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2020.01.16

【事業責任者に聞く 「アマゾンペイ」の現状と今後」㊦】 TV通販支援の試みも開始、音声サービスとの連動にも注力へ

 前回に引き続き、アマゾンジャパンの決済サービス「アマゾンペイ」について同事業を統括する同社の井野川拓也Amazon Pay事業本部長に現状と今後の方向性について聞いた。

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――「アマゾンペイ」の今後の方向性は。

 「事業者の声、困りごとに対応していきたい。例えば、テレビ通販番組の画面上に、通販サイトの販売ページに誘導するQRコードを表示して、視聴者が番組紹介商品をすぐに簡単に購入できるように支援する試みをテレビショッピング研究所と一緒に19年9月くらいから女性向け電動シェーバー『フローレス』を紹介する30分枠の深夜帯の番組で実施している。テレビ通販事業者の悩みの1つは受注対応体制だ。近年の人手不足でコールセンターのオペレーターの人員を確保すること自体、大変だが、これが深夜帯の番組ではさらに大変になる。また、テレビ通販では番組放送時や終了直後に受注や問い合わせの電話が殺到する。人手を十分に確保できないと受注のピーク時には対応しきれない分は放棄呼となってしまい、販売機会の損失となるわけだが、ピーク時にあわせて人員を確保すればコストが増大することになる。こうした悩ましい問題を解決するために開始した施策だ。具体的には番組の画面にテレビショッピング研究所の通販サイトで『フローレンス』をアマゾンペイですぐに購入できるランディングページに誘導するQRコードと『QRコードで今すぐアクセス』『Amazonアカウントで簡単にご注文できます(ご面倒な住所・クレジットカードの入力が不要です)』との説明文を表示したL字バーを表示し、視聴者をネット受注に誘導する形だ。これにより、電話受注量を抑制し、人手が多くなくても放棄呼を抑えて機会損失を減らす狙いだ。これまでもテレビ通販番組で通販サイトに促すQRコードを表示してウェブ受注を増やす取り組みなどはあったが、せっかくお客様をウェブに誘導しても、やはり、購入時に住所やクレジットカード情報の入力が面倒だと、購入に至る前に離脱してしまうこともあったわけだが、今回の取り組みでは『アマゾンペイ』で個人情報などの入力なく、2クリックですぐに商品を購入できるため、誘導後の離脱も少ないはずだ。現在、効果検証などを行っているが、手ごたえはある。アマゾンペイを導入してもらい、購入ページに誘導するQRコードを表示するだけで、実施自体も非常に簡単なため、他の事業者にも要望があれば展開していきたい。この取り組みも『WEB接客型AmazonPay』(前号本欄参照)も我々の日本のチームが事業者の声をもとに開発したものだ。本格的な機能の開発はアマゾンの開発拠点がある米国やインドで行わねばならないが、事業者の悩み事を解決する機能はある意味で『アイデア勝負』だ。アイデアがあれば実現するための開発自体は軽く、我々でも開発することができるし、こうした事業者の声に寄り添った機能を今後も開発していきたい」

 ――18年8月から「アマゾンペイ」を実店舗の決済にも対応させた。現状は。

 「導入店舗は徐々に増えていっている。大きなところで言えば郵便局の郵便窓口で2月から導入されるキャッシュレス決済の決済手段の1つとして『アマゾンペイ』が採用された。郵便窓口で切手やはがきの購入、郵便や宅配便の差し出しなどでの決済時にアマゾンペイを使って決済できるようになる。5月からは全国8500局で対応が始まると聞いている。このように実店舗向け決済も着実に進めているが、やはり我々が得意な部分、事業者に(他サービスとの)違いが出せる分野にまずは注力していきたい」

 ――注力していきたい分野とは。

 「1つは先ほどから申し上げているオンラインのところだ。そしてもう1つは”音声サービス”との連携だ。アマゾンでは独自開発した人工知能(AI)の『アレクサ』を活用した音声サービスやそのアレクサを搭載し、話しかけることで、好きな音楽を再生できたり、家電の操作や通販での商品購入ができるスピーカー『アマゾンエコー』を販売しているが、これにアマゾンペイを連携させることで、利用者は音声で商品を注文できるようになる。現在、アレクサやエコー経由で音声でアマゾンから商品を注文できるほか、アレクサで利用できる音声サービス『スキル』に、アマゾンペイを連携させたスキルを開発することで事業者も音声ショッピングを行える。すでに様々な事業者のショッピングスキルがリリースされているが、やはり、アマゾンペイ対応スキルを開発するためには一定の工数がかかるため、事業者側には負担があった。そうした負担を軽減するため、あらかじめショッピングスキルに必要な機能をそろえたテンプレートを提供して、すぐに音声ショッピングに対応できるスキルをリリースできる取り組みが進み始めてきた。アマゾンペイのパートナー企業の1社であるアイピーロジックが11月11日から提供を始めたオープンソースのECパッケージ『EC‐CUBE』を利用して通販サイトを運営する企業向けの新たなプラグイン機能だ。音声でアマゾンペイを使った商品の購入できたり、直前に購入した商品の再購入、推奨商品を確認やそれらのカート追加、ポイントの確認などが可能になるなどショッピングスキルに必要な機能があらかじめ搭載されているため、このプラグインをインストールして設定するだけで、事業者はスキルをゼロベースから開発することなく簡単に音声ショッピングを展開できるようになる。

 また、19年10月からこれまでアマゾンの商品でのみ対応していた『エコー』を介して、注文した商品がいつ届くのかなど配送状況を音声で通知する機能をアマゾンペイ導入事業者も使用できるようにした。すでにパソコンや周辺機器をネット販売するドスパラや海外用のWiFiレンタルサービス『グローバルWifi』を展開するビジョンの商品に対応している。こうした機能もどんどん事業者に活用してもらいたい。

 アマゾンペイの強化に今後も取り組んでいきたい。具体的には言えないが、例えば、アマゾンペイでは現在、クレジットカードでの決済にのみの対応だが、これをアマゾンのサイトで導入している決済サービス並みに多様な決済手段に対応していくなど事業者の要望に対応していき、利便性を高め、アマゾンペイが利用しやすいようにしていきたい」(おわり)

 

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