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2018.10.20

【2019春夏東京ファッションウィーク ハイライト5】発信かビジネスか――問われる東京ファッションウィークの立ち位置

 後半戦に入ったアマゾン ファッション ウィーク東京2019春夏コレクション。今シーズンも「Amazon Fashion “AT TOKYO”」が話題と人気の中心となっている。公式スケジュールではハイク(HYKE)、ミントデザインズ(mintdesigns)、マトフ(matohu)などの中堅が国内をリードし、大御所とベテランが現実のビジネスを支えるという状況が続いている。

 国の支援を受けてスタートした当時から10年以上、新人のインキュベーションを目指してきた東京。だが、ショーがビジネスに結びつかず、求められるものも見る側もインフルエンサーやストリート、若者向けがほとんどであるため、実力を付けた中堅が海外や展示会にシフトし、若手がわずか数回でショーを休止するという状況も変わっていない。

 イタリアンヴォーグの副編集長は「東京には注目しているし、遠いからと言うのは理由にならない。だが、数回来ているが劇的な変化が感じられない。また、新しい才能を見つけることが役割のジャーナリストにとっては時期が遅すぎるということはないが、バイヤーにとっては遅い。発信とビジネスを分けて考えた方がいいかもしれない」と話すが、会いに行けるアイドルグループのようにデザイナーからモデルやアイドルまでが参加し、誰もが見られるファッションウィークを目指すのか、本当にパリ、ミラノ、ニューヨークに続くことを目指すのか。

 当面はダブルスタンダードであると思われるが、スポンサー問題も話題になる中で、今後の動きも注目されそうだ。そうした流れの中でデザインもアバンギャルドから等身大の日常着まで、様々なデザインがそろっている。

ハイク(HYKE)

 「ハイク」は、「ミリタリークロージング」からインスパイアされたコレクションを更に発展させ、バリエーションを広げた。プレゼンテーションから本格的なコレクションに変わった今回。アメリカ海軍からフライトジャケット、40年代のモーターサイクルパンツまで、まるでメンズコレクションや雑誌のように歴史や古着などの素材やディテールから発想し、再構築するという方法を続けながら、色や素材が増え、選択肢が広がっている。カーキのミリタリーをボレロにしたデザインやヘビ柄と透ける素材やプリーツ、ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)とのコラボレーションなど基本は変わらない。だが、会場が大きくなったことに対応したのか、デザインバリエーションが広がり、赤などの色も新しさを強調しているように見えた。

「ハイク」2019春夏コレクション

アンリアレイジ(ANREALAGE)

 Amazon Fashion “AT TOKYO”としてコレクションを発表した「アンリアレイジ」。今回はパリコレクションで発表した透明から黒に変化するデザインや溶けていくようなジャケットなど2019春夏コレクションやその後追加したデザインからスタート。

 今回のためにデザインしたという、アマゾンの段ボールから着想したトレンチコートや15周年を記念して過去の素材をパッチワークしたデザイン、パルコの展覧会をショーとして再現したもの、更にデビューから各シーズンの代表作まで100体を発表した。
 
 パッチワークや「ミントデザインズ」と合同ショーを開催した時に発表したボディをかたどった服、東京タワーをモチーフにしたものなど見た者にとっては懐かしく、若者にとっては新しいデザインが続く。「アンリアレイジ」の過去、現在、未来。あるいは展覧会や書籍をライブで再現したようなコレクション。
 
「アンリアレイジ」2019春夏コレクション

ミントデザインズ(mintdesigns)

 「ミントデザインズ」のテーマはナチュラル ヒストリー プロジェクト。自然史博物館にある、はく製や標本、古い博物画からインスピレーションを得て、人間から見た自然界を表現した。 ステージに置かれた、博物館にあるはく製や標本の額縁を表現したという、黒いフレームで形どられた幾つかの立方体。そこに天然素材や植物、動物のモチーフ、アフリカをイメージさせるもの、昆虫のレースなど、自然や原始的なエネルギーを感じさせるものと透ける素材や光る素材など未来的なムードを組み合わせ、重ね合わせたメタリックナチュラル、あるいはフューチャーナチュラルとでも呼べそうなデザインが次々と現れる。

 服に書かれた「Fig」という文字は古い博物画で見られる動植物に付けられるナンバリングを意味しているという。色もナチュラルな生成りからゴールドやシルバー、自然をイメージさせるグリーンやイエローなどを使っている。アーバントライブというトレンド用語に収まらない、トレンドをしっかりと押さえながら、らしさも十分に感じられる、バランスのとれたコレクション。

ヴィヴィアンノ スー(VIVIANO SUE)

 「ヴィヴィアンノ スー」は雨からインスピレーションを受けたコレクション。ビッグシルエットのジャケットやパンツ、コート、デニムなどを解体し、再構築したデザインや、今シーズンのトレンドの1つであるアシンメトリーなデザイン、袖をボタンやひもでつないだジャケットなどが続く。そして、プレタポルテコレクションに参加していた当時のヴィクター&ロルフを思い出させる、ビッグでクチュール的なドレス。PVCのシューズも雨を強調している。

 80年代のアバンギャルドからパリコレクションで見られたスペクタクルなデザインと共通するものまで、様々なデザインを使い、樹木に雨がしたたり、土が崩れ、そこから石が覗(のぞ)くようすなど、自然や原始的な力強さを表現した。東京で広がるリアルな日常着とは対照的な、ファッションが夢だった頃を思い出させるデザインだ。

 

ミューラル(MURRAL)

 「ミューラル」は新しいイメージに挑戦。ムードが変わり、新しさを強調したコレクションを見せた。ゴールドやPVCなど、透明感や光沢感のある未来的なムードや、アシメトリーなデザイン、レイヤード。ハイテクと手作り的な要素が共存し、新しさを強調しながら、ミューラルらしさも残している。村松祐輔と関口愛弓は「今までのミューラル残しながら新しさを追求した」と話した。

「ミューラル」2019春夏コレクション

文・取材:樋口真一
撮影:土屋航(HYKE、ANREALAGE、MURRAL)、樋口真一(VIVIANO SUE、mintdesigns)

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