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2018.12.27
【2019年を知るキーワード―インナー編】ブラジャーからアクティブウエアまで 必須条件は“快適さ”
文:武田尚子
ランジェリー(インナーウエア)の領域は、ブラジャーなどファンデーションをはじめ、ナイトウエア・ラウンジウエア、アクティブウエアまで幅広いが、全体を通して「快適さ」が必須条件になっています。グローバルなトレンドからいうと、「ボディポジティブ」「ウエルネス」「ウエルビーイング」「サスティナビリティ」「ネイチャー」がメインキーワードといえるでしょう。
ここでは国内における商品動向を軸に、3つの方向性を紹介したいと思います。
◆キーワード1:
ブラジャーが軽やかに進化
トリンプ・インターナショナル・ジャパン「天使のブラ」(2019春夏物展示会から)
近年、ノンワイヤーの人気がすっかり定着し、デイリーなブラジャーがより軽く、快適なものに進化しています。接着技術仕様のフラットでラクな着け心地のハーフトップがヒットした影響も小さくありません。ノンワイヤーであってもバスト補整機能はしっかりおさえているのが特徴で、快適性と造形美の両立、ラクな着用感とバストメイクの両立はもともと日本のお家芸といえます。
デザイン面では、アンダー長めのソフトな「ブラレット」スタイルに象徴されるように、ゆったりしたトライアングル型フルカップが世界的なトレンド。フェミニンで優しい雰囲気も味わえます。
一方ではワイヤーフォームの見直しもあって、2019年、ブラの選択肢がますます広がるに違いありません。
◆キーワード2:
猛暑を乗り切る快適インナー
グンゼ「クールマジック」(2019春夏物展示会から)
地球温暖化による2018年の夏の暑さは記憶に新しいですが、その実感の上に立ち、2019春夏物展示会では多くのインナーアパレルが、主に肌着(ニットインナー)を中心に猛暑対策を打ち出していました。
綿100%および綿混素材をはじめ、さらっと軽く、肌触りのいい快適な薄手素材が充実。吸汗速乾はもとより、通気性や接触冷感機能のある、とにかく涼しいものに力が入れられています。背中がメッシュになったもの、汗取りパッドやブラパッド付きなどのディテールもきめ細かく、切りっぱなしのフリーカットやシームレス技術も欠かせないものになっています。
この他、ブラジャーでは夏の汗対策を意識したものが展開されています。
◆キーワード3:
ヨガリード役にスポーツ盛況
アツギ「クリアビューティ・アクティブ」(2019春夏物展示会から)
2020年の東京オリンピックを控えてのブームというだけではなく、世界的にスポーツとランジェリー(インナーウエア)の融合が進んでいます。
ひと言でスポーツといっても多様な種類がありますが、昨今、より一層ニーズを高めているのがヨガ。女性のライフスタイルに密着したものであり、インナーウエア業界からのアプローチとしては、機能性に富んだスポーツブラとボトムをキーアイテムに、ラウンジウエアやルームウエアの一環としての提案も強化されています。
デザイン面では、スポーティでフェミニンというトレンドがランジェリー全体に及ぼすものは大きいですし、それ以上にスポーツウエアとデイリーウエアの境はますます縮まるはずです。
関連するウエア類も幅広く、スポーツ業界やアウターアパレル業界との競合も激しくなるに違いないのですが、「スポーツ」は広義において2019年の一つのキーワードになるでしょう。
武田 尚子(たけだ・なおこ)
ボディファッション業界専門誌記者を経て、1988年にフリーランスとして独立。ファッション・ライフスタイルトータルかつ文化的な視点から、インナーウエアの国内外の動向を見続けている。特に世界のインナーウエアトレンドの発信拠点「パリ国際ランジェリー展」の取材を1987年から始め、年2回の定期的な海外取材は既に連続30数年に及ぶ。
これまでインナーウエア情報を伝えてきた主な媒体は、繊研新聞、朝日新聞、エコノミスト、ファッション販売、ブレーン、装苑アイ、NHKテレビ番組など多数。日本ボディファッション協会の30周年記念誌『30 YEARS NBF』(2007)では、日本のボディファッション業界の川上から川下までの変遷をまとめた。
現在、『月刊誌 みすず』にホームウエア(ナイトウエア・ラウンジウエア)の変遷をたどった「もう一つの衣服」を隔月で連載中。また、セミナー講師やアドバイサー業務も行っている。
著書は、『鴨居羊子とその時代・下着を変えた女』(平凡社)など。
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