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2018.01.18

KDDIの「ワウマ」 〝三太郎の日〟効果で認知拡大、値下げ奏功し店舗数は倍増

 KDDIがDeNAとモバオクから「DeNAショッピング」「auショッピングモール」事業を買収し、仮想モール「Wowma!(ワウマ)」として2017年1月に再スタートを切ってから1年が経過した。3月には料金プランの大幅な値下げを公表し、出店者取り込みに本腰を入れた。さらには、携帯電話キャリアならではの集客策も展開した。ワウマはネット販売企業にとって新たな選択肢となったのか。この1年の取り組みを探る。
 
 ワウマを運営する、KDDI子会社・KDDIコマースフォワード(KCF)の八津川博史社長は「ひたすら仕掛ける1年だった」と振り返る。昨年3月に開催した店舗向けイベントにおいて、利用料金の大幅値下げを目玉とする新施策を発表。「新機能の追加など、その時に実装予定として公表したものはすべてやりきることができた」と成果を強調する。
 
 17年のワウマにとって、もっとも大きなニュースは新料金プランの開始だろう。「コミコミ出店プラン」と「シンプル出店プラン」の2プランを新たに用意。コミコミ出店プランは成約手数料(決済手数料込み)が4・5%~9・0%、シンプル出店プランは成約手数料率が2・0%~6・5%で、決済は出店店舗による個別契約が必要となる。成約手数料率は、商品ジャンルや売上高によって変わる仕組みで、従来プランの決済手数料込みの成約手数料率(以前の「アドバンストプラン」は9%、「ライトプラン」は10%)から事実上、値下げした。入会金・月会費に関しては、両プランともに、従来の2プランから大幅に値下げしている。さらに、昨年3月15日から行っている、入会金・月会費を無料とするキャンペーンについては、今年3月31日まで継続中だ。
 
 新プランの申し込みを開始した昨年6月以降、月平均1000店ペースで店舗数が拡大している。DeNAから引き継いだ当初の出店店舗数は約3000店だったが、現在は倍増となる約6000店に。八津川社長は「『コミコミ出店プラン』を発表してから、ネット販売企業の間でも認知度が向上したのではないか」と分析する。新規店舗に関しても幅広いジャンルからの出店が進んでいる。「これまでスポーツ用品やインテリア関連はやや弱かったが、そこも埋まってきている。ユーザーが検索して『欲しい商品がない』とがっかりすることがかなり減ったのではないか。今後もMDの質・量強化を図りたい」(八津川社長)。

 集客に関しても、昨年11月頃から急成長している。KDDIでは、毎月3・13・23日に、無料会員制プログラム「auスター」会員に特典をプレゼントする「三太郎の日」を展開。特典は月替わりで、昨年11月はワウマが対象だった。中でも、優待サービス「auスマートパスプレミアム(スマパスプレミアム)」(月額税別499円)会員向けには、先着利用3万枚限定で、2000円以上の購入で使える1000円のクーポンをプレゼントした。11月3日のクーポン利用が好調に推移したことから、13日は5万枚、23日は7万枚を配布。「回を追うごとにユーザーに来てもらえるようになった」(八津川社長)という。
 
 11月の三太郎の日を契機に、スマパスプレミアムユーザーへのワウマの認知が急拡大している。同社では昨年4月から、スマパスプレミアムの土曜日特典として、ワウマの1000円クーポンを配布している(利用条件となる購入額や配布枚数は月によって変動)。11月以降は土曜日特典のクーポンを利用するユーザーが急増。さらに、11月24日からはワウマのテレビCMを放映したことも重なり、12月の土曜日はクーポンの配布開始時間にユーザーが殺到、サイトにつながりにくくなる事態となった。クーポンの配布枚数も短時間で上限に達するようになったことから、現在は先着順ではなく、抽選での獲得となっている。

 11月24日~12月10日までテレビCMの放映を実施した。au色をなくし、スマートフォンアプリを訴求した。「アップストア」では一時ランキング5位に浮上するなど、アプリの認知と利用が進んでいる。クリエイティブについては、20~30代向けと30~40代向けを試したが、20~30代向けのCMで30~40代が動いたという。キャラクターには有名インスタグラマーを起用。「単にCMで認知度を高めるだけではなく、インスタグラマーには数十万人のフォロワーがいる。CMとの相乗効果を狙ったわけだが、ネットの有名人が電波に乗っているということで、ツイッターなどでは『新鮮』と感じる人が多かったようだ」(八津川社長)。
 
 機能面の強化も進めた。まず、9月にアプリを刷新。これまでのウェブビューを利用したものから、ネイティブアプリとして作り直したことで、表示スピードを大幅に改善、さらには検索機能やプッシュ通知も改善している。
 
 店舗向けには、11月に管理ツールを刷新した。商品・在庫・受注・決済に関わる各種APIを完備することで店舗の自社システムとの連携が容易になった。また、受注データをCSV形式で一括更新可能な「受注データCSVアップロード」を導入。受注ステータスに連動して、自動で売上請求が可能になったほか、全商品に適用する支払い方法を一括で設定可能とした。また、受注データのCSVフォーマットを任意に店舗で設定できるようにしている。
 
 八津川社長は「今まではAPIを利用したツールによる自動連携ができなかったため、出品にかなりの手間がかかっていた。そのため、他の仮想モールに出店しているネット販売企業にも、ようやく普通に使ってもらえるモールになったのではないか。商品数の増加にも寄与している」と話す。
 同じく11月には、出店店舗が広告を掲載するまでの作業時間を短縮し、広告効果を管理画面から確認できる新たな検索広告メニューの提供を開始。ワウマの検索結果ページのPR枠に商品そのものを掲載するため、入稿作業が不要なほか、すでに審査を通過している商品のため、改めての広告審査もいらない。売り時を逃さず即出稿できるのがメリットで、想定以上に利用のペースが拡大しているという。
 さまざまな取り組みを進めてきた17年のワウマ。八津川社長は「機能面で他の仮想モールに完全に追いついたとまではいえないが、基本的な部分についてはようやく肩を並べたと思っている。ただ、追いつくだけでは面白くないので、少しでも当社らしく、売り手の方々にも『ワウ!』な期待感を持っていただけるようにしたい」と強調する。
 
 昨年3月には、2019年度の流通額を1500億円とする目標を公表した。今後のさらなる成長に向けて、八津川社長は「店舗が使いこなしたくなる武器をどれだけ渡せるかが重要だ。販促はもちろん、運営の効率化、さらにはデータ的な面も強化していきたい」と語る。KDDIの保有するデータマネジメントプラットフォーム(DMP)との接続も進んでおり、「ユーザーの体験価値を高めていきたい」(八津川社長)。
 
 新サービスとしては、1月25日に新たなポイントサービス「Wow! スーパーポイント」を導入する。現在は、auユーザー向けに一律で「WALLETポイント」を付与しているが、今後は店舗から付与するポイントについては新ポイントに切り替える。また、キャンペーン時にモールが付与するポイントに関しては、Wow! スーパーポイントが付与されるキャンペーンもあれば、WALLETポイントが付与されるキャンペーンもあるという。現在はauユーザー以外の顧客には、「Wowmaポイント」を付与しているが、今後はWALLETポイントと新設するWow! スーパーポイントに集約していく予定だ。
 
 WALLETポイントは、プリペイドカードへのチャージが可能で実店舗でも使えるため、auユーザーにとっては非常に利便性の高いポイントだ。制度変更はauユーザーの流入・定着に影響する恐れもあるが、Wow! スーパーポイントの料率を高めることでユーザーへのメリットを打ち出す。店舗にとっては、仮想モールへの還流性が高いポイント制度となり、販促効果が高くなる点がメリットとなる。
 
 毎週配布するクーポンやポイント増量などでユーザーが増えてきたワウマ。とはいえ、流通額では競合モールにまだまだ引き離されているだけに、さらなる新規ユーザー獲得とともに、ユーザーの定着が課題となる。八津川社長は「今年は飛躍につなげる年にしたい。集客面では、KDDIグループの経営資源をまだまだ使い切れていないので、やらなければいけないことはたくさんある。ものづくりの基盤ができあがってきたので、店舗からの期待に応えたい」と意気込む。

「18年は店舗と飛躍する年に」
 
〝ものづくり〟のレベルが向上
 
【KCFの八津川博史社長に聞く】
 
 KCFの八津川博史社長にこれまでの取り組みや今後の戦略を聞いた。

――この1年を振り返って。

 

 「やはり料金プランの変更が大きかった。収益は度外視したプランだが、共存共栄、つまり『お店と一緒にワウマを作っていきましょう、一緒に栄えていきましょう』という部分について本気度が示せたのではないか。また、集客面では11月の『三太郎の日』の月替わり特典がワウマのクーポンで、回を追うごとにユーザーに来てもらえるようになった。auのスマートパスプレミアムユーザーへの認知度も大きく上がった」

 

――出店料実質無料化」への反響は。

 

 「発表当初は凄かったが、現在はそれを前提として企業は出店している。店舗がワウマに求める水準も高まっており、当社でもコンサルティングチームを拡充している」

 

 ――昨年8月には「Wowma!」と、「Wowma! for au」を統合し、ワウマに一本化した。

 

 「店舗からすると、一本化はマーケティングの観点や効率化という側面から評価いただけていると思う。また、アプリも作り直した。サクサク動いているし、操作感が良くなった。専属チームがあるので、今までに比べてアプリ改善の質とスピードも引き上がっている。ものづくりに関して、店舗とキャッチボールしながらレベルを上げていくと昨年3月のフォーラムで約束したが、アプリについてはその素地が作れたと思う」

 

 ――新規ユーザーが増えたとのことだが、どんな層が多いのか。

 

 「伸び率でいえばauユーザーの伸び率が高い。auユーザーの中心層は30~40代女性なので、その部分が特に伸びている」

 

 ――スマパスプレミアムの土曜日特典として1000円クーポンを配布してきた。成果は。

 

 「ワウマはゼロから立ち上げたブランドだが、『auユーザーがお得に使える買い物の場』という認知は確実に高まっている。ビッグローブやUQモバイル、母親向けアプリ『ママリ』など、au以外のKDDIグループサービスについても『コマースといえばワウマ』という認識を浸透させたい」

 

 ――auユーザー以外の取り込みは。

 

 「ワウマはテレビCMも含めてau色がない形でアピールしているし、2つのサービスを一本化したことで、検索からも取り込みやすくなっている。これまでと違う集客構造は作れている。ただ、現状は『auユーザーならさらにお得』という演出をしているのは確かだ。今年はワウマの『ワウ!』な部分、つまり利用価値や購入する価値、買い続ける価値など、サービスとして磨いていきたい」

 

 ――2019年度の流通額目標を1500億円としている。達成に向けた手応えは。

 

 「成長率という観点では、目標の水準には達しており、堅調だ。早期に流通額1000億円を達成したい。会社としてお約束したことができる体制になってきたので、及第点は与えられるのではないか」

 

 ――18年の目標は。

 

 「昨年は『やってみよう』という段階で、それはやりきれたと思う。今年は店舗からの期待に応えて、それを形にしていきたい。店舗とともに飛躍する年にしたい」

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