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2019.11.25
【2020春夏メンズトレンドキーワード】広がるアースコンシャス 台頭するテーラリング メンズマーケットを読み解く6つの変化
文:山中健
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ロゴストリートのマス化、テーラーリングの台頭などが続いているメンズマーケット。ミッドトレンドとトップトレンドの間のスラック(隙間)が広がりつつあるとも言える。それを睨みながら2020春夏メンズコレクションシーンを振り返ると、混沌としている感は否めない。しかし、逆に新たな芽が多く出てきているとも言える。
カラーはシックなブラックとポジティブなヴィヴィットやパステルがトレンド。日本人好みのブルーバリエーションやアーシーカラーはベースとして定着している。ロゴに後継する柄トレンドは総柄や加工感のある素材たちだ。
そしてファッション業界全体で叫ばれているサステナブルへの対応。環境に配慮した工程を経て生産した製品、再生した素材やリメイクしたピースなどはますます増えている。長期化するリラックストレンドと結びつき、アースコンシャスというメッセージをビジュアル化したテーマも数々発表された。
アースコンシャスがベースに
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アースコンシャスがデフォルト(標準化)になりつつある今、トロピカルテーマとシンクロしてミリタリーやサファリがカムバックしそうだ。長期トレンド化しているアウトドアジャケットに加え、サファリジャケット、ミリタリージャケットなどが多く見られた。またベストもトレンドアイテムとしてカムバックしそうだ。パンツはショートパンツ、キャロットパンツなどのロングセラーアイテムが中心である。今季らしさを表現するのが柄。ジャングルや鳥などのトロピカル柄、ウィメンズでのトレンド柄である小花を含んだボタニカル柄などが一気に広がる。カラーはベージュやブラウンなどのアーシーカラーやカーキ、オリーブなどのミリタリーカラー中心だ。
テーラリングトレンドが軽さと結びつき広がる
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2019秋冬シーズンに広がったテーラリングテーマ。2020春夏シーズンは、リラックスした素材や製法が目立つ。ランウェイでは見慣れたデコントラクト(非構築的)であるが、いよいよマーケットに広がりそうで、黒やモノトーンと相まって、和服や80sアバンギャルドの進化系のようなルックも。トレンドアイテムはリラックスしたダブルブレストジャケット、ニューアイテムはスリーブレスジャケットやロングジレ。パンツは、ストリート感のあるルーズやワイドが多く、セットアップで大人な表情に。
ストリートはよりアーティスティックに
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長らく続くロゴストリート。マス化が進みそろそろ終焉と言われながら、長期的なトレンドとなっている。コアな層はストリートを支持し続けるが、ファッションコンシャスな層は新たなものを求めている中で、ストリートにシフトしてきたメゾンやトップデザイナーたちは、マスマーケットとの差異化手法としてアートとのコラボやアート柄との採用を進めている。アースコンシャスな風景画からストリートカルチャーやデジタルアート、ギークなサブカルまで様々なアート要素が出揃っている。
クラシカルトレンドはアメリカ要素を帯びて明るく
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(左から)バーバリー、ミスター・ジェントルマン、マイケル・コース
日本での支持が根強い英国クラシカルトレンド。今シーズンはよりポジティブにアメリカやエレガントスポーツと結びついたデザインやアイテムが多い。アメリカの古き良き青春映画に出てくるような、レトロなポロシャツ、ラガーシャツ、テニスやヨットなどのチルデンセーター、シアサッカーなどを着崩したルックが新鮮だ。
フレンチシックは静かに進行
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カジュアルやユースマーケットが注目しているフレンチカジュアルトレンド。今シーズンはランウェイでも見られることが多かった。フレンチとロックを融合し70年代風に仕上げたルックや、BCBG風にトリコロール配色したルック、南仏風リゾートルックなどの綺麗めなルックが新鮮だ。要チェックアイテムとしては、ネイビーブレザー、ブーツカットパンツ、ストライプシャツ、仏語文字柄アイテムなど。
加工感のある素材やバッドな柄で差異化
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日本のユースに人気のあるデザイナーたちが打ち出したのが、加工感のある素材だ。タイダイやぼかしプリント、ペンキなどをストリートやアウトロー感たっぷりに使用。またグラフィティ調の文字総柄なども新鮮。
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山中 健(やまなか・たける)
大手百貨店、外資系ブランド、大手経営コンサルタント会社を経て、ファッションビジネスコンサルタントとして独立。 アパレル業界を中心に、ライフスタイルショップ、百貨店、SCなど幅広い業態に対しマーケティングやMD、リテール、海外進出のコンサルティングを手掛ける。 トレンド分析、市場調査、戦略策定などのマクロなテーマから、個店支援、研修などの現場へのブレイクダウンまで様々なテーマのコンサルティングに対応可能。 また、欧米、アジア、国内のコレクション取材やファッションマーケット調査を数多く行っており、国内外のファッションビジネスの動向を語ることができる貴重な存在として注目されている。 2009年にアパレルウェブコンサルティングファーム主席研究員、2011年にアパレルウェブ編集長就任。 |