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2019.11.08

洋服の青山「デジラボ」、戦略の成否は!?

デジタル・ラボの導入イメージ。(画像: 青山商事の発表資料より)

 

 デジタル・ラボ(デジラボ)は、洋服の青山(青山商事)の救世主となりうるのか。デジラボは、いわゆる「オムニチャネル」戦略の推進策。ネットと実店舗を融合した次世代型店舗として、2016年3月期から導入を開始。初年度、デジラボを介したEC売上高は1000万円。それが前3月期は6億円。だがここからが勝負、とする見方が多い。

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 無理からぬ話で前期の総売上高は2%減の2453億円も、6億円は0・25%弱に過ぎない。しかし洋服の青山は「本気」そのもの。デジラボは10月末時点で22店舗(総店舗数892)に導入されているが、「本気度」は以下の2点からも窺える。

(I)リニューアルされ目下プレオープン中の、いわば旗艦店:銀座本店(11月本格オープン)にデジラボを導入した。アナリストはこう説明する。

 「改装後の銀座店は免税・新ブランド・オーダー・レディースの各コーナーを新設。本丸のスーツコーナーは数量ベースでみると従来の2000着から1000着に縮小する。こうした状況下でそれをカバーするのがデジラボ。全店の在庫と連動しているから、銀座店のEC上に欲しいものがなくても他店の在庫で売り逃しを免れることが可能になる。これはデジラボ導入店と非導入店の間に共通していえる」。

(II)デジラボの機能強化。具体的には以下の通り。

 

★デジラボとは、の説明画面を設営。販売員が一々説明していたのでは、時間がかかり非効率的。それを文字・画像で簡略化。オムニバス戦略の新たな入り口の創設。

★人気商品ランキング機能の導入。実店舗では分からないが、デジラボなら一目瞭然。かつ例えば履物がいわゆるパンプスの場合など、ヒールの高さが表示される。適宜な丈の女性用パンツ型スーツの営業の武器になる。

★コーディネート機能の付加。スーツは仕事用ばかりとは限らない。就活用もあれば結婚式等催事用もある。着用するシーンに応じたコーディネートを提案する。

★デジタルサイネージ(映像表示システム)の多様な活用。着用するシーンに応じ「伸長・ウェスト・体形」データに基づくスーツのタイプや価格帯別の選択が可能となる。ちなみにビジネススーツでは価格帯指定で1000候補ほどが示され、これに体形データを入力することで最終的には数十件の商品に絞り込まれていく。

 アナリストは「デジラボの機能強化」に関し、「デジタルサイネージを活かし、デジタル採寸機能の拡充も視野に入れている」とした。

 手元の四季報の業績欄の見出しは【下振れ】、材料欄は【選択と集中】。洋服の青山に「デジラボ」によるEC拡充は、真の救世主になるのだろうか。経過を見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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