PICK UP

2019.02.13

ますます増加!サステナビリティーとリサイクルに注力する米国アパレル企業

「パタゴニア」公式サイトより

 お片付け術をベースにした近藤麻理恵さんのリアリティー番組「Tidying up with Marie」がブレイクし、その他のメディアやTV番組にもゲスト出演しているのを見かけます。物に感謝をすることで、片付けができない人々の精神性に訴えたのは米国消費者には新鮮だったといえます。この番組のブームで、溢れていた衣料品や雑貨を処分する人がさらに増え、リサイクルショップなどの再販市場の商品が充実、片付けをするための収納用品がよく売れているようです。

 

 サステナビリティーに貢献している企業の業績が良いのも、こういった背景が影響しているのでしょう。ショッピングサイト「LYST」の調査によると、今冬は、フリースやフェイクファーの検索が増えており、「パタゴニア」や「ザ・ノース・フェイス」などのアウトドアブランドをはじめ、「アーバンアウトフィッターズ」などのブランドもフリースを展開している。ザラのモコモコのフェイクファーコートは、この冬よく見かけたアイテムの1つだ。

 

 商品の生産背景やコストを透明化し、クオリティーの高い商品を適正価格で販売している「エバーレーン」は、廃棄されるプラスチックボトルの再生糸を利用した「ReNew Collection」を立ち上げ、アウターやフリースを販売しました。環境や社会貢献に関心度の高い、ミレニアルやジェネレーションZの世代の心情にマッチしており、ユーズド、レンタル、ヴィンテージなどの需要が高まっています。そんな米国企業の様々な取り組みをピックアップしました。

「レント・ザ・ランウエイ」の新たなチャレンジ!ハイブランドとタッグを組んだオリジナル・コレクション

「レント・ザ・ランウェイ」公式サイトより

 ハイブランドの洋服や雑貨を月額定額でレンタルできるサブスクリプションサービスが人気の「レント・ザ・ランウエイ(以下RTR)」が、デレク・ラムやジェイソン・ウーら著名デザイナーとのパートナーシップで、オリジナルコレクションを展開しています。全くの新デザインというわけではないが、人気のデザインをベースに、プリントや色など、他店では販売されない商品の提供が実現したのです。デザイナー側にとって、「RTR」は格好の顧客であることは周知の事実。ですが、「RTR」にとっても、若い顧客の好みなど、日頃リーチできない情報が得られるため、両者はウィンウィンの関係となっているようです。

リサイクルを目的としたPBを発売した「スレッドアップ」

「ThreadUP」公式サイトより

 不要になった衣料雑貨を預かりインターネットで再販している「スレッドアップ(ThredUP)」は、捨てる罪悪感の代わりに再販する事でマインドセットする、こんまりさんの影響を受けているリセールサイトの一つだ。本来、中古品を販売しているサイトですが、昨年スタートした「REMADE」コレクションは、同社の人気ブランドの商品データをベースに、厳選したアイテムをプライベートブランド(PB)として企画・生産した全く新しい商品なのです。

 

 XSから3XLまでの幅広いサイズ展開で、現在サイトで販売されているのは、Tシャツ、カーディガン、ラップドレスなど全11点。このプログラムの特徴は、不要になった際、スレッドアップ社が、販売価格の40%でバイバック(買い戻し)することを保証していることです。40ドルのワンピースの買い取り額は16ドルとなります。ちなみに、通常の買い取り価格は、「J.クルー」のワンピースで2~5ドル。リサイクル・ファッションエコノミーとサステナビリティーを推奨する企業としての新たな動きだといえます。

カルバンクライン擁するPVHは「リサイクルラベル」をスタート

How2Recycle社公式サイトより

 「カルバン クライン」をはじめ、「トミー フィルフィガー」「ヴァン ヒューセン」などを運営するPVHは、How2Recycle社と提携し、リサイクルラベルのプログラムをスタートしました。アパレル企業では初の取り組みで、下着やネクタイなどのパッケージに、その商品のリサイクル方法を示したラベルを使用するというものです。

 

 再生可能なマテリアルの使用や、サイズを17%縮小することなどが実践されており、提携先のドロップステーションまたは小売店で、使用済み商品をパッケージごと回収してくれます。 環境に配慮する企業を好んで購入する消費者がいる一方で、短サイクルで着回すファストファッションに代表される使い捨て文化に親しんだ消費者も多く、米国は意外にもエコの観点では遅れているとも思えます。

 

不良在庫や返品商品を修復して再販

「ザ・ノース・フェイス」公式サイトより

 「ザ・ノース・フェイス」は昨夏、「Renewed」というプログラムをローンチ。ダメージ品や返品商品などをディスカウント価格で販売しています。コンピューターやスマートフォンンなどのガジェットでは馴染みのある“リファービッシュ品”(=壊れた箇所を修繕して割引価格で販売)と同じ手法です。

 

 商品はプロが丁寧にクリーニングし、ボタンやファスナー、ステッチのほつれなどを修繕して再販。1年間の保証付きとなっています。環境への考慮があり、少しでも安価な商品を求める消費者をターゲットに、オンラインのみで販売しています。

新品よりもずっといいパタゴニアが推奨する「Worn Wear」プログラム

 自然環境と密着な関係をもつアウトドア企業が積極的に活動を行っています。ボタンが取れたり、穴が空いて綿が出てきても、修繕しながら長く愛用することを呼びかける「Worn Wear」プログラムをスタートしたのは、パタゴニア。毎年新作を提供するハイブランドや、使い捨てのファストファッションとは全く異なる概念で、消費者からの信頼とコネクションがビジネスに繋がっている企業です。「Worn Wear」では、丁寧な修繕方法やケアガイドをアイテム別に紹介し、リサイクル&ユーズドアイテムの再販を行っています。また、再販と修繕を目的としたトラックツアーも随時行っています。

 

 また、同じくアウトドア商品を扱う協同組合形式の「REI(レイ)」も、同社の中古商品を再販したり、商品の交換プログラムを11店舗で行っています。

 

 「H&M」では今年、リサイクルアイテムを「H&M」店舗に持ち込んでもらうため、カーシェアリングの「lyft(リフト)」と提携し、NYマンハッタン内の消費者5,000人を対象にした無料ライドプログラムを行いました。古着と交換に、ディスカウントチケットまでもらえるという特典付きで、ショッピングへの誘導が目的だったのでしょう。

 

 ミレニアル、ジェネレーションZといた購買パワーを持った消費者層は、環境や社会貢献への関心も高いことから、サステナビリティーやリサイクルに取り組む企業は今後も増えるのではないでしょうか。


 

 

マックスリー・コーポレーション
MAXRE Corporation

 

マックスリー・コーポレーション ( CHIZU NISHIDA )
米国ブランドの輸出及びビジネスコーディネート、マーケット調査などを承っています。

■ビジネス関連のお問い合わせ:小林まで
■市場調査レポートのお問い合わせ:西田まで

 

【公式サイト】http://www.maxrecorp.com/
【ブログ】マックスリー・コーポレーション

メールマガジン登録