PICK UP
2025.03.10
【2025秋冬パリ ハイライト1】新ディレクターのショーなどで盛り上がりを見せる
3日目
ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)


Courtesy of Dries Van Noten/Photo by GORUNWAY
ジュリアン・クロスナー手掛ける、初の「ドリス ヴァン ノッテン」のコレクション。幼少時に家族の衣装ケースを開け、服を取り出し、ベルトやスカーフなどのアクセサリー類をコーディネートするという遊びを通して、服に情熱を抱くようになったというクロスナー。服との出会い、原点に立ち返ってコレクションを創り上げたという。
当初より、オペラ座での発表を想定して服作りをスタート。各ルックにはオペラ座に携わる人々の装いや内装に使用されるファブリックなど、様々なエッセンスが散りばめられている。コレクションタイトルは“カーテンの向こう側”。
靴ひもは、象徴的なモチーフとしてコートを飾り、カーペットのモチーフはジャカード織のファブリックやスカーフとなり、トゥシューズのピンクサテンはスカートに転用され、どん帳をまとめるタッセルやカーテンのブレードはドレスにあしらわれる。
世界中を旅した衣装の断片をアクセサリーのように刺繍したジャケットや、先のメンズコレクションでも見られたパフスリーブのジャケットなど、様々な要素が一種のコラージュ作品のようにミックスされ、それぞれが見事な調和を描き出す。ディテールを集積することで生まれるクリエーション。新生「ドリス ヴァン ノッテン」を印象付けたコレクションとなった。
ジュリ ケーゲル(Julie Kegels)


家具からインスパイアされたアイテムを、カルディネ通りのコンサート会場で発表した「ジュリ ケーゲル」。木彫のステージと服が美しい調和を見せていた。
1998年生まれのジュリ・ケーゲルは、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクとダーク・ヴァン・セーヌの指導の下、アントワープ王立芸術アカデミーを卒業。メリル・ロッゲやピーター・ミュリエ率いる「アライア」で経験を積み、独立した後、2024秋冬コレクションでデビューしている。
下着姿のモデルが登場し、ソファの上に置かれたニットプルとシャツとデニムパンツを着用してショーがスタート。クッションを思わせるベルベットのトップス、ブランケットの宣伝タグを付けたケープ型トップスとスカートのセットアップ、木目プリントのブラウスとレザーのスカート、木製のロングドレスなど、家具やインテリアを連想させるルックは、アーティスティックな側面が強いが、コレクション全体にリアリティをしっかりと織り込んでいる。
マスキュリン・フェミニン、カジュアル・ドレッシー、ファンタジーとリアル、相反するものをミックスさせるバランスの妙を披露し、大器の片鱗を見せる。今後の活躍に大いに期待を抱かせる内容となっていた。
ステラ マッカートニー(Stella McCartney)


エキゾチックスキンの代替レザーを作る会社「ステラコーポレーション」をイメージし、パリ最北端のビルのフロアをオフィスに見立て、ランウェイにコピー機やウォーターサーバー、PCなどを置いた「ステラ マッカートニー」。仕事もナイトライフも楽しむ自由な女性像を描いた。
今季はアイコンでもあるボックスシルエットを進化させ、よりストロングなシルエットを創出。サヴィル・ロー仕込みのジャケット類は、これまで通りのパワーショルダーに仕立てているが、ドレスにも応用される。しかし、なで肩のフォルムにすることで、フェミニンさをしっかりと打ち出していた。
今季も多くにリサイクル素材を使用。ボックスシルエットのジャケットに飾られたラインストーンはリサイクルガラス製で、エコファーも再生ポリエステルによるもの。ドレスを飾るフリンジはリサイクルチェーンで、ミニドレスの刺繍部分には、再生樹脂によるラインストーンやヴィーガンスパンコールをあしらっている。
今季は特に、パイソンとオーストリッチといったエキゾチックレザー風のキノコレザーを新素材として用いている。バッグやスカート、ブルゾンに仕立て、ドットパイソンモチーフのドレスやブラウスとコーディネート。
フィナーレでは、男性のポールダンサーが登場して演技を披露。男性社会のマッチョイムズにアイロニーを込めているかのようだった。
トム フォード(TOM FORD)


ハイダー・アッカーマンによる「トム フォード」は、パヴィヨン・ヴァンドームを会場にショーを開催した。アッカーマンは、「グッチ(GUCCI)」時代からのトム・フォードのクリエーションを分析。自らの作風と組み合わせながら、より一層ラグジュアリーな作品を生み出すという新たな方向性を見せた。
1950年代風のバイカージャケットには、ナパレザーのインナーをコーディネート。ナパレザーのロングコート、ローライズのパンツを合わせたナパレザーのTシャツ、ナパレザーのブルーのシャツなど、今季は繊細な素材を多用している。肌の上にベルトがむき出しになったスカートやパンツ、アシメトリーのロングドレスはトム・フォード時代の「グッチ」全盛期を彷彿。
ダブルウールのコートやダブルカシミアのジャケットなどの他に、カシミアを織った素材によるスーツやドレス、シルクジャージーのロングドレス、パイソンのコートなど、最高級の素材によるアイテムが目を引く。
カラーパレットは、黒を基調としながらも、爽やかなミントグリーンやスカイブルー、イエローやピンク、パープルなどを無地で使用し、美しい色調を強く印象付ける効果を生み出す。
最終ルック3点は圧巻。エキゾチックレザーの腑を半立体的に表現し、メタルビーズ埋め尽くしている。実際にレザーをあしらうのではなく、それを凌ぐものを提案。更なるラグジュアリーを象徴するかのようなアイテムだった。
バルマン(BALMAIN)


ヴィレットのコンサート会場を舞台に新コレクションを発表したオリヴィエ・ルスタン。これまでの刺繍などの装飾的な要素を削ぎ落して、カッティングの妙技を直接的に見せるアイテムを並べた。
既にいくつかのコレクションで見せている、自らのルーツであるアフリカを想起させるゼブラモチーフのルックがアクセントとなっている今季。1950~60年代に活躍していたピエール・バルマンのクリエーションを引用しつつ、1980年代のシルエットをミックス。
3Dのクロコイフェクトのゴールドのドレスや、ビーズを全面に刺繍したゼブラモチーフのジップアップドレスなど、華やかさを湛えるアイテムに、無数のポケットを備えたレザー製ジャンプスーツや、ビッグシルエットのレザー製レインコートなど、ワークウェアインスパイアのルックをミックス。イレギュラーなプリーツを寄せたサイハイブーツや、太いニーハイブーツを合わせて、ストロングなモードに仕上げている。
大振りのラインストーンやパールのフリンジは見当たらない。自らの作風を刷新して生み出されたバルマン・ウーマン像。しかし、それぞれに漂う、戦闘服を思わせる強さは健在だった。