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2024.01.29

【2024春夏パリオートクチュール ハイライト】圧倒的な存在感を示すビッグメゾンと若手クチュリエが織りなすコントラスト

写真左から:「メゾン マルジェラ」、「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ」、「フェンディ」、「シャネル」

 

 メンズのパリコレクションに続いて、2024年1月22日から25日までオートクチュール・コレクションが開催された。主催するクチュール組合の公式カレンダー上では、全29ブランドが参加。前シーズンの32から微減したが、公式カレンダー外でのショーも相当数あったため、総数的には変化が無かったように感じられた。前シーズン同様、全てのブランドがショーを行い、プレゼンテーション形式で発表したブランドはゼロだった。

 

 メンズコレクションと同じく、トピックに乏しい今季。ゲストデザイナーにシモーヌ・ロシャを迎えた「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」のコレクションは、高い評価を得ていたようだが、日本からの招待メディアは2媒体のみ。広く開かれたものではなかったため、多くの者が実態を掴めぬまま、その後は話題にも上らなくなった。

 

 公式カレンダー外のコレクションで目を引いたブランドが、「アライア(ALAÏA)」と「パトゥ(PATOU)」。両者ともオートクチュールではなく、プレタポルテ(高級既製服)のコレクションであったが、敢えてクチュールの期間にショーを発表することで、それぞれの創始者、アズディン・アライアとジャン・パトゥがクチュリエであったことを人々に想起させ、その存在感を印象付けることに成功していたに違いない。。

 

シャネル(CHANEL)

Courtesy of CHANEL

 

 ブランドとバレエの深遠なる関係性を、コレクションを通して表現したヴィルジニー・ヴィアールによる「シャネル」。改装中のグラン・パレに代わり、臨時展示場として建立されたグラン・パレ・エフェメールを舞台にショーを発表した。

 

 インスタグラム上で前もって発表されたティザーでは、ボタンにまつわる物語が展開された。米女優のマーガレット・クアリーが主演し、ナオミ・キャンベルとアナ・ムグラリスが出演。監督はケンドリック・ラマーのクリエイティブ・パートナーであるデイヴ・フリー、音楽はケンドリック・ラマーが担当。そしてショーの演出はケンドリック・ラマー自身とデイヴ・フリー、そして映画監督のマイク・カーソンが手掛けた。

 

 「シャネル」が長年に渡りパリ・オペラ座を支援し、衣装を提供していることは周知であるが、ブランド創始者のガブリエル・ココ・シャネルは、ロシアバレエ団を率いていたセルゲイ・ディアギレフを終生支援していた歴史的事実があり、特に1924年初演の「青列車」の衣装は「シャネル」が手掛けている。

 

 マーガレット・クアリーがピエロカラーのツイードジャケットをまとってショーがスタート。合わせられたミニスカートには1枚のチュールが重ねられている。今季はバレエ衣装のチュチュからインスパイアされて、多くのルックにチュール素材をあしらっている。薄いオーガンザ素材も多用され、刺繍用素材としても使用される。チュチュスカートにバレエの練習着であるレオタードイメージのトップスを合わせたルックは、バレエを直接的に想起。全てのルックがエアリーで、そのまま踊れそうな軽やかさを見せていた。

 

 「シャネル」は、ブランドのロゴや襟無しのツイードジャケットを代表例として、バイカラーシューズ、カメリア、コメットモチーフ、など、ブランドを連想させるアイコン・記号をあまたに有し、ブランドにまつわる逸話や物語は尽きない。今シーズンの主題となった舞台芸術「バレエ」は、そんな「シャネル」との繋がりを即座に思い起こさせるものになる可能性を秘めていた。あらためて、「シャネル」というブランドの奥深さを印象付けた今季だった。

 

ロナルド・ファン・デル・ケンプ(RVDK RONALD VAN DER KEMP)

Courtesy of RVDK RONALD VAN DER KEMP

 

 オートクチュール・コレクションを発表して10年、19回目のショー開催を祝った「ロナルド・ファン・デル・ケンプ」。アップサイクルされた素材を使い続けてきた彼の集大成的なコレクションとなった。

 

 絵画プリントの生地を細かなパーツにし、リベットで繋いだドレスや、様々なプリント素材を組み合わせたドレスなど、いかにもアップサイクル素材を使ったと見えるアイテムは、粗雑さの中に不思議な味わいを見せる。

 

 一方、デッドストックの型押しクロコレザーのロングドレスや、特大ポルカドットのカクテルなどは、確かなカッティング技術によって美しく仕上げられている。そのコントラストも、このブランドらしさとなっている。特にテーマを設定していないようだったが、その素材感から多くのルックに1980年代のスタイルを想起させた。

 

ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVÉ)

Courtesy of Giorgio Armani

 

 空想の旅をイメージし、バリエーション豊かなルックで様々な女性像を描いた「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」による「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ」。サーモンピンクやパステルブルーといった淡い色から、フューシャやネオングリーンといった強い色まで多彩なカラーパレットで見る者を魅了した。

 

 パイピングを施した花鳥モチーフのジャカード素材によるジャケットと、オーガンザのセットアップで幕開け。ため息が出る程の豪奢な素材使いはアルマーニならでは。幾重にも重ねた薄いレースのドレスにはクリスタルビーズが刺繍され、水彩画のようなプリント素材のドレスには、ビーズを刺繍したレーシーなトップスとカーディガンが合わせられる。

 

 クリスタルチェーンを編んだトップスを重ねたドレスや、クリスタルメッシュのジャケットなど、クリスタルを多用するスタイルにアルマーニらしさを感じさせる。着物袖のジャケットや、東洋的なモチーフは随所に見られたが、洋の東西を問わない、無国籍なスタイルが生み出されていた。

 

 パレ・ドゥ・トーキョーの会場には世界中からアルマーニの信奉者が来場。最後にジョルジオ・アルマーニ本人が姿を見せると盛大な拍手が送られた。何よりも、今年89歳のジョルジオが92ルックで構成される壮大なコレクションを創り上げたことに驚きを禁じ得なかった。

 

ユイマナカザト(YUIMA NAKAZATO)

Courtesy of YUIMA NAKAZATO

 

 “泡沫(うたかた)”と題したコレクションを発表した中里唯馬による「ユイマナカザト」。2月21日よりスイスのジュネーブで公演が決定している、中里が衣装を手掛けるオペラ「イドメネオ(IDOMENEO)」と公式に連動させ、同公演の総合演出を手掛けるベルギー人の振付家であるシディ・ラルビ・シェルカウイとの共同演出によるショーとなった。

 

 中里はオペラの舞台となった地中海に浮かぶクレタ島を訪れ、ミノア文明時代のトロイア戦争に思いを馳せ、甲冑やミリタリーウェアといった戦いのための衣服への造詣を深めるために、パリの軍事博物館を訪れたという。そこで現代の衣服の原型となったユニフォームの数々に出会い、戦いが終わると忘れ去られてしまう戦闘服の儚さについて考察。

 

 ミリタリージャケットやボンバースといったユニフォーム・ワークウェアは解体され、無数に打たれたリベットをコードで繋ぎ、甲冑は丸みを帯びたトップスに変化する。陶器やガラス、プラチナによるパーツを装飾としてあしらい、オートクチュールのコードに合わせて再構築される。これまでのテクノロジーやバイオ素材による制作の流れとは方向性を違え、ダークだが力強さを湛えたコレクションとなった。

 

ミス ソーヒー(Miss Sohee)

Courtesy of Miss Sophee

 

 クチュール組合の公式カレンダー外で、パリにて2回目のショーを開催したソヒー・パークによる「ミス ソーヒー」。年に1回のみのペースでコレクションを発表している。長く忘れ去られていた古いものに美を感じるというパークは、昨年韓国に帰省した時に出会った骨董品からインスピレーションを得て、コンテンポラリーなクチュールウェアを考案した。

 

 白い花瓶のフォルムは砂時計シルエットの刺繍を施したスカートとなり、白蝶貝製のジュエリーボックスは背中がオープンになったファーストルックのドレスのアイデアとなっている。カラーパレットは宝石と花から引用され、特に花は桜とモクレンをイメージ。

 

 金糸刺繍のブラックのロングドレスや、ブルーのシフォンのドレス、パープルのスリットドレスには、コルセットや下着の要素が見られ、最終ルックのシャクヤクを刺繍したガウンを合わせたビュスティエドレスへと繋がって行く。下着の要素を取り込み、また深いスリットを入れるなどして、挑発的な側面も十分に見せている。パークは、若手の少ないオートクチュールの世界で、オートクチュールらしさを保ちながら、同時にエッジーさをも湛える貴重なクチュリエールと言えるだろう。

 

ヴィクター&ロルフ(Viktor&Rolf)

Courtesy of Viktor&Rolf

 

 ハサミを動かす音がリズムになっている、象徴的なBGMが流れる中、4ルックずつ、7つのグループに分け、28ルックで構成されるコレクションを発表した「ヴィクター&ロルフ」。シルエットを強調させるために、今季は全てのアイテムを黒で統一した。

 

 それぞれのグループのファーストルックは、完璧な仕立てで作り上げられたオートクチュールのアイテムだが、それを出発点として、装飾的な切断を目指してハサミが入れられ、新しいアイテムが形作られていく。

 

 ウエストマークのロングコートは手作業でカットされ、形状はもちろんのこと、コートからドレスへとジャンルにも変化が起きる。刺繍が施されたツイードのスーツは、最終的にミニ丈のカクテルドレスになり、ラフルのティアードドレスはケープドレスに。

 

 それぞれのルックにはコルセットドレスがインナーに合わせられ、表面のズタズタに切り裂かれたドレスとのコントラストも興味深い。最終グループのチュールのベアトップドレスは、大きな穴が開けられ、ヴィクター&ロルフ自身の2010春夏コレクションへのオマージュとも取れる作品に仕上がっていた。

 

フェンディ(FENDI)

Courtesy of FENDI

 

 「フェンディ」のアーティスティック・ディレクターであったカール・ラガーフェルドが抱いていた、「フェンディ」についてのフューチャリズム(未来主義)について考察したというキム・ジョーンズ。今季は、フューチャリスティックでミニマルなシルエットを寸分の隙の無い仕立てによって創り上げ、コレクション全体を繊細で優美なものにしていた。旧証券取引所のホールでショーを開催。各ルックにはドレスの素材に合わせて、様々なバリエーションのクラッチバッグ「バゲット」が合わせられているが、今季もシルヴィア・フェンディが手掛け、ダイヤモンドをあしらったサングラスや眼鏡はデルフィナ・デレトレズ・フェンディが担当した。

 

 ファーストルックは、削ぎ落されたフォルムのボックスシルエットのドレスで、意外性を持たせたアイテムでスタート。チューブトップとペンシルスカートのセットアップ、ロングのニットドレス、クロコダイルのコートドレスなど、シンプルなルックが目立っていたが、徐々に刺繍の面積が広くなっていく。

 

 ウエストをマークしたシンプルなカッティングのコートには、立体的にビーズを刺繍して独特の凹凸感が印象的。スパンコールとビーズで埋め尽くされたジャケットは、より立体的なスパンコール刺繍のスカートが合わせられ、シルクジャージーのロングドレスには、スパンコールをグラフィカルに刺繍。

 

 金箔を乗せたファーのジャケットや、ゴートファーのジャケットとファースカートとのセットアップなど、このブランドらしいアイテムも登場。特に毛足の長いコートとブルーグリーンのドレスは、ファーのように見えて実は全てフリンジであり、独特な素材感が目を引く。最終の2ルックは、竹ビーズで埋め尽くされたスーツとボックスシルエットのドレス。光を反射する表面の艶やかさと、独特の布の流れが目に麗しい。モダニティを具現化したアイテムで締めくくった。

 

ロバート ウン(ROBERT WUN)

Courtesy of ROBERT WUN

 

 オートクチュールを組織するクチュール組合の公式カレンダー上でショーを発表して2回目となる「ロバート ウン」。ワンは香港出身で、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、ロンドンで活動。2022年には仏文化省が関わるファッションコンクールのアンダムで特別賞を受賞し、レディ・ガガやドージャ・キャット、ビョークなど、主にシンガー達に衣装提供している。今季は、ワンが影響を受けた映画からインスパイアされた。

 

 雨に濡れたような刺繍をクリスタルで施した、「マトリックス」イメージのコートドレスでスタート。傘のハットを合わせたホワイトのドレスは、所々黒く、天から黒い雨が降って来たかのよう。トレンチコートのディテールを配したビュスティエドレスは、1990年代のジャン・ポール・ゴルチエやジョン・ガリアーノをほうふつとさせるシルエット。

 

 黒のチュールのドレスには炎がプリントされ、スモーキングコートドレスには深紅のプリーツパネルが飾られる。ドレーピングドレスにも、首元から袖に掛けて大きなプリーツの集合体があしらわれ、ジゴスリーブのドレスにも花びらのようなプリーツがスカート部分を彩る。

 

 割れたガラスをイメージさせる刺繍のロングドレスや、血の雨を浴びたかのようなビーズを刺繍したドレスなど、どれもシュールレアリスティックな仕上がり。「マレフィセント」イメージのドレスは、ジップアップのコルセットタイプのロングドレスで、ニップルピアスのフェティッシュな要素も加えて仕上げた。全24ルックと少ないながらも、そのどれもが美しい仕立てで魅力的。実力を存分に伝えるコレクションとなった。

 

パトゥ(PATOU)

Courtesy of PATOU

 

 公式カレンダー外でショーを開催した、ギョーム・アンリによる「パトゥ」。これまでは1970年代風シルエットのドレスにゴールドのアクセサリー、あるいはレースの付け襟など、アンリの得意とするガーリー&ヴィンテージな側面を強調してきたが、今季はカジュアルなデイウェアからエレガントな夜会服までシックなルックを創出し、既存のイメージを一新。パレ・ドゥ・トーキョーの広間と相まったコレクションは、より一層モダンな印象を与えた。

 

 ニットリブ付きのコートに、リブと同じニット素材のタートルネックセーターを合わせたルックで幕開け。繊細なレースのドレスには無骨なロープベルトを合わせ、ワークウェアシャツにはコサージュを飾ったスカートをコーディネイトし、互いに相反するものをぶつけてコントラストを生み出す。

 

 1960年代風の大きな襟のコートには、レースで仕立てられたシャツが、ミリタリージャケットにはボウをあしらったラヴァリエールシャツがそれぞれ合わせられ、ラヴァリエールシャツはシャツドレスに変化。今季はシャツがキーアイテムともなっている。

 

 最終ルックの舞踏会用ドレスに至っても、ユニフォームの要素を取り入れてモダンにアレンジ。ギョーム・アンリはアーティスティック・ディレクターに着任して6年が経つが、ここに来て新生「パトゥ」を強く印象付けた。

 

メゾン マルジェラ(Maison Margiela)

Courtesy of Maison Margiela

 

 アレクサンドル3世橋の袂にあるスペースでショーを開催した、ジョン・ガリアーノによる「メゾン マルジェラ」の「アーティザナル」コレクション。会場内のカウンターの上には古い皿やグラスが大量に置かれ、アンティークの鏡や古びたビリヤード台が設置されている。どこか、1920年代のブラッスリーを思わせる雰囲気。写真家、ブラッサイの作品にインスパイアされ、パリの月夜の光と影に着想を得たという今季は、ガリアーノの類まれなる発想が素直過ぎる程に発出したものとなった。

 

 ショー開始予定時刻より1時間が過ぎて、シンガー/俳優のラッキー・ラヴがゴスペル隊を従えてパフォーマンス。モデルのレオン・デイムが出演するブリット・ロイド監督によるショートフィルムが流れ、ストーリーから飛び出してきたレオン・デイムがコルセットとパンツをまとって登場し、ショーがスタートした。

 

 モデル達はソバージュを大きくまとめたヘアスタイルで、シースルーのドレスをまとい、それぞれの個性的なウォーキングを繰り広げる。合わせられていたのが、「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」とのコラボレーションシューズ。誇張されたヒップとコルセットで締め上げたウエストは、この世のものとは思えないフォルムだが、その危うさと怪しさが異形への好奇心を掻き立てる。男性モデル達は、雨に濡れたかのような刺繍を施されたジャケットやコートをまとい、ルックによってはコルセットでウエストを極端に絞っている。

 

 様々な色を配したチュール製のシースルードレスは、キース・ヴァン・ドンゲンの絵画からインスパイア。ストライプの白い部分をつまんでカラーブロックを作り出し、ウエストを絞ったシャツドレスのシリーズも、クチュール的な精緻なテクニックで仕上げられている。最終ルックは、ピンストライプのコットンのコルセットとラテックスドレスをまとった英女優のグェンドリン・クリスティー。

 

 1920年頃から始まる「狂乱の時代」のイメージを投影しながら、独自の創造性を遺憾なく発揮。ジョン・ガリアーノこそがファッションショーにドラマ性を持ち込んだデザイナーだが、今回のショーは彼が席捲していた1990~2000年代ほうふつとさせガリアーノに対する当時の人々の熱狂を思い起こさせた。

 

 1年半振りに「アーティザナル」ショーを行ったジョン・ガリアーノによる「メゾン マルジェラ」は、今季どのブランドよりも大きな話題をさらったコレクションだったかもしれない。椅子や照明、その他の調度品で時代設定をし、ガリアーノが好む19世紀からの西洋服飾史を紐解いたようなアイテムをまとったモデルたちが、演技をしながらウォーキング。ドラマティックな演出をファッションショーの世界に取り入れた第一人者は、1990年代から2000年代に見せたガリアーノワールドを見事に再現したのである。「メゾン マルジェラ」のクリエイティブ・ディレクターに就任して以来、さまざまな形でメゾンの表現を紐解いてきたガリアーノが彼自身のクリエイティビティを存分に発揮したショーだった。ショー後、会場は熱狂の渦となり、招待客たちは「ブラヴォー」と叫びながら足で床を鳴らしてガリアーノの登場を待った。それは1分程続いたものの、最終的には叶わなかった。自らの姿を見せなかったガリアーノからの意味深長なサインだったのかもしれないが、様子見である。

 

 バレエをテーマにコレクションを発表した「シャネル」も、バレエ・インスパイアのコレクションを披露した「ディオール」メンズコレクションとのシンクロニシティが指摘され、話題となった。これも様子見ではあるが、今後バレエのエッセンスが男女のファッションに見られるようになるかもしれない。

 

 今季注目したのが、若手のクチュリエである「ロバート ワン」と「ミス ソヒー」。それぞれ香港と韓国出身だが、共にアジア人であり、ロンドンを拠点に活動し、様々なセレブリティに衣装を提供しているという共通点がある。そして、オートクチュールのコードを守りながらエッジーで挑発的な作風を打ち出し、新鮮で魅力的なコレクションを発表しているという点でも通底している。パリのオートクチュールの世界では、技術を維持するという目的もあり、パリを拠点にするブランドが優遇されてきた歴史があるものの、最近は様々な文化的背景を持つ外国人デザイナーを受け入れるようになり、活動拠点は問題視されなくなってきた。ある意味保守的なオートクチュールの世界に、新しい風を送り込んでくれるであろう二人の今後の活動に期待し、注目して行きたい。

 

 

 

取材・文:清水友顕(Text by Tomoaki Shimizu)

画像:各ブランド提供

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