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2023.10.24
【2024春夏台北 ハイライト1】台北ファッションウィーク 注目の新進気鋭ブランド
写真左から「ジェン リー」「レイ チュウ」「ジャスティン ダブリューエックス」「オクリク」
2023年10月11日から22日まで「台北ファッションウィーク(以下TPEFW)」が開催。現地のビッグネームや新進気鋭のデザイナー15ブランドが2024春夏コレクションを発表した。同ファッションウィークの公式会場は台北市の東区エリアにある松山文創園区。旧たばこ工場をリノベーションした情緒あふれる会場で、10のブランドのファッションショーと合同展示会を開催した。TPEFWは毎シーズン、テーマを掲げており、今回は「青・春」をテーマに据えた。オープニングショーでは次世代を担う合同ショーを開催。それ以外にも、「ヤングタレント」や「ニューリード」と名付けた合同ショーを行い、インキュベーション機能を強く打ち出したファッションウィークとなった。
今シーズンも多くの有力日本人バイヤーを招聘し、現地デザイナーとのビジネスマッチングを試みた。今後は、台湾のデザイナーたちのアイテムを日本の店頭で目にすることが増えるかもしれない。すでに「楽天ファッションウィーク東京」でコレクションを発表している「ジョイア パン(GIOIA PAN)」や「アイレンセンス(IRENSENSE)」「セイヴゾン(Seivson)」らに続くであろうデザイナーたちを取り上げる。
レイ チュウ(RAY CHU)
レイ・チュウが2016年に設立したブランド「レイ チュウ」。2017年には上海ファッションウィークに参加、2022年以降は毎シーズンロンドンファッションウィークに招待されショーを行っている。台北ファッションウィークへの参加は今回が初めてだ。
2024春夏コレクションは公式会場から離れてオープンしたばかりの商業施設NOKEでショーを開催した。ロンドンファッションウィークでのプレゼンテーションの模様をスクリーンに映し出してショーをスタート。
現地の司会者やミュージシャン、歌手、ダンサーらノンモデルが、大胆なヘアスタイルでウォーキング。彼らが纏ったのは海に着想を得たコレクションだ。ビキニのブラやシアーシャツなどによる肌見せルック、海の深さを表現したブルーのセットアップやパンツ、タイトミニワンピ、海藻をイメージしたという淡いグリーンのミニマムジャケットとパンツなどが登場。生地の80%は、リサイクルされた魚の鱗や生分解性ポリエステル繊維などの天然素材から作られている。
またモチーフにはエイのマンタを採用。シャツやスーツ、襟やカフスにマンタ型のアクセサリーを付け、モデルがステージに立つと、「レイ チュウ」の3Dプリント技術によって作られたマンタの詳細な骨格構造も確認できる。海洋環境を守ることの重要性を伝えるための仕掛けだ。デザイナーのレイは「このコレクションは自然に敬意を表し、勇敢な精神を体現しています。レイ チュウの服を通して、環境問題に対する意識を高め、誰もが地球のより良い管理者になることを奨励すること」を目指した。
ジェン リー(Jenn Lee)
「ジェン リー」は、2017年にジェン・リーによって設立したブランドでパンクやゴシック、ヴィンテージミックスが持ち味。2021年にはロンドンファッションウイークでコレクションを発表する他、欧州のデザインコンテストに参加し、海外メディアからも注目されている。
2024春夏コレクションは、南港エリアにあるリノベーションスペース「南港ボトルキャップファクトリー」でショーを行った。会場には台湾のインテリアブランド「AJ2 Love Home Concept」の家具を配置。北欧ムードとアヴァンギャルドなフィーリングが広がる空間でショーを開催した。
今シーズンは日本の漫画「NANA」をテーマにコレクションを創り上げ、ロック要素と甘めの要素を融合。ファーストルックに登場した台湾の歌手サンデー・チャンは、ハートモチーフをあしらったアシッドな生地、不均衡なシルエットのドレスを着用。その後もアシンメトリーや捻りを効かせたルックが次々と登場。中には「ヴィヴィアン・ウェストウッド」を彷彿とさせるパンキッシュなルックも現れた。
今回のコレクションではビデオゲーム「Pun Pun Pa」も同時に発表。このゲームはデジタル・ファッション・デザイン・プラットフォーム「ポータル・エム(Portal:M)」と、台湾を代表するメーカー「エーサー(ACER)」とタッグを組んだもの。
オクリク(oqLiq)
ニューヨークファッションウィークやロンドンファッションウィークで発表経験を持つ「オクリク」。東洋のシンプルさとストリートファッションを融合させ、アーバン・アウトドアスタイルを提案しているブランドだ。サステナブルな取り組みにも積極的で外部と協業し、台湾の貯水池の汚泥から作られたビーガンレザーやカキ殻パウダーなどをリサイクルした素材などの開発している。
2024春夏コレクションのテーマは「拡散」。脱構築、再構築、復元、バランスを表現したコレクションだ。ショーの前半ではそのテーマを色濃く反映。東洋の民族衣装にあるような服を構築的な部位やディテールをあしらい独特のルックに仕上げた。中盤以降に登場したトロンプイユや漫画柄のドレスやセットアップ、タコの足を象ったネックウェアなど、ユーモラスでユニークなルックも登場した。
アノウェアマン(ANOWHEREMAN)
ビートルズの楽曲「Nowhere man」からブランド名をつけている「アノウェアマン」はアーティストのボリン・チェンとデザイナーのアンソニーによって設立された。
TPEFWの開幕ショーで見せたコレクションは自由さとロックスピリットを感じさせるもの。ワンピース風のロングトップスにロングマフラーを男性モデルが着用する一方、女性モデルがエレガントなブラウスとブラックスーツを着崩すなどクロスジェンダーを無理なく採り入れている。日本のコレクションシーンとも親和性が高いブランドだ。
ジャスティン ダブリューエックス(JUST IN XX)
ジャスティンことチョウ・ユインが手がける「ジャスティン ダブリューエックス」は”よりローカルに、よりインターナショナルに”というコンセプトでコレクションを発表。現地の有力セレクトショップ「ワンフィフティーン」やECモール「ファーフェッチ」などでも取り扱いのある注目のブランドだ。
2024春夏コレクションは「AI」を主軸に組み合わせ、「So Soul MAD House」と名付けたシリーズを作り上げた。ジャスティンは、AIチャットボットとの対話の中で、ボットが設定した架空の漫画家・樫丸による、同じく実在しない漫画「So Soul MAD House」を創作。 6人の主要登場人物を据えて人物像を描きルックを創り上げた。ブランドのコンセプト通り、欧州コレクションから派生したトレンド要素と台湾の伝統やローカリティをミックス。素材や柄も大胆に混ぜ込んだ。