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2017.10.15
95年生まれが思う日本とアメリカのミレニアル世代の特徴と消費行動
2020年には、ミレニアル世代が世界の労働人口の3分の1以上を占めると言われている。また、一つ下の世代のジェネレーションZを含めると、3分の2以上を占めるという。
日本では団塊の世代や団塊ジュニア世代がミレニアル世代を大きく超える人口を擁しているため、日米で状況が違う。
しかし、世界的に見れば、ミレニアル世代はこれまでで最も人口が多く、企業にとって魅力的な市場である。また、ミレニアル世代の消費行動・思想・価値観が、親世代とは大きく異なることから、ミレニアル世代の特徴・特性について企業によるマーケティング分野では注目を浴びている。
筆者は、1995年生まれであり、ミレニアル世代、ジェネレーションZに該当するだけでなく、小学校〜高校までの12年間全てをゆとり教育で過ごしてきた唯一の世代である。
米シンクタンク「ピュー・リサーチ・センター」のサイトでは、質問に答えるだけで、自身のミレニアル度合いがわかるが、筆者のスコアは100点中99点だった。そんな筆者が属するミレニアル世代の特徴を日米で比較しながら書いていく。
ちなみに1995年生まれと言えば、その多くが就職活動真っ最中にいる大学生である。彼らが社会人の仲間入りをする直前であるまさに今、多くのビジネスパーソンにミレニアル世代について知っておいてもらいたい。
ミレニアル世代、ジェネレーションZとは?
これら2つは混同されることが多く、企業やレポートによって差があるが、定義としてはおおよそ下記を参考にしてほしい。
- ミレニアル世代: 1980年-2004年頃に生まれた人々 – パソコンネイティブ
- ヤングミレニアル 20-24歳
- オールドミレニアル 25-37歳
- ジェネレーションZ: 1995年-2005年以降に生まれた人々 – スマホネイティブ
ミレニアル世代は定義の範囲が広く、誤解を招く可能性があるため、これから語るミレニアル世代とはヤングミレニアルだと認識してもらいたい。
日米のミレニアル世代の特徴
【特徴1】キャリアの将来性について
日本は消極的
日本では、キャリアの将来性について、楽観的・自信があると回答したのは全体の30~40%で、世界的に見て最も悲観的である。これには日本の経済、政治、文化的要因が反映されていると考える。
世界のミレニアル世代が今後1年で自国の経済状況について、「改善する」と45%が回答したのに対し、日本のミレニアル世代は18%が「改善する」と回答した。
また、世界45カ国を対象に起業家精神を調査したレポートでは、日本の起業家精神が最下位となっている。
日本のミレニアル世代では、未だ公務員が人気で、働きたくないという人も多い傾向があると思う。
アメリカは前向き
アメリカのミレニアル世代の70~80%が明日に主な収益源が途絶えても3ヶ月以内に前と同等以上の仕事を見つけられると確信しており、現在も将来も、キャリアに不安を感じておらず、楽観視している傾向がある。
人種のバリエーションが多く、親世代のリーマンショックなどの経済的困難を目の当たりにしているが、表現好きで前向きな人が多い。
また、アメリカ全土で200万ドル以上の資産を持つ人口の14.7%をミレニアル世代が占めている。この多くはスタートアップへの投資や起業で達成しているケースであり、起業家精神を持っている。
サンフランシスコでは、多くのイベントが毎日開催されており、若者が登壇者に質問をしている姿を見るが、後で聞いてみると学生だったということが多い。アメリカでは、在学中から起業を意識し、そのために就職を考えているというケースも少なくない。
【特徴2】今後伸ばしたい能力
日本は個人主義
日本のミレニアル世代が今後伸ばしたい能力の84%が個人のスキルであり、管理能力やリーダーシップスキルは16%と個人スキルに比べて重視しない傾向がある。
チームワークがプラスに働くこと、重要性に関しては理解しているが、チームワークがすべての人にとってプラスであるという見方については懐疑的であると考える。また、個人のスキルがあれば、フリーランスでも、どの会社でも働けるというワークスタイルを重視する傾向もあると考える。
アメリカはチームワークを重視する
アメリカのミレニアル世代は今後伸ばしたい能力の61%が個人のスキルであり、管理能力やリーダーシップスキルは39%であった。
グローバル平均や日本と比べ、彼らは個人としてではなく、チームとして働くことを好む傾向があると言える。マルチタスクが可能で、より多くのチームで働くために、仕事の仕方に効率性などの変化をもたらすことが価値とされているのだ。
そのような傾向から、日本と違い、収入や安定性、休暇以外にアメリカの多くのミレニアル世代は、優秀な人材がいる職場を重視する傾向にある。
【特徴3】ソーシャルメディア
ソーシャルメディアによる個人情報流出などの懸念は上の世代と比べて少なく、現実を拡張するものとして、ほとんどのミレニアル世代がソーシャルメディアを利用する。
ミレニアル世代はソーシャルメディアに憑り付かれていると言われてきたが、ヤングミレニアル、ジェネレーションZはそうではないといえる。Facebookは、情報ハブとして機能し、ニュースサイトのような使われ方をしている傾向がある。Twitterでは友人や他者と繋がり、現実の人間関係を拡張するような使われ方をしている。
また、従来のメールなどは使われておらず、LINEなど、ソーシャルメディア上でのテキストメッセージが主流となっている。
ヤングミレニアルにとって、ソーシャルメディアは自由参加型のルールのない世界ではなく、情報を受け取ったりメッセージを適切に伝えたりするための一定の規則体型と決まりごとが存在している。ニュースを見る、電話・メールをするなど従来の行動をソーシャルメディア上という形で代替しているのである。
日本では20代のスマートフォンの利用率は90%を超え、その中でソーシャルメディアの利用率は90%を超える。
また、アメリカも日本と同様の利用率であり、ヤングミレニアルの32%がトイレやお風呂でもソーシャルメディアを利用する。また、オールドミレニアルの51%が職場でソーシャルメディアを利用している。
【特徴4】テクノロジーからの学び
アメリカの成人2264人を対象とした調査によると、ミレニアル世代の回答者のうち69%が、人間よりもテクノロジーから学びがあると回答している。
彼らは何か疑問があったときに、人に聞くよりも「ググる、検索する」という傾向がある。彼らは節約志向が強いため、お金だけでなく時間も節約傾向にあり、人に聞くという行為で相手の時間を奪うことに抵抗があると考えるのである。また、単純な疑問や問題などは検索する方が早いという利点もある。そのため、聞く前に検索するという行動が生まれていると考えられる。
この傾向は日本でも同様に見られる。
【特徴5】会社への帰属意識
日本では会社への帰属意識は低い
職場との関係性に関する調査では、世界のミレニアル世代が「現在の会社に5年以上勤務する」と回答した割合が前年度と比較し、+4%となったのに対し、日本は-1%となっている。また、「最大2年間勤務する」という回答では世界のミレニアル世代が-6%に対し、日本は+2%となっている。
日本のミレニアル世代は転職を意識するのが早く、様々な会社で経験・スキルを得ようとする傾向がある。
アメリカでは帰属意識が高い
「現在の会社からすぐに去る」と回答した割合が前年度と比較し、-3%となっている。また、「最大2年間勤務する」という回答の割合が減り、「現在の会社に5年以上勤務する」という回答の割合が増えている。
アメリカ、特にサンフランシスコでは、福利厚生が充実し、なおかつリモートワークなどワークスタイルに柔軟性のある会社が多いため、個人やフリーランスとして働くよりも企業に属する方が良いと考える傾向があるのだろう。
【特徴6】お金の使い方
日本、アメリカを含め、ミレニアル世代は基本的にモノを買うということが少ないと考える。また、高級ブランドの商品よりも、本質的に良いもの、コストパフォーマンスが良いものを好む傾向がある。
その他に、家や自転車、車、本、音楽など所有するのではなく、借りる・シェアすることが多い。
ミレニアル世代の消費の対象は、目に見えない体験や健康、能力やスキルの向上を助けるものなどであり、体験に価値を見出している傾向がある。
都会でシンプルライフを送る
日本、アメリカ同様に多くの若者が都会に住み、出費を抑え、シンプルな生活を送る傾向がある。特にサンフランシスコでは、郊外で一人暮らしをするよりも、サンフランシスコ市内でルームシェアをしていることが多い。
アメリカのミレニアル世代の2/3は賃貸に住んでおり、頻繁に引っ越しを繰り返すケースが多く、その中の半数がより小さい家への引っ越しを予定している。
筆者は日本、アメリカだけでなく東南アジアでもルームシェアをしていた経験があるが、ルームメイトのほとんどがミレニアル世代であり、多様性を好み、国際色が強かった傾向がある。
アメリカの若者はユニークな製品を好む
彼らはEコマースやアプリなどの割引コードなどをうまく利用し、お得な買い物を行う。また、ハンドメイドや地域限定商品などユニークな製品が好まれている。
また彼らは、世の中にインパクトを与えるような社会的な活動をしているブランドを優先する傾向がある。
まとめ
上記のように日米のミレニアル世代の特徴を比較してみると、テクノロジーとの関わり方については共通しているものの、自分の生活や人生に影響する考え方の部分で大きく異なっている。最後に挙げた「節約志向」という共通する特徴に関しても、その背景が異なり、日本のミレニアル世代は将来に対してネガティブであるがゆえの消費も節約志向にであるのに対し、アメリカのミレニアル世代は将来に対してポジティブであるがゆえに、将来に向けての投資、たとえば学生ローンの増加や、起業資金などのために節約志向にあると考えられる。
しかし、共通するのはどちらも消費に対して消極的なわけではなく、消費・体験にどのような価値があるのかを慎重に考えて行動しているという点だ。今後社会において存在感を増すミレニアル世代については引き続き注目していきたい。
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