン)からの方が多いのが実情。しかし検索や閲覧といった多くのセッションはモバイルで行われることが多いのも確かで、そんな中、もうスマホオンリーでもいいじゃないかとなった時に、機能的にどのような部分をふまえておくべきかという質問がモバイルにフォーカスをおいたパネルの中でありました。

 

 回答のひとつには決済完了までのステップの簡素化、またそれ以前にページ表示速度の改善と答えた人もいました。どちらも頷ける回答ですよね。確かにモバイルファーストの時代であってもデスクトップ経由での購入がまだ多いのは、決済がスムーズでなかったり、なにか不安な要素がどこかに残っているからなのだと思われます。

 

 Apple Payなど決済オプションは増えているのにまだデスクトップ頼りになっているのはまだまだ改善する余地がどこかにあるという証拠なのだと思います。そしてページ読み込み(表示)速度に関しても、スワイプするくらいの感覚、すなわち3秒以下くらいでページを表示してもらいたいです。極端な話に聞こえるかもしれませんが、例えば似たようなデザインの商品や価格帯、はたまた他でも買える商品を扱っている場合は特に、サイトへ最初にアクセスした時、そして詳細ページの表示時間が遅いというだけで、“なんだか買い物しづらい”という印象を与えてしまい、コマースへ繋がるきっかけを逃してしまいがちになります。

 

 これをオフラインの環境に置き換えたとして、なんだかあのお店っていつもお会計でもたつくよね、 とか、あの店セレクトはいいけどなんだか見づらいよね、というだけで買い物をする機会が減るお店ってありますよね。 それらを改善してきたように、モバイルコマース上、Eコマースでも、現状に満足せず、ちょっとした改善を継続していくとオンラインのコマースの売り上げ、アクセスに変化が見えてくるはずなのです。

 

 デコーデッドファッションの様なイベントは、今のマーケットの変化を学んだり、またブランドそれぞれから事例を聞けたりという素晴らしい点もありますが、何よりも多くのインスピレーション、そしてヒントを与えてくれました。 また昨年からは急速な進化が見られるビューティー業界も注視し、「デコーデッド ビューティー( DECODED BEAUTY)」も開催しているのも注目です。

■ DECODED FASHION http://www.decodedfashion.com/

■ River Island https://www.riverisland.com/

■ Store 8 http://storeno8.com/

■ MM.LaFleur https://mmlafleur.com/


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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