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2019.04.25

【三陽商会 ECの成長戦略は?㊦】 ブランド別のECを開設、自社モールとID連携、運営はルビー主体で

 三陽商会(は今期(2019年12月期)、岩田功社長が責任者を務める「デジタル戦略本部」を新設し、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを活発化させるのに合わせ、EC事業ではオペレーションの強化を図るために自社通販サイト「サンヨー・アイストア」の運営を子会社のルビー・グループに移管していく。

 また、複数ブランドを扱うモール型の「サンヨー・アイストア」とは別に、人気ブランドの「ラブレス」や「エポカ」「マッキントッシュロンドン」「マッキントッシュフィロソフィー」の単独通販サイトを立ち上げ、これらもルビーが運営する体制を整える。

 ルビーはハイブランドのEC構築や運営代行で実績があり、ライセンスブランドも展開する三陽商会としてはルビーのサイト構築ノウハウを活用できる。一方、三陽商会の自社ECも売上高40億円規模に拡大しており、その規模のサイト運営や広告運用などの知見をルビーに還元することで、同社のEC運営代行業務にも幅が広がるとみている。

 アパレル企業のECは、自社の複数ブランドを扱うモール型と、ブランドごとに通販サイトを持つケースに分かれるが、三陽商会ではモール型を継続運営しながら、まずは集客力や知名度の高いブランドなどでブランド別のECを新設。その際、既存ユーザーの利便性などを考慮して「サンヨー・アイストア」のIDでそのままログインできるようにする。

 3月下旬にセレクトショップ「ラブレス」のブランドサイトを刷新し、オンラインストアと統合して「ラブレスオフィシャルオンラインストア」(画像)を開設したほか、4月中旬に「エポカ」専用の通販サイトを立ち上げたところだ。

 ブランド別の通販サイトは各ブランドの特徴や会員属性などに合わせて独自に進化させる考えだが、その開発を子会社のルビーが手がけられるのも強みとなる。

 ルビーのスタッフは昨年4月の買収時の65人程度から現在は100人規模まで増員。事務所も三陽商会のEC部隊の拠点となる外苑オフィス(新宿区)に移し、連携をとりやすくした。

 ルビーとの役割分担については、足もとでは柔軟性を持たせているが、メルマガ配信やサイト更新などのECオペレーション業務はルビーを中心に行い、三陽商会のスタッフはディレクション業務として加わるイメージで、空いたリソースを会社全体のデジタル戦略推進に充て、業務提携したニューラルポケット(旧ファッションポケット)およびABEJA(アベジャ)と取り組んでいる、AI活用によるMD精度の向上や店舗運営改善などのスピードを上げていく。

 三陽商会では、今期のEC売上高は前期の53億1700万円に対し、約13%増となる60億円を計画。新客開拓に向けては会員向けサービスの向上や会員サイトおよびアプリの改修などデジタルで提供できるサービス水準を高める。また、売り上げを積み上げる施策を行うのと同時に、次の成長ステージに向けてCRM基盤の構築を進める考え。

 サービス面については、「実店舗と同じにすることがゴールではない」(安藤裕樹デジタル戦略本部デジタルマーケティング部長兼EC運営部長)とし、営業時間の縛りがないECならではの問い合わせ対応の充実などにも取り組む方針で、「ECが店舗よりも良いサービスを提供できれば、今度は店舗がECに近づくように努力し、両チャネルでサービスを磨いていける関係を作りたい」(同)としている。 

 なお、ECと店舗の連携面では、EC欠品時に店頭在庫を引き当てて販売する「お取り寄せ購入」サービスを実施しており、一定の割合でEC売り上げに貢献している。一方、EC上では各商品の詳細ページで店頭在庫を確認できるようにしており、そのまま対象店舗に商品を取り置いて試着予約できる「お取り置き」サービスも展開しているが、今後は店頭欠品時にEC在庫を客注サービス用に活用し、顧客の自宅に直送するサービスの構築も計画する。 (おわり)

 

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