THE MAXREの米国ファッションビジネストレンド Vol.13

MAXRE Corporation

　アメリカに住んでいる人であれば、一度は見かけた事のある、奇妙なノベルティ商品。クリスマスツリーやサンタクロース、トナカイ等の派手なデコレーションが付いた、『アグリー・クリスマス・セーター』。映画『ブリジットジョーンズの日記』の中で、コリン・ファース演じるダンディな弁護士マークが、家族のクリスマスパーティで巨大トナカイのセーターを着用して笑いを取ったシーンを思い出す人もいると思います。70-80年代に流行し、メイシーズやJCペニー、シアーズ等の店頭でも、ノベルティアイテムとして山積みにされ販売されましたが、一時期は低迷。その後、2011年にナショナル・アグリー・セーターの日（12月の第2週目の金曜）がスタートして以来、年々需要が増加。

　【アグリークリスマスパーティ】や【アグリーセーターマラソン】等の人気で、今年の感謝祭やブラックフライデーには売り切れ商品が続出。インスタグラムでは、22,000以上の#UGLYSWEATER写真が投稿セーターごときと馬鹿にする事なかれ、ウォルマート、ターゲット、アーバンアウト・フィッターズ、ラルフローレン等がブームにのりオリジナルを販売しているだけでなく、ブルームバーグ・ビジネス誌によると個人起業家達にとっても１億円ビジネスへと成長、昨今のホリデイ商戦のビッグビジネスとして注目のアイテムなのです。

NFL（ナショナルフットボールリーグ）とのコラボ

　今年話題になっているのが、NFLのチームのキャラクターと見るに絶えないダサい色柄のクリスマスモチーフをコラボしたセーターが、サイバーマンデーには一時売り切れの大人気。7型で300近いロゴのバージョンがあるそうですが、今年のホリディシーズンが終わるまでに30万枚が売れる見通し、$10ミリオン（約12億円）の売り上げ。

DIYセットが売れている

ノードストロームのDIY セット

　個性的なアグリーセーターを、手持ちのセーターや安価な市販品でDIYしたいという消費者も増えていますが、SKYMALL.COMでは『アグリークリスマスキット』を30ドルで販売。昨年実績で3万5000キットを販売、今年は、なんと、40万キット以上の販売に達する見込み。このキットだけで、$1200万ドル（約14億4000万円）（1ドル＝120円換算）も売れる換算だ。
http://www.skymall.com/ugly-christmas-sweater-do-it-yourself-kits/28738GRP.html

【レント・ザ・ランウエイ】でも、アグリーセーターをレンタル

　急なオフィスの『アグリーセーターパーティ』でもOK!ファションブランド＆雑貨のレンタルビジネスで急進中のRENT THE RUNWAY（レント・ザ・ランウエイ）では、アグリーホリデイセーターのカプシュールコレクションをローンチ。スタイリッシュ・アグリー女子の為の、セーターやカーディガン、ベスト等、（ワンサイズのみ）で12種類あり、4日間、15ドルでレンタル出来る。しかし、HPでは人気の為、レンタル中が殆ど。ちなみに、レント・ザ・ランウエイでは、月75ドルでレンタルし放題のサービスを月額45ドルに下げたばかり。恐ろしいですね。

アグリー・クリスマス・スーツ

　2014年のフィーバーはこれだけでは収まりません。アメリカの80年代のテニス、ゴルフ、ウエスタン、ホリデイ等、イベントテーマに沿ったアウトフィットを展開するオンラインリテイラーのSHINESTY（シャイネステイ）でも、アグリーセーターを扱っていますが、男性向けには、パーティで誰もがアッと驚く、全身クリスマス柄のスーツを販売。価格は110ドルと、シーズンアイテムとして高額な出費ですが、この商品サイバーマンデーの3時には既にソールドアウト！早くも、来年の予約販売を行っています。

アグリーセーターで、一儲けの個人投資家が続々登場

普通の主婦もアグリーセーターで、キッズの学費稼ぎ

　フロリダで家計をやりくりしている普通の主婦のAnneさんも、ちょっとした子供の学費稼ぎをするつもりで、スリフとストア等で購入したアグリーセーターをイーベイで販売。2008年に50-150ドルのセーターを50枚販売したのがきっかけとなり、トータルで2万5000枚のセーターを売り上げ、$1ミリオン（約１億2000万円）の収益をあげている。現在は、My Ugly Christmas Sweaterのオンラインストアを立ち上げている。
http://www.myuglychristmassweater.com

元弁護士と歯科医の友人コンビのベンチャービジネス

　立派な仕事を捨ててまで始めた、アグリーセータ?のサイト（TIPSY ELVES）では、現在、従業員が11名、2012年の収入、87万ドルから、2014年は$800万ドル（約9億6000万円）の見込み。
http://www.tipsyelves.com

20歳の学生ジャックも学費稼ぎ

　このトレンドを見て、グランマが昔着ていた様なチョーかっこ悪い物を着ると言うのがユニークだと感じ、夏休みのロードトリップで、スリフトショップからヴィンテージのアグリーセーターを回収。アグリークリスマスセーター専門のオンライン【uglychristmas.com】を立ち上げ、3-5ドルで購入した物を20-50ドルで販売。5万ドル程を稼ぎ高額な学費にあてているという。

DIYセットでサイコーにダサいセーターを手作りするティーン

洋服が売れない時代に何故、超ダサいセーターが売れる？

　クリスマスを大胆に誇張したモチーフで、ダサければダサい程、大喜びで売れる変な現象。”ダサいセーター”が売れる背景には、誰もが心待ちにしているホリデイシーズン、オフィスの忘年会、友人とのクリスマス会、家族でのパーティ等で、ユーモアたっぷりでほっこりと顔もほころぶエンターテイメント性が見え隠れします。東京でもハロウィンの需要増で、グッズの販売が伸びた様に、特別なイベント感がある事が大きい。一人一人、個性の異なる【ダサさ】を表現する楽しさがあるのでしょうね。

　年間を通して着用できるジーンズは買わないのに、季節限定の遊びアイテムを迷わず買う事ができるのは、この時期ならではの、ホリデイマジックとも言えます。若者層の中で、ミュージックフェス等で着用する【フェスティバル・ファッション】が不可欠となってきた様にイベントと小売りの関係には売り上げに繋げるヒントがあるのではないでしょうか。