「2020年初頭に楽天やアマゾンを超える国内No.1のECサービスになる」。ヤフーで仮想モール「ヤフーショッピング」やネット競売「ヤフオク!」などのEC関連事業を管轄するコマースグループを統括するグループ長の川邊健太郎副社長は12月7日に報道陣などを集めて開催した会合で自社が展開するECサービスの目標についてこう宣言した(写真)。
現状、「ヤフーショッピング」などのEC関連の流通総額は前期決算終了時点では5000億円弱に対し、先を行く競合の流通総額は2兆円超と彼我の差は大きい。わずか数年でこの差をどう埋め、前に躍り出られるか。具体的な戦略やその高い目標に到達するための勝算について、「ヤフーショッピング」などを統括するショッピングカンパニー長の小澤隆生執行役員はグループ全体の"カード"を組み合わせ、ビジネスを多層化することでトップに躍り出ることが可能になると解説する。小澤氏曰くヤフーが属するソフトバンクグループは「携帯電話キャリアとEC、検索、メディア、決済・金融、会員組織(※有料会員「ヤフープレミアム」)という6つを持った世界で唯一の企業グループ」とした上で、単独の事業で収益を見るのではなく、これらの6つの事業をうまく組み合わせた戦略を採っていくことがポイントだと話す。
例えば今年からソフトバンク(SB)の携帯電話契約者を、「ヤフーショッピング」での商品購入時のTポイントの付与率を一般ユーザーの5倍とするなど様々な特典を付けている「ヤフープレミアム」の会員とみなし、さらにポイント付与率を増やして10倍の10%とする試みを始めたが、これにより、SBユーザーの購入率が大幅に伸び、流通総額の大きな押し上げにつながるなど「まずキャリアとショッピングモールをくっつけてみたら相当うまく行った」とした上で「これまでは各事業がそれぞれ収益を追いかけていて有機的にできなかったが、これからはまだ4、5つはある"カード"を活用していきたい。これまでヤフーは『ヤフーショッピング』で売った瞬間だけで儲けようとする手足を縛って戦っているような状態だったが、上下を含めて儲かればよいはず」という。
つまり、有店舗小売業が小売りでは儲けが出ていなくとも決済・金融事業や不動産事業などの別事業で全体で収益化していることや、アマゾンが戦略的な価格で客集めを行う直販での収益はあまりなくとも、「マーケットプレイス」からの手数料やECとはまったく異なるクラウドサービス「AWS」で稼ぎ出した利益を使い、会社全体を成長させていることと同様に、コマース事業もグループの他の事業の収益化に貢献するための1つのカードという考え方で「全部ひっくるめて収益が成り立っていればよいはず。単体で赤字黒字と論ずるのは意味がない」とし、ECの金の流れを活用して決済・金融事業を展開したり、それらのデータをフィードバックして広告事業にも活用することで会社全体の事業戦略にも結びつけることもできるという。
また、「現状、端末や通信環境など3キャリア間で差別化できる要素は少ない。究極的にはキャリアが儲かっていればよいと考えれば、SBユーザー10%ポイント付与のような一見、不経済な施策ができる。SBを使う意味の1つに『ヤフーショッピング』があり、それによりSBの契約をやめる人が減り、新規で利用する人も増えればそれでいい」とし、「現在、SBユーザーは約2000万人。仮に1人が年間20万円購入して頂ければ流通総額は4兆円でトップになれる」とSBユーザーへの優遇措置を高めていわばSB利用者用の会員制ECにしてしまっても競合よりも前に立てる可能性もあるという。
ただ、もちろん、それだけでなく、"他の手"による流通総額拡大策も進める。「アマゾンや楽天になくヤフーにあるものは間もなく100万を突破するであろう出店者数。この100万のマーケッターとどのような試みができるのか。例えばリアルの物流拠点として見てもすごいことができそうだ。これからいろいろと取り組んでいきたい」と意気込みを語った。