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2019.09.26

大手ECが配送・受取で新サービス、“ラストワンマイル”の課題解決に

 

楽天とアマゾンジャパンが新たな配送・受取サービスに着手した。楽天は自動走行ロボット(UGV)を使い西友の店舗から隣接する公園の顧客のもとまで商品を無人配送。アマゾンは提携先の店舗に設けたロッカーやカウンターで商品を受け取れるサービスを開始した。両社とも”ラストワンマイル”の課題解決を見据えた取り組みとし、新サービスはドライバー不足や宅配便の再配達問題に寄与するか注目を集めそうだ。

 

<楽天 自動走行ロボット>

西友と商用サービス、将来的に「楽天市場」商品も

 

 楽天は9月19日、自動走行ロボット(UGV)を使った配送サービスの実験を、神奈川県横須賀市の「うみかぜ公園」で行った。公園に隣接する「西友 リヴィンよこすか店」から同公園に商品を配送するというもので、9月21日~10月27日までの期間、公園でバーベキューなどを楽しむ一般利用者向けに商用サービスを展開する。数年以内には本格サービスを展開したい考えだ。

 公園を訪れた利用者は、リヴィンよこすか店で取り扱う、生鮮品を含む食材や飲料、救急用品など約400品目の商品を、専用のスマートフォンアプリから注文することができる。利用者の指定した時間と公園内の受け取り場所にUGVが商品を届ける。

 スタッフが商品をUGVに詰め込むと、UGVが配送を開始。走行するルートは登録されており、ルート内の障害物に関しても避けられるようにあらかじめ入力されているが、人や物が通行の妨げになる場合でも、自動で回避する機能がある。到着後は利用者のアプリに通知。利用者はアプリに暗証番号を入力すると、UGVのボックスが届いて商品が受け取れる。UGVは出発地点に自動で帰還する。

 使用するUGVは中国大手のネット販売事業者、京東集団から購入したもので、最大速度は20キロ、最大積載量は50キロ。サービスを実施するのは、期間中の土曜日と日曜日。決済は楽天IDを使った「楽天ペイ」から行う。配送料は税込み300円。うみかぜ公園はバーベキューやピクニックを楽しむ利用者が多いことから、公園内にポスターを貼るなどしてサービスをアピールする。

 UGVは道路交通法の関係上、公道を走ることができない。同社の安藤公二常務執行役員は「こうしたサービスを実際に行うことによって、どうすればUGVによる配送が実現できるかについて、官民協議会などを通じて積極的に議論していきたい。政府にも前向きに捉えてもらっているが、先駆けて実際にサービスを行うことで、未来を感じてもらうとともに、実現までに乗り越えなければいけないことを把握し、政府に提案していきたい」と今回のサービスの狙いについて説明する。

 同社では今年7月4日~9月28日まで、リヴィンよこすか店から、横須賀市内の観光地である無人島「猿島」に、ドローンで食品などを届けるサービスを実施している。9月19日現在で注文数は70以上、アイスクリームや牛肉、ソフトドリンクなど450個以上の商品が猿島に配送されたという。

 ドローンは山間部や離島など、配送困難なエリアでの活用を計画しているが、UGVに関しては将来的には都市部における「ラストワンマイル」の役割も期待している。「ドライバー不足で深夜に配送するのが難しい。また、子供の病気や丘陵地に住んでいるなどの理由で買い物に簡単に出かけられない人もいる。こうした人たちにとってUGVによる配送サービスは役立つ」(安藤常務)。1台のUGVが複数の利用者宅に配達するのではなく、1カ所に配達するUGVを同時に多数運用する形を考えているという。

 ただ、歩道を走るのか、車道を走るのかといったルールも全く決まっておらず、「経済産業省や国土交通省には積極的に取り組んでもらえるのだが、道交法はかなり手強い」(同)。思いもよらない障害物への対処などの課題もあるが、安藤常務によれば「かなりクリアになってきている」とのことで、「技術的な問題に関してはドローンよりも早く本格サービスが実現できると思っている」(同)という。将来的には「楽天市場」で注文された商品のラストワンマイル配送に活用していくことになるが、法改正が必要なため、現段階では本格サービス開始のめどは立っておらず、「ちょっと時間がかかるのではないかと思っているが、数年以内に実現したい」(同)。

 本格サービスを展開する際には、多数のドローンやUGVを1カ所に集め、遠隔で操作・監視ができるプラットフォームを考えており、次世代通信「5G」を活用してドローンやUGVがカメラで撮影した動画をリアルタイムで確認できるようにする。

 いたずらなどの犯罪防止対策とするほか、商品を受け取る際にも、機体に近づいた利用者の顔写真を瞬時にデータセンターに転送し、楽天IDに登録されている顔写真と照合することで、ロックを解除する機能も実現可能という。

 

<アマゾン ハブ受け取り>

年内に200カ所設置、提携先にロッカー・カウンター

 

 アマゾンジャパンは9月18日、提携先に設置したロッカーや提携先の店舗カウンターでアマゾンの注文商品を受け取ることができるサービスを開始した。顧客の利便性向上と再配達の解消を目的としたもので、ロッカーはコンビニのファミリーマートや小田急電鉄の駅など、カウンターはマッサージ店をチェーン展開するりらくなどの店舗に設け、顧客は注文時に指定して受け取れる。年内に東京や神奈川を中心に200カ所(ロッカーとカウンターを各100カ所ずつ)に設ける予定で、来年からは全国展開に乗り出す。

 ロッカーで受け取れる「Amazon Hub(アマゾンハブ)ロッカー」は当初、ファミリーマートのコンビニや小田急の駅のほか、スーパーを展開する富士シティオ、昭和女子大学などと展開。一方のカウンター受け取りの「AmazonHubカウンター」はりらくのほか、商業地や観光地の店舗での荷物預かりなどを行うecbo、大学生協事業連がスタート時点での提携先となる。今後、今回の提携先以外でもロッカーやカウンターを設けるパートナーの提携先事業者を広く募集していく。

 ロッカーで受け取る場合は、注文時に利用したいロッカーを指定。ロッカーに商品が届くとスマホにバーコード付きの通知メールが送信され、ロッカーに出向いてスキャナーにバーコードをかざすと商品が収納されているロッカーの扉が開き受け取ることができる。カウンターも注文時に利用したいカウンターを指定しておくとカウンターに商品が届くとメールの送信があり、そのメールのバーコードとカウンター担当者の専用アプリをダウンロードしたスマホでのスキャンによる確認で商品を受け取ることができる。

 ロッカー、カウンターで受け取ることができるのは、アマゾンが販売する商品とマーケットプレイス出品者の商品でアマゾンが配送するものが対象。オプション料金はなしで、普通便のほか、お急ぎ便と当日お急ぎ便にも対応する。ロッカーで受け取ることができる商品はサイズが42×35×32センチ未満、重量4・5キログラム未満、カウンターは個々の拠点ごとで異なる(各拠点の上限を超えた場合は不可)。アマゾンの物流センターからロッカーとカウンターへの配送はデリバリプロバイダー(地域ごとに配送を受け持った大手宅配便以外の運送業者)が担う。保管期間はロッカーが3日間、カウンターが14日間となる。

 ロッカーとカウンターはアマゾンの顧客の利便性の向上、再配達の解消といった目的があるが、提携先は新規客の集客や既存客の来店増といったメリットが期待できるという。なおロッカーの設置費などはアマゾンが負担する。

 9月18日の発表会見では、111個を収納できる大型のロッカー(サイズが高さ205×幅458×奥行60センチ)を用いデモを行ったが、ロッカーのサイズは小型のものも用意しているという。

 会見でアマゾンのジェフ・ハヤシダ社長は「再配達の解消につなげたい。ドライバーの身体的負担、そして心理的負担を軽減したい」と再配達対策について述べた。またスタート時の提携先については「コミュニティーにおける顧客の利便性についての理解や考え方が一致したところと組んだ」とした。

 提携先のロッカー設置やカウンター開設は、ファミリーマートがスタート時に田町と横浜のコンビニ2店舗に設置し受け取りを開始。小田急電鉄は下北沢駅、共同駅、祖師谷大蔵駅、成城学園前駅、生田駅、読売ランド前駅に9月までに設置し、年内に4カ所を追加する予定。神奈川や東京でスーパー50店を展開する富士シティオは10月までに4分の1に当たる12~13店にロッカーを設置する。ecboは年内に100カ所までカウンターを広げるとし、りらくもカウンターでのサービスを9月に2店舗、さらに年内に10店舗を追加する。

 新サービスについてファミリーマートの澤田貴司社長は「既存店の客数が伸びない状況で、1人でも多くの送客をと提案いただいた。店舗では荷物の受け渡しを行っているが、その8割がアマゾンの荷物。都市部の店舗ではその数が多く、店員の負荷となっている」とコメントし、集客やスタッフの負担軽減を期待した。

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