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2018.12.28
【2019年を知るキーワード―雑貨編】“キャッシュレス時代”をチャンスに変えるには
文:川﨑智枝、鈴木清之(B.A.G.Number編集部)
バッグ・服飾雑貨業界にとっての2018年は、「キャッシュレス化」というキーワードが席巻したように感じます。今まで売場の中で安定的な人気を誇っていた「長財布」が、今年に入って急激に失速。ファッション誌でも、ミニ財布やカードケース類の特集が組まれるなど、にわかに“コンパクト化”する小物類に視線が集まりました。今後は、スマホとどう持ち合わせるのかといった、組み合わせの提案が不可欠になりそうです。
そしてバッグや革小物は、ファッションと連動するトレンドアイテムではなく、自分の“趣味性”を表現する雑貨感覚だったり、ケアしながら長く楽しんだりと、使う人の“らしさ”に寄り添うアイテムであることが求められてきました。
明確に打ち出した作り手の世界観、“映える”ワクワク感、軽さや防水機能など、バッグはこうあるべきという既存パターンから脱却する、新鮮な切り口に注目が集まりそうです。
◆キーワード1:
“キャッシュレス時代”の財布をアップデートする使い方提案
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「riowa」コンパクト財布のヒットブランド。カラフルなカラーバリエーションが人気
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「アバッリ」キーケースに財布機能がついた便利アイテム
現在はクレジットカード、電子マネー、そしてQRコードによるスマホ決済と、様々なキャッシュレス決済が登場しています。経産省もキャッシュレスビジョンを掲げ、官民挙げて世界最高水準の80%を目指そうと推し進めています。とはいえサービス会社の新規参入が相次ぎ、ユーザーにとっては「まだどこがベストなのか決められない」状態でもあります。
2020年の東京オリンピック、インバウンドの拡大、深刻な人手不足への対応など、キャッシュレス化を後押しする要因は多いものの、反対に地震や災害時に起きた停電により、レジが機能不全に陥る事態などもありました。
現金主義とキャッシュレスは、しばらくは共存していくことになると思います。それには、「カード」「スマホ」「財布」「その他(キー、ポーチ)」等を、ユーザーがライフスタイルや使い勝手に合わせて自由に組み合わせる、“オンデマンド”的なスタンスが重要になってきます。コンパクト化から更に、薄型財布、束入れ、コインケースなどへと派生する動きも顕著です。
使い方を決め付けすぎず、「色々な使い方ができますよ」という“余白”を残して提案することも、作り手側に求められる要素だと思われます。
◆キーワード2:
服だけでなく多様なシーンに“映える”プロダクト化するバッグ
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「ニュートラルグレイ」筒形がデスクに置いてもサマになる
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「革切子®」伝統的工芸品、切子をモチーフにしたコレクション。和装にも似合う
ファッションだけでなく、多彩なジャンルにアンテナを張り巡らす高感度ユーザー。彼らの購買意欲を刺激する、希少性、価格に見合う適正価値として「プロダクト感覚」への関心が高まっています。
「スマホとコンパクト財布をどのように持ち運ぶか?」というニーズを満たすミニバッグは「映える」デザインが必須。デイリーな着こなしだけでなく、アウトドア、花火大会・・・と服というよりもシーン、コミュニティ、環境などがコーディネートの対象に。そのため、ファッションよりプロダクト、雑貨的な感覚のほうが合わせやすく、写真やSNS投稿で「映える」のではないでしょうか。
ビジネスシーンで考えると、スーツ、クールビズスタイルに合うだけでなく、電車通勤でかさばらず、車の移動で使いやすく、フリーアドレスのオフィスでデスクに置いてもサマになる存在感も欠かせません。自立する仕様であれば、スマホスタンド替わりにも便利。
ITバッグブーム後、ノームコアブームを経てバッグのトレンドは長期化。希少性、価格に見合う適正価値が求められ、わかりやすい基準となる指針として「プロダクト感覚」が支持されているのかもしれません。
◆キーワード3:
撮り方とSIMフリーで、スマホポーチが浮上
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「キプリス ウィメンズ」19年春夏展示会より。“アラウンド管理職世代”の働く女性たちに向けた提案が好評
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「アム」19年春夏展示会より。華やかなスマホポーチは結婚式、卒業式などのセレモニー、旅行ほか幅広いシーンで人気
「インスタ映え」、「映える」と二年連続でトレンドワードとなったスマートフォンでの撮影。ライフスタイルに溶け込み、撮影している場面に出くわすことも多いと思いますが、近年ある変化が見られます。
それは、持ち方。従来の縦向きではなく、横向きで持つことが新たなスタンダートに。SNS投稿用、動画撮影には横向きが適しており、ブログなどでも横位置写真が推奨されていることも影響しています。これまでの定番、手帳型のスマートフォンケースでは、撮影がしにくく感じるユーザーがいるため、シンプルなケースやスマホリングへと移行。動画視聴やゲームにも適しているようです。
SIMフリー、低価格スマホの普及でiphoneのシェアが低下した近年、他ブランドユーザーにとって専用ケースの選択肢が少ないことから、ショルダータイプのスマホポーチが人気。収納スペースの開口部やポケットをオープンにした「
サコッシュの定番化の流れもあり、その派生アイテム、としての位置づけも。キャッシュレス化が進行する2019年はさらなる進化が期待されます。
◆キーワード4:
「ロング」&「ジャスト」の時代
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「パンプスメソッド研究所 i/288」288パターンのサイズバリエーションから 自分の足にいちばん近い一足が見つかる
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「アンメットルキャレ」取外し可能なファーとカゴとの組み合わせで長い夏も楽しめる
弊誌編集部でファッションの潮流を「ロング」と「ジャスト」でまとめてみました。「ロング」は「トレンド」「ライフ」「サマー」。
変化が少ない「ロングトレンド」時代、定番アイテムの売れ行きが好調。またファッション関連の支出を抑え、ケアしながら長く愛用する「ロングライフ」志向も顕著です。
12月に夏日を記録した平成最後の夏。2019年も高い気温は続くかもしれない「ロングサマー」対策の強化が急がれます。
一方「ジャスト」では、「サイズ」「プライス」「タイミング」。大きな話題となったzozoスーツをはじめ、カスタムオーダー、計測によるフィット感が重視された「ジャストサイズ」。
サコッシュ、ウエストバッグのヒットにより値ごろ感が変化。フリマアプリなどとの買い分けが進み、新品にこだわらないユーザーも増加。新しい「ジャストプライス」を見極めたいものです。
必要なものをいますぐ買いたいというニーズ、「ジャストタイミング」も同様。ユーザーは季節感、トレンド感を素早く味わい、バイ&リセールを楽しんでいます。変化する「買い方」に合わせ、「売り方」も進化しなければ。SNS時代のユーザーとしっかりと向き合い、次々と生まれる新しいニーズに応えていきたいですね。
◆キーワード5:
不便解決・社会課題解決型の消費
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「レスキューランジェリー」被災地での女性の困りごとに寄り添ったラインナップ
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「ace.(エース) 」“満員電車で迷惑になりにくい”をテーマにしたビジネスシリーズ
2018年は大きな豪雨災害や震災被害が相次ぎました。日本全国どこにいても被害に見舞われる可能性がある中で、服飾雑貨関係でも社会課題の解決を掲げる動きも出てきました。
「レスキューランジェリー」というブランドは、作り手の方の避難所での経験から、水も運べる洗濯バッグとランジェリーとをセットにして販売。洗った後は、外から見えないように下着も干せる、被災者の立場に寄り添った役立ちアイテムです。
また、毎年のように起こるゲリラ豪雨対する「防水」も大きなテーマです。水の入らない「止水ファスナー」をデザインのようにあしらったり、北欧ブランドで完全防水のポリウレタンリュックがヒットするなど、レイン対応がファッションに浸透しつつあります。
加えて、近年満員電車のリュックの持ち方マナーが厳しく言われていますが、「ace.(エース) 」では満員電車でも迷惑になりにくいビジネスバッグを提案しました。「前抱え用のリュック」「足元におさまる薄マチブリーフ」「幅を取らないショルダー」など、不便さを解決するテーマが取り上げられています。
トレンドに限らず、“困りごと解決”
川﨑 智枝(かわさき・ちえ) 「B.A.G. Number」編集長
靴バッグ業界専門コンサルタント会社「アジアリング」に23年勤務、2014年からフリー。 全国のべ2,000店舗の服飾雑貨店の取材を通じた、現場密着型MDアドバイス&プランニング。川上から川下まで、現場発想による“何を売るか”“どう売るか”のコンサルティングや研修をのべ約200社に対して実施。 小売店、バイヤー向けトレンドセミナー実施。バッグ業界向けとしては業界唯一。 スタッフ、店長、営業マン等に向けたコーチング研修、ワークショップセミナー実施。生涯学習開発財団 認定コーチ。日本NLP協会プラクティショナー公式認定。 「フットウエア・プレス」「インテリア・ビジネスニュース」に毎月執筆中。 著書に「靴・バッグ 知識と売り場作り」(繊研新聞社) がある。
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鈴木 清之(すずき・きよゆき) 「B.A.G. Number」ディレクター
「装苑別冊」(文化出版局/現在は休刊)で編集・記者として活動後、フリーランスに。PR(業務委託)を経てオンラインライターとして始動 一般社団法人 日本皮革産業連合会 オフィシャルブログ、TIME & EFFORT、「Japan Leather Award」SNSのコンテンツ運用を担当。皮革業界の情報発信を行う。 「装苑オンライン」ブログ、「つくり手ブログ」(スタイルストア)を平日毎日更新中。 ウェブメディア「B.A.G.Number」と連動し、バッグやファッション雑貨を手がけるクリエイター、イースト東京のイベントまで幅広く情報を発信。 女性ファッション誌「ファッジ」の姉妹サイト「ペルル」でも不定期連載中。
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