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2016.06.24

ロンドンコレクションメンズのトレンド!2017春夏を先取り分析。世界基準の流行とは?

「タイガー オブ スウェーデン」

 毎年イギリスで6月に行われるエリザベス女王の誕生日イベントも、今年は特別な90歳の祝典。ロンドンの街中がユニオンジャックで溢れるお祝いムードの中でロンドンコレクションメンズも行われました。プレゼンテーションやイベントも合わせれば、60を超えるブランドが参加する凝縮された4日間。気になるトレンドのヒントは何か?今、デザイナーはどのようなスタイルやアイテムを提案しているのか?ロンドンで目にした最新コレクションから分かる、トレンドベクトルの方向性をキャッチしてみましょう。

世界へ広がるトレンドへ!サンダル×ソックスの増す勢い

ルー ダルトン

 それってクール?いや、クールじゃない?昨年の夏にスタイリング術として登場し、雑誌からネット、ストリートのコーディネートと広がりを見せた「サンダル×ソックス」の組み合わせ。ただ、全ての人から受け入れられたわけではなく、「カッコいい」のか「カッコ悪い」のかの議論が絶えなかった、ある意味波紋を読んだスタイル。それが、今回のロンドンコレクションメンズには多数ブランドで採用され、足元をソックスの清潔感とサンダルのリラックスした雰囲気にまとめていました。

 

 パンクスタイルの安全ピンや細身スーツにモッズコートなど、昔を振り返るとトレンドとなり始めるモノは「クール」と感じる規格から飛び抜けるもの。それを再確認させられたスタイリングが「サンダル×ソックス」でした。昨年は否定派だった方も、今年から着こなしに採用してみる賛成派に票が流れることでしょう。

(左から)アストリッド アンダーセン/ルー ダルトン

(左から)ケイスリー ヘイフォード/ケーティーゼット

ルー ダルトン(Lou Dalton)はモデル全員が統一してサンダル×ソックスのスタイリングに。 色鮮やかな組み合わせのケイスリー ヘイフォード(Casely-Hayford)とは対照的にケーティーゼット(KTZ)はブラック一色のスタイリングです。 ハイソックスで合わせたアストリッド アンダーセン(Astrid Andersen)も印象的です。

ストラップ派?シャワー派?ファッショニスタの足元事情

 サンダルにソックスを合わせるだけのシンプルなスタイリングではありますが、その組み合わせ方は自由自在。王道のホワイトソックスを選ぶのか、カラーソックスでアクセントを出すのかはセンス次第。

 

 さらに、サンダルもコンフォートサンダルなどのストラップサンダルと、スポーティーなシャワーサンダルで二極化しています。ロンドンコレクションメンズに集まったファッショニスタの場合、シャワーサンダルがやや優勢の模様。ちなみに上の写真は、世界でスタイリングが注目されるファッションライターのマスイユウ氏。彼はナイキロゴが入ったシャワーサンダルでスポーツミックスとして王道の着こなしを披露しています。

まだまだ続く!ブルゾン人気のピークは過ぎていなかった

 ボンバージャケット、MA-1など呼び名も種類も豊富で、ブランドやショップでも提案しやすいアイテムがブルゾン。メンズだけでなくレディースでも人気となり、日本はもちろん世界中にある数多くのブランドがリリースしました。引き続きトレンドとして目が離せないアイテムとなりそうです。デザインの傾向としては、小細工ナシのシンプルなデザインでミリタリー感を匂わせないところが特徴的。MA-1の特徴的なディティールである袖のポケットなどはなく、春夏仕様のボリュームレスでスッキリとしたデザインがメイン。ブルゾン人気は来シーズンもまだまだ継続。同じくトレンドであるスタンドカラーのシャツなどとも相性が良く、スタイリング提案の核となりウインドウに並ぶことが予想されます。

(左から)クリストファー レイバーン/オリバー スペンサー

(左から)アギ&サム/エムシーエム × クリストファー レイバーン

(左から)メゾン ミハラヤスヒロ/ジョン スメドレー

採用されているディティールの多くがファスナーポケットのデザイン。エムシーエム x クリストファー レイバーン(MCM × Christopher Raeburn)はフロントにワンポイントでシンプルに。アギ&サム(Agi & Sam)は袖に取り入れ、裾はショート丈の変形デザイン。ジョン スメドレー(John Smedley)はニットブランドならではのウール素材のニットで表現しています。対照的にメゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)はプリントや刺繍を取り入れたスカジャンデザインでアクセント力あるデザインに。

ジェンダーレスフェミニン?刺繍で作るメンズの創作的世界

トップマン デザイン

 男性モデルなのか、女性モデルなのか?近くで見ないとわからないほど、ジェンダーレスなモデル起用やスタイリングの傾向が強いショーやプレゼンテーション。もちろん発表されるデザインそのものにもメンズ、レディースの境界線の曖昧さを感じるアイテムが多数登場しています。

 

 代表的な表現方法が、刺繍を取り入れたデザイン。男らしくたくましいメンズスタイルではなく、繊細でエレガントな空気感を感じる刺繍に身を包んだ男性モデルが目につきました。それは女性としてのフェミニンではなく、ごく自然体にメンズファッションとして溶け込むデザイン。プリントのテキスタイルよりもゴージャス感があり、立体性のある大人っぽさを演出できるアイテムです。さらに「女性ウケを狙える」という意味合いでもメリットが多いデザインとして期待できるはず。

(左から)リチャード ジェームズ/ルー ダルトン

(左から)ケーティーゼット/ハウス オブ ホランド

リチャード ジェームズ(Richard James)は春夏のパステルなカラーリングシャツをベースに、視線を集めるポイントとなる刺繍をデザイン。 ルー ダルトン(Lou Dalton)やケーティーゼット(KTZ)はシースルーの素材に創作的な刺繍をプラスした芸術的デザインにまとめています。 一方ハウス オブ ホランド(House of Holland)は太めの糸を取り入れたワイルド感ある刺繍を取り入れたリメイク風デザインが特徴的。

根強く残るカラーバリエーション!カモフラージュ柄

 オリジナルの柄でもデザインでも、個性を出しやすいプリントであるカモフラージュ柄。レディーススタイルでミリタリーテイストがトレンドに挙げられるなど、ある一定以上の支持は常にキープする優秀なスタイルです。今回のロンドンコレクションメンズの春夏スタイルにもカモフラージュ柄を取り入れたアイテムが、幅広いブランドでコレクションの一部を占領。

 

 ビンテージアイテムのように、どこか土っぽく本格的な男らしさを取り入れるデザインが主流でありながら、デジタル模様のように、知的で近代的な表現方法もできる高いクリエイティブの可能性が魅力的です。ただ単にカラーバリエーションの一つとしてデザインされているわけではなく、メインアイテムとしてトレンドの中心を陣取ることでしょう。

(左から)ザンダー ゾウ/マッキントッシュ

(左から)ナイジェル ケーボン/ベルスタッフ

メゾン ミハラヤスヒロ

ボーイ バイ ボーイ ロンドン

ザンダー ゾウ(Xander Zhou)やベルスタッフ(Belstaff)が取り入れるカモフラージュ柄はウッドランドなどのアメリカ陸軍などの定番としてファッションでも浸透しているデザインをコレクションに落とし込んでいます。メンズらしいたくましさを前面に出したデザインが幅広い年代に支持されることが予想されます。対照的にマッキントッシュ(Macintosh)やボーイバイボーイロンドン(BOY by Boy London)はデジタル感あるピクセルカモでよりストリートシーンに近づけたアレンジに。近代的な最新ファッションとの相性が良いデザインです。

男だって心は揺れる。ヒラっと舞うロングベルト、テープアクセ

 ユラユラ揺れるランウェイでモデルが歩く度に視線を集めたデザインは長いテープのようなデザイン。動きのあるアクセサリーデザインとして大小様々な種類を目にしたものが、ロングベルトやテープ状のアクセサリーです。アーティスティックでコンセプチュアルなブランドであれば、ベルトのディティールを多数取り入れた複雑なシルエットを可能にし、独自のアートの領域を表現。アクセントとして大きなバックルと共に腰に装着するスタイルも見られた今回のコレクション。

 

 さらにノスタルジックなスタイルなら、細くて長いベルトを垂らすスタイリングが見られました。デザイナーそれぞれの個性はあるものの、ユラユラと揺れるアクセサリーとしては共通している模様。“草食男子”や“ジェンダーレス”など、女性に近づくようなキーワードが多い中、男性の心も揺れやすい傾向にある状況を表しているようでした。

(左から)ザンダー ゾウ/クレイグ グリーン

(左から)アレックス ムリンズ/クリストファー シャノン

(左から)コモン スウェーデン/ターン デ トランスミッション

サイモン リー

ザンダー ゾウ(Xander Zhou)はスタッズベルトがたくさん垂れ下がるデザインでインパクトあるコレクションに。サイモン リー(XIMONLEE)やターン デ トランスミッション(Tourne de Transmission)などはバックルで着脱可能なアクセサリー仕様がワンポイント。70年代の匂いが漂うコモン スウェーデン(CMMN SWDN)のベルトは華奢な細いベルトが長くスタイリングされています。

リゾート感はフェイスから!アイウェアはラウンド型フレームの流れ

アギ&サム

 春夏なら見逃せないサングラスにも注目してみましょう。変形型など、個性あるサングラスも見られたものの、スタイリングで取り入れられたアイウェアで多数派となったのは、ラウンド型のサングラスです。丸く収まったシェイプはスクエア型やティアドロップなどと比べれると優しい印象に。

 

 リラックスしたリゾートファッションにもピッタリです。知的で少しミステリアス、さらに個性あるフレームを選べばアイウェアからトレンドスタイルを実現。

(左から)ジャーミン ストリート コラボショー/ワイエムシー

オリバー スペンサー

イートウツ

アギ&サム(Agi & Sam)のようなサイズの大きなシェイプから、ワイエムシー(YMC)が提案するフレームでブランドらしいクリエイション力を見せるアイテムも。イートウツ(E. Tautz)のようにアイウェアで取り入れると、笑顔の印象もより素敵に見えるはず。

すぐに買えるから「BUY NOW!」 広がる即売の取り組み

ハウス オブ ホランド

ハウス オブ ホランド

 鉄と購買力は熱いうちに打て!コレクションを見た後、すぐに購入できる試みが「BUY NOW!」のシステムです。約半年前にバーバリー(Burberry)が即売の取り組みを発表したことでも注目を集める、ブランド側が行うセールスの取り組み。バーバリー(Burberry)は9月のキャットウォークショーの後、すぐに目の前で見たコレクションを購入可能とする意向です。その後、ニューヨークブランドなどでも同じ即売を取り入れるブランドが現れていますが、今回のロンドンコレクションメンズでは、ハウス オブ ホランド(House of Holland)が実行しています。

 

 キャッチーなロゴアイテムはイギリスで親しまれている食品をパロディー化したデザイン。手が届きやすい価格帯とスタイリングしやすいアイテム、さらにイギリス人なら誰もが分かる洒落っ気のあるデザインで購買力を刺激しています。今後、この即売スタイルが定着するかどうかもロンドンコレクションメンズの岐路となるはずです。


 

 

高嶋 一行(たかしま・かずゆき)
ファッションライター

 

ロンドンのELEY KISHIMOTOにてデザインアシスタントを経験後、日本では海外ブランドのセールス・PRエージェント会社に勤務。 現在はイギリスに戻り、英国を中心としたファッション記事を執筆中。 現在、ファミリーセールやサンプルセールの情報サイト「tokyosamplesale.com」(毎日更新)も運営している。

 

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