PICK UP
2019.11.27
【EVENT x CONFERENCE】 自ら“アクションを起こす”とき――「デコーデッド フューチャー NY」に学ぶ2020年の歩き方
RINAのFASHION x IT レポート from NYC Vol.114
RINA
時間が経つのは早いもので今年も残りわずかとなりましたね。過ぎた時間を振り返る余裕もなく走り続けた方も多いでしょう。しかも2020年はすぐ目の前に!2020年のマーケットトレンドを探るため、さっそく私はNYマンハッタンで開催されたカンファレンス「デコーデッド フューチャー ニューヨーク(DECODED FUTURE NEW YORK)」に参加してきました。
過去の関連記事:「デコーデッドファッション」NYサミットから学ぶ テクノロジーで変わる店舗とモバイル
「デコーデッド フューチャー ニューヨーク」は、トレンド情報を提供するスタイラス(Stylus)社が主催する1日限りのカンファレンス。現在のマーケットの関心ごとや注目ブランドの取り組みなど、2020年に向けて抑えるべきことが活発に議論されます。当日は、ファッションやビューティー、飲食、トラベルなど幅広い分野について、各業界のリーダーや専門家たちが、リテールやテクノロジー、マーケティングなど様々な視点で語り合いました。
カンファレンスのキックオフに登壇したのはスタイラス社のCCOテッサ・マンスフィールド。彼女が冒頭のスピーチで説明したのが、2019年はおもに消費者が商品やテクノロジーなどを通じてブランドとのエンゲージを求めた年だったということ。そして2020年はアクションを起こす年ということ。まずそこに私は同感したのです。
気候変動にしても政治の話にしても、自分自身の生活に関わることに対し、私たち消費者ものんびりとしている場合ではないという意識は、今後ますます強くなると思います。明るい将来を勝ち取るのであれば、誰かに任せっきりにするのではなく、自ら行動に移していかなければならないと感じていくのでしょう。
このように、2020年に向けて消費者の意識が大きく変わろうとするなか、ブランド側もどうアクションを起こすべきなのか。そこがキーとなりそうです。
「自分たちの立ち位置を表さなければならない。もう受け身のままでいるオプションはない」と話したのは、スタイラス社のコンシューマープロダクト・ディレクターのエミリー・ゴードン・スミス。この言葉を聞いて私が感じたのは、例えばSDGs(持続可能な開発目標)についても、自分たちのブランドや企業がどう取り組んでいくのかを消費者に伝えることが大切だということです。どんな考え方を持った企業・ブランドなのかを発信していくことで、これまでとは違ったオーディエンスの発掘にも繋がるでしょうし、既存の顧客ともこれまで以上に深いエンゲージを構築するチャンスが生まれるでしょう。
不安な要素が多い時代だからこそ、明るい未来へとリードしてくれる企業、そして消費者とともに考える姿勢などを表していくことが大切なのだと感じます。誰かが先陣を切ってから、と受け身になっている余裕はもう2020年には残っていないでしょう。
移り変わりが早いのはトレンドやテクノロジー、気候だけでなく、私たち人間の気持ちにおいても言えることでしょう。顧客の心は迷い、移ろいやすいもの。顧客の意見を聞きっぱなしにしてしまうのではなく、消費者の声、ニーズに耳を傾け、サービスや商品改善へと行動に移していくことが大切です。
まずは1つでもいいでしょう。自分たちの考えや立ち位置を声にし、それを行動に移せることが、変化へのスタートにつながるのだと感じます。社内で相談を繰り返し努力を重ねたとしても、それは消費者に伝わらないのです。
私はできるだけ多くのイベントやカンファレンスに参加していますが、そこで感じるのが、年々女性の参加者が増えていること。同時に、「日本ではどうなのだろう?昔に比べ、女性にも平等なチャンスが与えられる世の中へと少しは変化しているのだろうか」と想像してしまいました。
カンファレンス=コミュニティづくりの動きも
この数年で誕生した米国でのカンファレンスや、新たなアプローチで進化している内容のイベントで感じるのは、“コミュニティー作り”を大切にしていることです。
その中には、セッションをスタートする前に、参加者同士が知り合うきっかけを作るため、隣に座っている人同士で質問を投げかけたり、コミュニケーションの時間を設けるものもあります。場を和ませる意味もあるのでしょうが、最初は正直面倒くさいなと感じました(笑)。ですが、気軽な気持ちでやってみると、単純な質問と回答から話が膨らみ、午後のセッションに参加する頃には積極的に声をかけたりするようになるのです。気づけば新たなネットワークが広がっているというわけです。
またここ数年で、セッションの合間にメディテーション(瞑想)の時間を取り入れるカンファレンスやイベントも増えました。2、3年前ならば1日のカンファレンスが始まる前にヨガのクラスを実施するイベントもありました。今でもヨガを取り入れるイベントはありますが、メディテーションは多くの人がライフスタイルに取り入れていることもあり、多くの出席者は抵抗なく参加しているようです。
気候変動・サステナビリティ・ウェルネスが新キーワードに浮上
今回のカンファレンスでは、気候変動やサステナビリティ、ウェルネスについてもテーマとして多くあげられていました。
私が参加したサステナビリティについてのセッションで印象的だったのは、NYやロンドン、サンフランシスコ、コペンハーゲンに拠点を持つデザイン会社パールフィッシャー社のブランディ・パーカーが言った言葉。「(ボトルに)水をどう入れるかという発想は、さらに物を利用しているということになり、サステナブルであるとは言えないわけです。私たちはパッケージのデザインをしていくなかで、消費者やブランドの習性をどう変えていけるのか。より良い素材をただ使用すればいいという話ではない。どうすればさらに良い習慣を作っていけるのかなのです」というものでした。
D2Cファッションブランドの「クヤーナ(CUYANA)」によるセッションも心に強く残りました。“Fewer the Better(少ない方が良い)”をコンセプトに、上質で長く愛用してもらえる服やバッグを販売しています。多くの商品点数を揃えるのではなく、タイトでも満足度の高いコレクションを展開し、そこから顧客との深いエンゲージメントを生んでいます。服を多く持たなくても、自分に似合う上質な服をいくつか持つほうが豊かであるという考え方は、パールフィッシャー社のパーカー氏の話にも通じると感じました。
2020年は、今まで以上に物事に対する考え方が変わっていくでしょうし、変わっていくことが求められる年になりそうです。
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
■ アパレルウェブ ブログ |