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2014.11.19

大阪初の「ららぽーと」は子育て世代を意識 三井不動産・三井不動産商業マネジメント「ららぽーと和泉」

大阪府下初出店の「ららぽーと和泉」

 三井不動産とその関連会社である三井不動産商業マネジメントが手掛けるリージョナル型商業施設「ららぽーと」。10月30日、大阪府和泉市に大阪初の「ららぽーと」が開業した。通算11施設目で、関西では2004年11月に開業した「ららぽーと甲子園」(兵庫県西宮市)に次いで2施設目だ。その大半が東日本に集中しているとはいえ、大阪府下に初出店というのは意外な気もする。ファッション系テナントを基軸している点は同じだが、子育てママに焦点を絞った構成が特徴だ。

「ママにやさしい」がテーマ

「ららぽーと和泉」は大阪市内から電車で小1時間かかる場所にある。子育て世代が増えている地域で、典型的な郊外型ショッピングモールだ。南北に縦長の施設で、その両端にアンカーテナントを配置する構造は、平均的なモールと共通している。ただし厳密に言うと、一時期多く見られた“2核1モール”ではない。“アンカー”部分は2ないし3の大きめのテナントで占められている。延べ床面積が約16万8000㎡、店舗面積は約5万6500㎡で、中央に配したテナント部分はぐるりと一周できるいわゆる“サーキットモール型”だ。地上5階建てで、商業部分は2-4階。それ以外は駐車スペースに充てられている。

 

 主要な商圏は半径15km圏内の約123万人が対象で、車で30分を目安にする。足元を中心に子育て世代=ニューファミリー層が増えており、中でも子育てママが利用しやすい施設になるよう留意した。三井不動産のママ社員の発案を基に、コンセプトが決まったという。

 子供たちが遊べるスペースや、家族で利用することができるテナント、おむつ交換ができるトイレ環境など、母子で来館する時の利便性を重視した。バリアフリーを目的とした「ハートビル法」に基づく施設が注目された時期もあったが、「ららぽーと和泉」は子を持つお母さんのための商業施設に仕上がった。

 

 実際、オープン前の内覧会で同施設を訪れた時、延べ床面積約16万8000㎡、店舗面積約5万6500㎡の広さはそれほど感じなかった。歩き疲れることはあまりないだろうというのが、素直な感想だ。新しい商業施設の内覧会では必ずトイレ周辺を見るようにしているが、「ららぽーと和泉」のそれは子供同伴でも楽に利用できる環境が整えられていた。

感度はカジュアル寄り、廉価な商材が多い印象

 テナント数は218。やはりファッション系のショップが主力を占める。アンカーテナントは「オールドネービー」「アカチャンホンポ」「ザラ」「H&M」「ユニクロ」「ロフト」といった小売店で構成されていて、廉価でカジュアルな商材が主流だと感じた。主要SPAブランドのモール向けの業態を集めたとでも言えばいいか。「ハレ」と「ケ」のどちらかと言えば、「ケ」、日常使いのカジュアルなラインナップである。

 

 年間の売上規模は280億円前後と想定する。初年度はオープン景気で上振れするし、2年目はその反動も出るだろう、という予測で、3年目以降にはこの数値に落ち着くのではないかと三井不動産では考えている。店舗面積の規模を考えるとやや低めの設定だと思うが、何かとお金のかかる子育て世代が中心で、廉価・カジュアル路線の色濃いテナント構成を考えると、妥当な線かも知れない。

 

 内覧会でお会いしたデベロッパー業界の知人の方も、「テナント構成がカジュアルである」と指摘しておられた。開業後の推移を三井不動産に聞いてみると、やはりニューファミリー層が利用しやすい「ファストファッション系のテナントが特に活況を呈している」とのこと。当初の狙い通りの推移のようである。考えてみれば、想定の顧客ニーズに商材を合わせるのは当たり前で、「ららぽーと和泉」はたまたまカジュアル志向の強い商圏だったということなのだろう。

今後も続く新規出店

 「ららぽーと」の出店は来年も続く。埼玉・神奈川・東京に加え大阪府吹田市にも、屋号が「ららぽーと」になるかどうかは未定だが、郊外型のショッピングモールの開業が予定されている。大阪府吹田市の物件は、かつて遊園地だった「エキスポランド」の跡地。大阪の北部に属する場所で、「ららぽーと和泉」からは大きく離れている。万博が開かれた記念公園に付随する場所と言った方が分かりやすいかも知れない。ちなみにJリーグの「ガンバ大阪」のホームタウンでもある。「ららぽーと和泉」は「セレッソ大阪」の拠点、長居に近い。たまたまの偶然であろうが。

 内覧会当日の会見の際、三井不動産の石神裕之・常務執行役員 商業施設本部長(商業施設事業・ロジスティクス事業所管)は「まだ新しい商業施設を開発できる余地はある」と語った。

 実は「ららぽーと和泉」から車で30分足らずの場所に、以前、当コラム(7月16日付)でも紹介した「ショップタウン泉ヶ丘」(大阪府堺市)がある。地元の南海電気鉄道が再開発を進める古い商業施設だが、大阪市内から電車で「ららぽーと和泉」へ向かう途中に最寄駅がある。同駅の乗降客を主体にする施設なので大きな競合はないと思うが、同地域に商業施設が増えていることに変わりはない。供給過多ではなかろうかと、心配になってしまうのである。「ららぽーと」の今後に期待することにしよう。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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