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2019.06.06
京都きもの市場 品ぞろえ強化でEC好転、2次流通品がEC売上高の3割に、合併後の利益改善が課題
着物のネット販売などを手がける京都きもの市場は、今期(2019年7月期)のEC売上高が前年比10%増程度での着地を見込んでいる。近年は拡充してきた実店舗や展示販売会に通販顧客を送客してきたことで、ECチャネルの売り上げは目減りしていたが、通販サイトの品ぞろえの充実などで好転している。
同社は、「ECを再強化しなければリアルへの送客効果も薄れる」(田中敬次郎社長)とし、今期はEC会員の拡大に向けて通販サイトの取り扱い商品数を20%程度拡大。中でも売り上げ増に貢献しているのが新古品や中古品といった着物の二次流通商材で、EC売り上げ構成比で30%を超えてきている。
着物業界では、以前のように新しい商品が次々と出てくる状況ではないこともあり、有名作家や人間国宝の着物、ブランド着物といった高価格帯商材のリユース品はニーズも高いという。
京都きもの市場では、通販サイト上で着物や帯などの宅配買い取りを実施。往復送料や査定も無料とし、着物の価値が分からない二次流通業者ではなく同社への査定依頼が増えているようで、とくに価値のある着物はクリーニングやメンテナンスなどを施して再販している。
通販サイトでは着物だけでなく、和装小物や帯なども含めて常時1万3000点程度の取り扱いがある。これまでと比べてサイト掲載商品数は大きく変わっていないが、二次流通品の充実もあって商品の回転頻度が上がっている。
昨年6月に立ち上げたメディアサイト「きものと」(画像)については、コラムやブログ、イベント情報、レッスン情報などコンテンツの発信頻度を高める。SEO対策の観点からも着物に関心がある消費者との接点作りの場として運営。5月中旬にKITTE丸の内(東京)で開催した同社最大規模の展示会で実施したさまざまなイベントの様子を、外部の着物好きなライターがお客様視点で伝えるフォトレポートなどを含め、6月以降は週1回以上の頻度で更新していく。
また、6月初旬には1億円以上を投じて基幹システムのリプレイスを実施。同時に通販の商品発送についても従来は自社と外部企業で行っていたが、完全に外部委託することでコスト削減を進める考え。
一方、ECは好転したものの、全社売上高は横ばいで推移している。同社は昨年8月1日にグループ会社で和装品の卸を手がけるタナカゼン商事と、着物の展示販売事業を行う京都シルクを吸収合併したが、「販売手法と収益モデルが大きく異なる会社をひとつにすることの難しさを感じている」(田中社長)という。通販で扱う商品を対面販売で販売しても利益率が下がり、減少分を補うだけの新規顧客を獲得できていないようだ。
ただ、吸収合併直後に比べると実店舗および展示販売部門の利益率は上がってきている。京都きもの市場によると、対面販売は営業力、接客力に頼る部分が大きいため、対面販売の収益構造に基づいてより高単価な商品、利益率の高い商材を商品構成に組み込み、利益率の改善につなげている。
今後は、年間400回以上開催している展示会も絞り込む。地方開催は来場者数にムラがあるため、都心部での開催に集中したり、プロモーション手法を変えるほか、店舗内催事に切り替えるなどして展示会単位で黒字化を図る。
実店舗事業については、店舗に初めて来店した顧客の7割が「ECで見た商品を確認したい」という消費者で、ECの店舗取り寄せサービスが来店のきっかけになっているが、今後は店舗スタッフの接客水準やイベント性など企画のレベルを高めることで店舗のファンに育成していく。
統合2年目の来期は地ならしを継続する。長期的なファン獲得に向けた営業施策をチャネルをまたいで取り組む。「売上高だけでなく利益をしっかり出せる事業モデルを確立した上でアクセルを踏みたい」(田中社長)という。売上高については前期の30億円強に対し、中長期的には50億円を目指す方針だ。