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2018.06.08

日本はキャッシュレス社会へ移行できるのか?(6) 経産省がQRコードの規格統一へ

 

 経産省が、QRコード利用による決済規格の統一に乗り出すことになった。日本のキャッシュレス化を推進するために有効な方法と評価されているQRコードの利用については、ゆうちょ銀行がスマホを使った「ゆうちょPay」というシステムを、19年2月から開始すると発表している。先行実施中の横浜銀行やふくおかフィナンシャルグループ(FG)傘下の福岡銀行の加盟店でも利用可能だ。秋にはりそな銀行系や熊本銀行・親和銀行・近畿大阪銀行も合流する予定だ。

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 5月下旬には、3大メガバンクがQRコードの規格を統一することに合意した。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFG、三井住友FGの3行はスマホによる決済で連携し、支払時に使う「QRコード」の規格を統一して、19年度の実用化を目指すことに合意している。

 もし、日本に無秩序に多数のQRコード決済規格が誕生してしまうと、消費者や小売店の利便性が制約される懸念があり、普及を進める上での足枷になる不安感も否めなかったことから、経産省が国民経済大改革への音頭を取ることになった。

 6月中に大手銀行や楽天、NTTドコモ、KDDIが参加する「キャッシュレス推進協議会」(仮称)を立ち上げる。例えば、「Japan連合」のような統一のロゴマークを作成して、QR決済に馴染めるように返金や返品の手順も統一する。将来的には他国の電子決済とも擦り合わせを行い、国際規格の策定を目指すことも想定している。

 商品やサービスの売買に現金を使用しないキャッシュレスへの順応度には、人生観や年齢によって相当のばらつきが予想される。ある日突然、現金が使えなくなることは考えられないが、高齢者や社会的弱者いじめにならないような配慮は欠かせない。日本のように現金への信頼度が高く、ATM網が全国津々浦々にまで行き届いた国では想像もできないが、キャッシュレス先進国のスウェーデンのキャシュレス率は95%以上だという。銀行店舗の56%では現金の取扱いがない。日本のお店でたまに見かける「クレジットカードは扱っていません」という表示の代わりに、スウェーデンのお店には「現金お断り」の看板が珍しくないようだ。

 今までの動きが余りにも鈍すぎたということだろう。混乱なくキャシュレスの割合を高めていければ、銀行のコスト削減や余剰人員の活用の可能性も出て来る。人手不足が深刻な日本社会で労働者の再配置が適切に行われ、効率的な社会へ脱皮できることは社会のニーズにもマッチしている。経産省のタクトが適切な旋律を導き出すことを期待したい。(矢牧滋夫)

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