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2021.11.18
楽天と東急 渋谷にOMO型店舗、衣料品を販売、靴や家具の店も検討
楽天グループと東急、両社の合弁会社、楽天東急プランニングは11月11日~12月1日、楽天が運営するファッション通販サイト「Rakuten Fashion(楽天ファッション)」のOMO型ポップアップストアを、東京・渋谷の商業施設「渋谷スクランブルスクエア」5階に開設している(1821号で既報)。ビームスやユナイテッドアローズなどの大手セレクトショップを中心に約30ブランド、180商品を展示。商品に付いたQRコードをスマートフォンで読み取ると、楽天ファッションに移動し、商品の購入が可能となっている。
楽天と東急は昨年7月、両社が保有するオンラインとオフラインのデータを分析してソリューションを提供する会社として楽天東急プランニングを設立。あわせて、東急ストアや東急百貨店、東急ホテルズ、東急のショッピングセンターに、楽天の決済サービスを導入、新規顧客の集客効果や既存顧客の利用頻度増といった効果が見えてきたという。
楽天東急プランニングの笠原和彦社長は「実店舗とECのネットワークを活用した新しい販売形態を広げていきたい」とポップアップストア開設の狙いを説明。クロスユースによる「売り場の顧客体験向上」を目指し、まずはファッションをテーマに実験した上で、他の分野にも広げていきたい考えだ。
楽天でファッション分野を統括する、松村亮執行役員コマースカンパニーヴァイスプレジデントは「ECは『誰が何を買ったか』『何に興味があるか』を把握できるのが強みだが、ファッションを買う場合、サイズの問題や色・素材が確認しづらいという課題がある。技術の進化で以前よりはウェブでも対応できるようになったが、依然として『実際に着てみたい・見てみたい』という要望は強い。一方で、実店舗は『誰が何を買ったか』『何に興味があるか』は把握しづらいが、知識や経験豊富な販売員がおり、リッチな顧客体験を提供できる。今回のポップアップストアはオンラインとオフラインの”いいところどり”をしていきたい」と店舗のコンセプトを説明した。
具体的には、楽天ファッションのビッグデータを参考に、顧客層に合致した特集テーマを決定。それに沿う形でトレンドの人気商品を選び、最終的にはスタイリストが販売するアイテムを決める。また、東急百貨店のスタッフによる、商品説明やスタイリングなどの接客もポイントとなる。
ECと実店舗の相互送客に関しては、楽天IDと楽天ポイントを活用。事前にエントリーした上で来店すると、楽天ポイントが貯まる仕組みも導入する。さらには、楽天IDと位置情報を使い、ポップアップストア近辺にいる楽天ユーザーに店舗の存在を周知する。
店舗のターゲットは20代後半~30代女性、テーマは11日~20日は「2番手ニット」、21日~12月1日は「次の私の定番コート」で、価格帯は1万円~4万円程度となっている。
今後の楽天におけるOMO戦略について、同社の松村執行役員は「リアルでの購買体験は全てがオフラインでカバーできるわけではないので、新しい顧客体験を作っていくのは大きなテーマ。ただ、当社だけでは実現できないので、今回の東急のように、オフラインに強い企業と組むことで作り上げていきたい」と展望を述べた。楽天東急プランニングの笠原社長は「今回の取り組み次第だが、紳士靴や寝具、家具など、体感が重要な分野でも同様の取り組みを検討し、全国に広げていきたい」とした。
近年、楽天ファッションは流通額を大きく伸ばしている。11月11日に開催された楽天の第3四半期決算説明会で、三木谷浩史社長は「ジャンル戦略がうまくいっており、特に楽天ファッションは絶好調だ」と述べた。松村執行役員も「以前は、ファッションブランドにとってECは『ゾゾとその他』だったが、今は『ゾゾと楽天』になった」と手応えを口にする。OMO戦略の強化により、楽天ファッションの存在感をさらに高めたい考えだ。