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2014.11.12
リアル店舗の新スタイル『ファッション・トラック』
ホットドッグや焼き栗、ファッション雑貨などを販売するストリートベンダーは、NYには1万軒以上存在すると言われています。ベンダーの多くは移民で、アメリカの退役軍人も優先的に商売権が与えられている事が知られています。そんな昔ながらのストリートベンダーに混じり、全米都市に蔓延しているのがアイキャッチな『フード・トラック』。5番街やソーホーで、グルメコーヒー、スープ、サンドイッチ等、ランチタイムや小腹の空いた休憩時間にも人気で、今や全米に3500店舗。そのフード・トラックをビジネスモデルに、ファッション業界で急増しているのがブテイック形式の『ファッショントラック』。American Mobile RetailAssociation(全米可動式小売店協会)によると、わずか4年程前からスタートしてトレンドとなり、ここ一年で、全米に500店以上に急増。ファッションに限らず、様々なアイテムを販売する『モバイル・リテイラー』は、市場に根付く事ができるのでしょうか?
トラックビジネスはスタートが簡単
マンハッタンでよく見かける、『NOMAD』というファッショントラックの場合、オーナーのジェシーさん(26歳)は、大学を卒業後、大流行しているフードトラックをファッショントラックに改造したという女性のTV番組のアイデアが気に入り、2013年4月にスタート。ロスベースのアパレルブランド30~50種類、ファッション雑貨を8~15種類をセレクトし『ファンキー&ボヘミアンシック』をコンセプトにした、ファッショントラックをスタート。トラック(20ft)の手配、改装等でスタートアップ費に7万ドル(トラックのサイズや内装により異なるが、平均スタート費用は2万~3万ドルとされています)。その他、ガソリンや光熱費、メンテナンス、駐車代金諸々で月に1,000ドルがかかったそうですが、2013年末には、ブレークイーブンに。各種SNSによる、入荷商品情報や出没場所の告知はやはりワークした様ですが、ひと月に1万ドル程の収益があったという事でしょうか。現在、1日平均30~50人の人が買い物しているそう。これが、ブルックリンの人通りのあるエリアで、ミディアムサイズの店舗を借りた場合、準備費に最低10万ドル、家賃は1万~1万2000ドルと言ったところ。しかも利益を回収するまでにかなりの時間がかかります。
ファッショントラックの利点
実店舗に比べスタート費用がかからないほか、諸経費が少ないため、低価格で提供できる。ミュージックフェス、カレッジキャンパス、観光地等、コンセプトに合わせた客層を狙ったロケーションを選択できる。移動する事で、消費者と直接コミュニケーションを取れるため、テスト販売にも向いている。実際、ファショントラックビジネスの寿命は平均2年という傾向があり、貯めた資金を元に別のベンチャービジネスを始めたり、実店舗をオープンするオーナーが多いそう。スタートが簡単なら、撤退するのも簡単、トラック自体の消耗もあり、長く続けるのは難しいのかもしれません。
消費者を惹き付けるファッショントラックの魅力とは?
トラックに積み込めるアイテム数は限られており、実店舗で買い物をした方が、選択肢は遥かに広い。販売形態が珍しいと言う事もあるが、何故、ここで買い物するのか?個性的なトラックの数々を見ていると、さながら移動式の蚤の市の様な印象を受けます。判で押した様なショッピングモールしかない街にファショントラックがやって来たらどうでしょう?オーナーとコミュニケーションを取りながらの蚤の市気分であれば、その場で出会った物が戦利品。州によっては、一堂に何台ものトラックが集まる『ファッショントラックフェスティバル』等のイベントもあり、まさに蚤の市そのもの。中には、元々ファッション業界で働いていたというセンスの良いオーナーも多くおり、実店舗のショップ店員にはできない友達感覚のアドバイスを受けるのも楽しみの一つ。その土地の消費者に合わせたマーケティングは不可欠ですが、オンラインや通常の店舗では味わうことの出来ない、ワクワク感、ショッピングの新体験が生まれているのではないでしょうか。
ビルボードはもう古い!マーケティングに利用するアパレルブランド
ジェイクルーの姉妹店『メイドウェル』は、現在90店舗近くある様ですが、出店を加速する際に利用したのが、ファッショントラック。フェイスブックで告知の上、ニューヨークからスタート、店舗の無い街にロードトリップツアーをしたのです。その他、『トップショップ』や『マイケルスター』、エスパドリーユで知られる『ソルドス』はビーチツアーを行う等、ファッショントラックをマーケティングに活用したツアーを行っています。店舗の無い街での販売は消費者の生の声を集める絶好の機会と言えます。
新業態『モバイル・リテイラー』の可能性
州別、アイテム別にトラックの居場所をサーチできる、『findafashiontruck.com』や『fashiontruckfinder.com』を見ると、デザイナーアパレルを販売している人もいれば、ヴィンテージ、ブライダル、水着、プラスサイズ、キッズ、シューズ、ランジェリー等の専門トラックの他、ハンドメイド品、インテリア&家具、メイクアップ、フラワー&ガーデン、葉巻トラック、移動ジム等、実に様々。販売する人の個性とアイデアを元に、カテゴリーキラーにも、独自の世界を表現したショップにする事も出来ます。専属コーチを乗せた『ジム・ガイズ』はトラックに必要なフィットネス器具を乗せ、ホームパーソナルトレーナーとして、自宅や庭、オフィス、公園等、どこへでも出向き、セッションを行うというサービス。NYを中心に複数台が稼働中で、フランチャイズもある様です。消費者を待たずに“出向く”トラックならではの利点を生かして、様々な業態のビジネスに広がっている様です。
それぞれのトラックを見ていると、ブランドのホームページやピンタレストのボードを覗いている様な、オーナーの個性やコンセプトが詰まっています。公園にアイスクリームトラックがやってくると、アメリカの子供達は“アイスクリ~ムマ~ン!”と叫びながら駆け寄る姿を見かけますが、“やって来る”トラックには、大人も何か期待が‘膨らむワクワクした気持ちがあるのではないでしょうか。
マックスリー・コーポレーション
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