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2018.01.10

2018年のテーマは“脱・モール”? 改革を迫られる米国ショッピングモール

大規模な改装中のテキサス州の「ザ・ショップス・アット・ウィロウベンド」モール

 8,000店舗以上の小売り店が大量閉鎖や倒産に追い込まれ、企業のCEO達が去った激動の2017年。米国小売り業界にとって大きな変換期となりました。2018もすでに、ドラッグストアチェーンの「ウォルグリーン」や玩具の「トイザラス」、ファッション・アパレルの「ギャップ」をはじめ、新たに縮小・撤退する店舗数が、3,600店舗以上はあると予測されています。

 実店舗が生き残るためのスタイルが模索される中、「コストコ」や「ホームデポ」は買い物客がクイックに食事できるランチカウンターを設置。雑貨小売りチェーンの「ベッド・バス&ビヨンド」は、“ワールドマーケット”というグルメフードセクションを用意しました。さらに、「アーバンアウトフィッターズ」は、ホームグッズの販売やカフェバーの設置を始めたほか、レストランでは訪問客の思い出に残るような、スパイスやアパレルアイテムなどのPB商品を販売するなど、変化を遂げています。アンカーストアやチェーン店が撤退し、テナントを失うことになるショッピングモールにとっても、今年は変革の年となりそうです。

大人も子どもも!ニューエイジの集客術は“複合ミックス・プロパティ”

「Crayola Experience」パークのエントランス風景

 現在、米国の大手ショッピングモールでは、時代に適応したモデルチェンジに総力を挙げています。全米で300店舗を構えるサイモングループのなかでも、トップパフォーマンスを誇るショッピングモール「キング・オブ・プルシア・モールKing of Prusshia Mall)」は、撤退したJCペニーの跡地に、ホテルやアパート、オフィススペースなどを備えた複合スタイル施設の建設を検討しています。

 また、シカゴベースのスターウッド・リテイル・パートナーズ(Starwood Retail Partners)が運営するテキサスの「ザ・ショップス・アット・ウィロウベンドThe Shops at Willow Bend)」は、1億2,500万ドルを投資し、42万平方フィート(約3万9,018平米)を新たに増床。来年の完成時には、キッズシアターやジム(「エキノクス」)、オフィスに加え、全米で4つ目となる「クレヨラ・エキスペリエンス(Crayola Experience)」を併設した大規模な多目的スペースへと生まれ変わる予定です。クレヨラ・エキスペリエンスは、クレヨン会社のクレヨラが運営するアミューズメントパークで、ファミリー層集客のフックとして期待されています。「チーズケーキファクトリー」や「シェイクシャック」といったお馴染みのテナントより、独占的なテナント誘致で差別化を図ろうとしています。

 同じくスターウッド社の運営するカリフォルニアの「ノースリッジモール(Northridge Mall)」は、JCペニーの撤退跡地に、子どもと大人が一緒に楽しめる複合スペースの開業を目指しています。ボーリングやカラオケ、ゲームコーナー、ビリアード台を設置するほか、アルコール飲料の販売も行います。

ライフスタイル密着型 地元で話題のクラフトビール店を誘致

 また、テルセイ・アドバイザリー・グループ(Telsey Advisory Group)が運営するボストンの「ネイティック・モール(Natic Mall)」は今春、スーパーマーケットの「ウェッグマンズ」を誘致しました。顧客満足度2位という人気食料品店の導入は、確実に集客アップがねらえそうです。若年層が車を所有しなくなったことや、モール内での酒類提供が増えたことにより、ロサンゼルスの「ウェストフィールド・センチュリーシティモール」は、配車システム「ウーバー(Uber)」の車を待つためのウェイティングラウンジや、メディカル・クリニックを完備しました。

 ワシントン・プライム・グループ(Washington Prime Group)が運営するインディアナ州の「マンシーモールMunice Mall)」は、クラフトビールのブームを受け、地元で人気のパブ「リデンプション・アルワークス(Redemption Alewerks)」をオープン。そのほか、グルメサンドイッチや地元のベーカリーなどを誘致しました。昨夏には、従来のフードコートに代わるニューレストランのスタイルとして、「フードトラックフェス」も試験的に開催しました。

ミート&グリート!ECのポップアップショップでマンネリ解消

ニューヨーク州・ルーズベルト・フィールドモールのスタートアップ企業のポップアップ「The Edit」

 サイモングループでは、ECのスタートアップ「The Edit」のポップアップショップを開き、新しもの好きな若年層の集客を企てたり、また、スタートアップ企業に実店舗を低価格で貸し出すことで、スタートアップと顧客とのリアルな触れ合いの場を提供しています。上の写真は、ニューヨーク州の「ルーズベルトモール」に設けられた「The Edit」のストアです。ワシントン・プライム・グループでも、キャンデイショップの「シェルビーズ・シュガー・ショップ(Shelby’s Sugar Shop)」などオンライン専業ストアのポップアップショップをオープンしたほか、アマゾンロッカーの設置や、電気自動車「テスラ」のチャージステーションなどを導入しています。

 百貨店「シアーズ」の代わりに、オフプライス店や若者向けディスカウントストア「ファイブビロー」など、不況時にも好調な店舗に入れ替えたり、あるいは、Kマートの代わりに、アマゾンの傘下となった「ホールフーズ」を入れるなど、手っ取り早い方法をとる小規模な不動産投資企業もあるようです。しかし、長距離運転が必要だったアウトレットに代わり、近場のオフプライス店が支持を得たように、遠方のアミューズメントパークやカラオケボックスが近隣のモールにあれば、足を運ぶ動機となります。

 ショッピングモールは、スーパーマーケットや病院など、生活に密着した施設としての役割と、新たな体験を楽しむための場所として、“ミックスマッチ”なスペースへと変化していきそうです。


 

 

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