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2020.11.12

小田急百貨店 EC強化へ商材や機能を拡充、SMS使った簡易EC始動、500以上のショップが参加

 

 小田急百貨店は、ECチャネルを強化している。ギフト依存からの脱却を図る目的で商品カテゴリーを拡充しているのに加え、新客開拓に向けては店舗受け取りサービスを充実させているほか、店頭の販売員が通販サイトに掲載のない商品でもSMSを介して簡単に販売できるシステムの提供を始めた。

 同社は今年3月に通販サイト「小田急百貨店オンラインショッピング」を刷新した。それまではギフトとフード、コスメのECだったが、リプレイスに合わせて商材を拡充。フードの一カテゴリーだったリカーを強化したほか、ベビー&キッズ、ライフスタイルのカテゴリーを新設した。

 ライフスタイルはコト提案も含めカテゴリーミックスができる売り場として設置。婦人用バッグやアクセサリー、リビング用品などに加え、10月上旬には時計売り場も設けるなど百貨店店頭のカテゴリーに近づけた。

 また、コロナ禍では店頭でしか購入できなかった企画もECチャネルでコンテンツ化した。密を避けるために実店舗での物産展を休止していることから、北海道、九州などの物産展をECだけで開催。ECチャネルとしても、自社で商品を抱えずに産直で商品群を拡充できる利点があり、約2週間の物産展開催期間にとどまらず、その後の中元・歳暮といったギフトでの取り扱いにつなげる。

 同社では、実店舗が休業していた4~5月のEC売上高は前年同期比2・5倍に拡大したという。

 今後は単品で商品を拡充するよりはライフスタイル提案型の売り場を作っていく。コロナ禍のクリスマスや正月など自宅で過ごすことが多い時期に、従来はクリスマスケーキやおせちといった単品訴求が中心だったが、今年はクリスマスプレゼントだけでなく、ホームパーティー用の食品とカトラリー、リースなどのグッズ、アクセサリーなどクリスマス向けのページを作りカテゴリーミックスで訴求を強める(画像)。

外部モールに出店を開始へ

 新規獲得では店舗連携の取り組みを強化している。同社はECで購入したコスメを送料無料で、専用ロッカーで受け取れるサービスを展開しているが、今年6月からはコスメを中心に「店舗受取可」アイコンのつく商品を対象に、EC購入後に新宿店と町田店、ふじさわ、あつぎ4店のサービスカウンターで受け取れるようにした。10月にオープンした時計のコーナーでは、各ショップの店頭で受け取れるサービスをスタート。腕時計のベルト調整などメンテナンスのニーズにも対応した。

 また、友の会など組織会員へのアプローチも強化。美容家電などを割引価格で購入できる限定コンテンツやサービスを会報誌で紹介し、EC会員化で成果が出ているようだ。

 10月1日には各ショップが店頭欠品商品などについてSMSを介して簡単にネット販売できる「在庫レス販売」の仕組みを整えた。

 従来のように商品リストを提出してもらい「小田急百貨店オンラインショッピング」に掲載する売り方ではなく、店頭で管理するiPhoneで各ショップの販売員が商品を撮影し、必要な情報だけを入力して顧客の携帯電話にSMSでメッセージを送信。顧客はメッセージ内のURLから同社のカートシステムを使って当該商品を購入できる簡易ECとも言える仕組みだ。

 ショップにとっては店頭での欠品商品などの売り逃しを防ぐことができる。購入時にはECへの会員登録が必要なため、同社は購入客との接点が得られて次の提案が行える。

 「在庫レス販売」には500以上のショップが登録。同社では顧客との関係性が深いショップほど売り上げが期待できるとしており、すでにラグジュアリーブランドなどでは高額商品の販売実績も出てきている。

 将来的には関係性の薄い顧客であっても、雑誌で見た商品の在庫確認の電話があった際などに、店舗に取り置きする感覚でそのまま販売するような使い方も想定している。

 一方、ECチャネル上では、11月中に外部ECモールに出店する。まずはターゲット層の異なる「PayPayモール」と「Qoo10」に出店し、来年にはさらに出店を拡大する計画で、「お客様を待つだけでなく、外部モールに攻めていく」(樋口光太郎事業創造部eビジネス担当統括マネジャー)とする。

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