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2019.04.25
アマゾンが意図不明なリベート要求、“強者の論理”押しつけか、「ポイント原資負担」との見方も
アマゾンジャパンが2月、商品の仕入れ先となるメーカー・卸事業者にリベートを要求していたことが分かった。アマゾンをめぐっては、公正取引委員会の調査を受け、ポイントの原資負担を撤回したばかり。ただ、以降も、直販事業のポイントは充実する意向を示しており、「名目を変えた原資負担では」(取引先事業者)との見方もある。公取委が4月に公表した巨大IT企業の実態調査では、多くの企業が規約や利用料の「一方的な変更」に不満を抱えていることが明らかにもなっただけに、公取委の対応が注目される。
利用料、7~9割が「一方的に決定」
政府は今年2月、巨大プラットフォーマーの競争環境整備に向け、経済産業省、公取委、総務省の三省合同の検討会を設置。6月をめどに、独占禁止法改正を含む検討を始めた。
直販事業で取引のあるメーカーや卸事業者に通知が届いたのは、その最中の2月中旬。メーカー、卸事業者用の管理システム「ベンダーセントラル」を通じて要請された。通知時期は、アマゾンが「マーケットプレイス」の出品者に、独自のポイント「Amazonポイント」の原資負担を要請し始めた時期とも重なる。
4月17日、公取委が公表したモール運営事業者の実態調査(中間報告)では、アマゾンを含む3モールの取引先企業の約5~9割が「規約を一方的に変更された」などと不満を抱えていたことが明らかになった。
利用料をめぐっては、約7~9割が「一方的に決定された」と回答。ポイント還元や販売セールにおける原資負担など、不必要・不合理と感じるサービスの利用料、根拠がないと感じる金銭の要求も、アマゾンについては38%が「要求されたことがある」と答えていた。
システム利用料など値上げ
要請は、支払サイトの変更に伴う「リベート」と、利便性や売り上げ向上を目的に行ったシステム利用に対する応分の負担を求める名目で行われている。
「ホーム(雑貨)」カテゴリの商品を扱うある事業者は、これまで請求書が発行された月の末日から60日後だった支払サイトを65日にするとの通知を受けた。これまで通り、「60日」を維持する場合は仕入総額の1%、「30日」に短縮する場合は同2%をリベートとして要求。ただ、サイト変更が必要な明確な理由は示されていない。システム利用料も、当初、仕入総額の5%だった契約を10%に引き上げることが通知されている。同様の要請は、「トイ(おもちゃ)」カテゴリの商品を扱う事業者のもとにも寄せられており、この事業者の場合、2月中旬から現在に至るまで3回催促を受けたという。
「スポーツ」カテゴリの商品を扱う別の事業者の場合、契約時の支払サイトが65日であったため、現状維持に対するリベートは発生していない。ただ、「60日」にする場合は同1%、「30日」は同2%のリベートが発生。契約時、0%だったシステム利用料は、1・6%に引き上げるとの通知を受けた。同様に「ビューティ」カテゴリの事業者は、0%だったシステム利用料を3・1%にすることを求められている。
「ヘルス(健康関連)」など別カテゴリの商品を扱う事業者や、同じ商品カテゴリでも通知が来ていない事業者もおり、リベートを求められたのは一部事業者とみられる。
「納得できる理由説明がない」
「アマゾンに問い合わせたが”分かりました”と言うのみ。何か管理画面を操作しなくてよいのかと聞いても”結構です”と。ただ、回答期限の3月末を越えても通知は管理画面から消えない。適用期間は今年6月からと告知されており不安」―。通知が来た「ホーム」関連の商品を扱う事業者はこう話す。
事業者の不満は、当初からの契約変更に納得のいく説明が得られていないことにある。「要請された企業と、そうでない企業の判断基準が分からず納得できない」(前出の事業者)。
別の事業者は、「『マーケットプレイス』出品者にポイント1%の原資負担で騒いでいるが、こちらは6、7%。アマゾンは他のモール等と比べてもポイント施策は後手に回っている。名目は異なるが、直販事業のポイント制度充実の原資にするのではないか。承諾しなければ商品の扱いで従前と異なる扱いを受けるかもしれない」(「トイ」商品を扱う事業者)との見方を示す事業者もいる。「マーケットプレイス」の出品者に対するポイント原資の負担は、公取委の調査の影響を受けて撤回したものの、現状は一部にとどまる直販商品へのポイント付与は、拡大する方針を維持しているためだ。
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公取委が4月に公表したモール運営事業者の取引実態調査では、大手3モール(アマゾン、ヤフー、楽天)の規約変更に「不利益な内容があった」とする回答が約4~9割。変更前の事前の説明は5割前後があったと回答したが、説明に「納得できない」とする回答は約3~9割に上っている。
利用料の値上げ要求に関する根拠の説明も5割前後で行われていたが、説明に「納得できない」とする回答は約5~9割。一方で、そうした不合理な値上げ要求に「従わなかった」とする事業者はわずか数%。9割前後の取引先が「従わなかったことはなかった」と回答している。
規約や利用料の一方的な変更は、楽天が上回る。一方、アマゾンが突出していたのは、利用料の変更に従わなかった場合のモール側の具体的対応。事業者の回答によるものだが、「出品の停止・削除」「アカウントの停止・削除」「同意なく一方的に利用料等を徴収」「商品の表示位置や表示方法等で不利な扱いを受けた」などの項目で他のモールを上回っていた。
公取委はポイントの原資負担をめぐる調査に「(「マーケットプレイス」出品者に対する要請については)懸念がなく継続しない旨を公表したが、それ以外の調査の個別内容は従前から回答していない」とした。
アマゾンに、支払サイトやサービス料の変更理由などを尋ねたが、「契約の詳細はコメントを差し控えさせていただく」とのみ回答があった。