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2017.10.23

IoT技術がサンフランシスコの環境問題を解決する

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テクノロジー都市として有名なサンフランシスコ。実は環境問題にも敏感な都市として世界的に知られている。2003年には「2020年までに埋め立てゴミを無くし、100%をリサイクルし堆肥化する」という「ゼロ・ウェイスト」目標を設定し、着々とその計画を進めてきた。

同市はこれまで、

  • 2006 - 発泡スチロール・ポリエチレンフォームの使用禁止
  • 2007 - 建設廃棄物のリサイクルを要求
  • 2009 - ドラッグストア、スーパーマーケットでのビニール袋の禁止
  • 2014 -  21オンス(621ml)以下の水のペットボトルの販売を禁止

するなど、政治的・経済的・教育的プログラムを実施し、廃棄物の80%を埋め立て地から転用することに成功している。

しかし、サンフランシスコはその目標達成に対し最後の難題に直面している。彼らが抱える問題とそれを解決するためにIoTを利用した取り組みを見ていく。

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現在の廃棄物サイクル

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現在サンフランシスコ市はリサイクル、堆肥化、埋め立てなどのゴミ収集を民間のRecology社とパートナーシップを組み、全てを担っている。

サイクルは主に以下の3つ

  • 青色のゴミ箱 - リサイクル
  • 黒色のゴミ箱 - 埋め立て
  • 緑色のゴミ箱 - 堆肥化

であり、ゴミを燃やす工場がなく、その他粗大ごみの回収に関してもRecology社が担当している。

2016年には、リサイクル施設の改善、新たなソート技術の導入に1160万ドル(約13億円)を費やし、1日あたり170トンのゴミを処理している。「ゼロ・ウェイスト」に向けて、市の動きはさらに強まっている。

廃棄物ゼロ意識の障壁

このような市の取り組みがあるにもかかわらず、肝心の埋め立てゴミは期待されていたほど減少していない。その背景には、サンフランシスコ市民が毎年約60万トンの廃棄物を埋め立て地に送り続けている問題があるのだ。そのため、2020年までに目標を達成するには当初の予想よりも困難とされている。

この数値をゼロに近づけるためには、消費者の意識を変える必要があり、そのためには教育と普及活動が重要であると考えられる。実際に消費者の行動研究では、居住者の行動が彼らの持っている知識レベルによって影響を受けることがわかっている。つまり、市民が廃棄物の発生と環境への影響の関係を理解することが重要になりそうだ。

残念なことに、アメリカ国内の消費者は、個人的にどれくらい廃棄物を排出して、そのうちどのくらいがリサイクル・堆肥として消費されているのか十分に理解していないようだ。Johns Hopkins Center for a Livable Futureによる研究では、アメリカ全土で消費者の食品廃棄物に対する意識について調査結果が出ている。それによると、食品廃棄物が重要な問題であると回答した割合が45%購入した商品を少量しか廃棄していないと回答した割合は56%であった。しかし、実際には米国全体で40%の食料が浪費されているため、回答者の認識と現実の間に明確なギャップがあることが示されている。

このような事実から、サンフランシスコでは新しい技術を駆使して市民の意識を高め、教育的普及活動を行う戦略を並行して進める必要がある。IoTが持つデータ測定や分析技術は、上で挙げた消費者の認識と行動のギャップを埋め、彼らの意識を高めるために役立つと考えられる。

IoT : ゴミ箱のインターネット

実際にサンフランシスコ市民や民間企業の意識と実際の廃棄物量の隙間を埋めるために、まずは具体的なデータを彼らに明示する必要がある。リサイクルと堆肥化の割合と廃棄物の発生量を測定することで、市民や企業は捻出する廃棄物量をより深く理解し、行動の改善に繋げることができるからだ。

これによって、市民は食料品の買い物を最適化し、廃棄物の発生を減らしてお金を節約することが可能になる。一方、企業はデータ分析を活用してリサイクルと堆肥化を改善し、ゴミの回収コストを削減することができる。

このデータを記録して分析するために、IoTセンサーが必要になる。すでに、市内のゴミ箱にはセンサーが装備されており、この技術はサンフランシスコのスタートアップであるCompologyによって開発されている。

Compologyのセンサーは、1日に複数回ゴミ箱の内部を高解像度で撮影し、クラウドに送信する。これによって、運搬業者がゴミ箱の容量を監視し、トラックのルートやスケジュールを最適化して、必要に応じてゴミ収集が可能になる。この画像ベースの技術は、ゴミ箱内のリサイクル不可能なゴミの割合を見積もることによって、ゴミ箱内を分析することにも使用できる。

これらの技術は、レストランなどにも適用でき、食品廃棄物削減に効果があると期待されている食べ物の種類を分析して分類することで、レストランは在庫を管理し、コストを削減することが可能だ。例えば、朝食ビュッフェを提供するホテルでは、フルーツサラダがどれくらい食べられており、どれくらい無駄になっているかを見積もることができ、フルーツの購入量を減らすことができる。

実際に、サンフランシスコを拠点とするスタートアップMintsscrapsはこの技術を開発しており、レストランの廃棄物を計量して分類するソフトウェアを提供している。IoTを通じた意識改革は消費側と供給側の両方の役に立っている。

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まとめ

サンフランシスコ市のテクノロジーを駆使した取り組みはすでに多方面に渡り、最後の廃棄物20%の埋め立て地からの転用に向けて山場を迎えている。このような廃棄物問題はサンフランシスコだけでなく、他のほとんどの都市でも解決されなければならない問題だ。埋め立てゴミを減らすには行政や市の一方的な努力だけでなく、消費者や企業の意識を変えることも必要である。上記のIoT技術は、廃棄物問題を解決する一つの手段として、世界中で消費者や企業の行動を促すのに役立つだろう。

これからもサンフランシスコとその他都市でのIoT活用方法に注目していきたい。

こちらの記事はNissho Electronic USA様のブログより転載いたしました。

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