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2020.04.28

外出禁止のパンデミック時に消費者が求めているもの

 従来ならピクニックやガーデニングセンターが賑わう季節ですが、新型コロナウイルスの流行拡大により、3月中旬から始まったロックダウンは5月半ばまで延長され、外では気分転換の散歩をしている人をちらほらと見かける程度。救急車のサイレンの音が鳴り響く度にまた重篤の感染者が運ばれているのだと気付かされる日々が続いています。米国のソーシャルディスタンスに対する規制は厳しく、隣人と立ち話しをしていただけで、400ドルの罰金チケットを渡された知人もおり、ニューヨークでは最大1,000ドルの罰金が課せられます。ロックダウン状態にある都市では、食料品店をはじめ生活に必要最低限な業界のみ営業可能となっており、調査会社のGlobal Data Retailによると、米国の19万店舗が閉店した状態です。

 

 フォーチュン誌は、過去4週間で2,200万人が失業保険の申請を行ったと報じており、政府からの給付金(1,200ドル)の支給が始まってはいるものの、一度の支給だけでは不十分で、家賃、車のローンや保険、学生ローン、健康保険の支払い等々で、不安を感じている人が多いのが現状です。 

 

参考:ロサンゼルスにおける1ベッドルームの家賃は平均2,360ドル、学生ローンの平均は年間8万ドル、40歳の健康保険料は月576ドル

トライ・ビフォー・ユー・バイ・サービスの需要の高まり

Gemistの公式サイトより

 自宅待機の日々が続き、オンラインショッピングを活用する人が増加するにつれ、商品購入前に自宅で試着、試用できるサービスの人気が高まっています。しばらくは実店舗の営業停止が続くことが予想される中で、試着サービスを提供する企業の増加が見込まれます。例えば、ヴィクトリアズシークレットのシェアを奪う新鋭企業の一つである、Eコマースに特化した下着販売を行う「Adore Me(アドアーミー)」では、もともと新規顧客の30%が商品購入前の試着を選択していますが、新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来の4週間で、50%まで急増しています。

 

 ジュエリー企業の「Gemist(ジェミスト)」も今年2月から購入前の無料トライアルを開始し、リングの試着に加え、石やサイズの変更をリクエストすることが可能で、過去3週間の売上が上昇しています。しかし、非常にデリケートな時期だけに、顧客への売り込み方は慎重に行っています。その他、顧客の好みやサイズに合わせたスタイリングを提供する「STICH FIX(スティッチフィックス)」や、スタイリストによるキュレーションサービスが人気のノードストロームの「Trunk Club(トランククラブ)」も購入前に製品を試す事ができます。

ピンタレストの「TODAY」を利用した“今”必要な商品への誘導

ピンタレストの「TODAY」 タブ

  「Pinterest(ピンタレスト)」のブログサイトによると、家で過ごす人々が増えたことでアクセスが急増しており、先週末は全世界での検索数と保存数が過去最高に達したと報告しています。料理レシピ、子供向けのレッスン、クラフトのアイデア、野菜の栽培方法等のニーズが大幅に増加しています。利用者が“今”必要な情報を求めている背景から、その日のトレンドハブとして「TODAY」というタブを付け加えました。すなわち「TODAY」を見れば、最新のトレンドを知ることができるプラットフォームになっています。また、「TODAY」では、WHOや疾病センターの専門家による情報を特集したり、子供向けの料理レッスン、家族向けの映画、料理レシピ等、今の状況下で人気のカテゴリが表示されるようになっています。

 

 執筆の時点(4月19日)から過去2週間で、「ストレスからの解放」など、ピンタレスト上のメンタルウェルネス関連の検索量が2倍以上の増加が見られています。世界中の人が、インスピレーションを求めて、ピンタレストにアクセスしています。執筆の時点では、アメリカとイギリスのピンタレストの「TODAY」タブ にアイデアが表示されるようになりました。アイデアは「TODAY」のプラットフォームに出てくる様々なコンテンツの事です。例えば先週末の米国のピンタレストでは、「Indoor activity with kids (子供との屋内遊び)」は、2週間前に比べて1,300%増、「Working from home(在宅勤務)」は170%増、「Freezer meals (冷凍食品)」は155%増を記録しました。

 

 また、新型コロナウイルスの流行により、オンラインで買い物する人が急増しており、ピンタレストを通して商品を購入するユーザー数は対前年比で44%増加しています。ユーザーは今必要な商品のインスピレーションを得る為に、ピンタレストに代表されるSNSを活用して視覚的なアイデアから商品を購入している傾向が見られます。

 

 実店舗を閉店しているアパレル関連企業は、在庫コントロールが非常に難しくなっており、EC内での大幅ディスカウントによって購入を誘導している状況が目立っています。当面の間、経済状況に不安を抱えた消費者のマインドに寄り添いながら、EコマースやSNSを通して、コネクションを強化し販売を促進していくことになるでしょう。この様な未曾有の事態に応じ、商品開発、商品情報の発信を迅速かつ柔軟に行う事がこの時期を切り抜ける鍵となるのではないでしょうか。

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