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2016.12.16
三陽商会 岩田常務が新社長就任へ 待ったなしの構造改革に「責任の重さひしひし感じる」
社長に就任する岩田功取締役常務執行委員。左は杉浦昌彦社長
三陽商会(東京、杉浦昌彦社長)はきょう16日、2017年1月1日付で現社長の杉浦昌彦社長が取締役に退き、岩田功取締役常務執行委員が新社長に就任するトップ人事を発表した。同日開催の取締役会で決定した。バーバリー事業終了後の赤字拡大に伴い、人員削減やブランド撤退などのリストラを断行してきた同社。来年2月には新経営計画を発表し、待ったなしの構造改革・事業拡大が求められるなか、岩田氏は難しい舵取りを任されたことになる。
岩田氏は、来年1月1日付で、現在の取締役兼常務執行役員経営統轄本部長から、代表取締役社長兼社長執行役員に就任する。きょう12月16日には、同社が進める改革プロジェクト「サンヨー・イノベーション・プロジェクト(SANYO INNOVATION PROJECT)」の経営改革委員会委員長を杉浦氏から引き継いだ。杉浦社長は、岩田氏の人事について、「改革プロジェクトの重責を担ってきた岩田常務が次期社長に適任であると本日の取締役会で判断した」と語った。
同社は2014年に発表した「中期5カ年経営計画」で2017年度の黒字化、2018年度の売上高1,300億円などを掲げていたが、バーバリーの後継ブランドとして立ち上げた「マッキントッシュ ロンドン」「ブルー/ブラックレーベル・クレストブリッジ」の売り上げ苦戦などを受け、2016年度中間決算(1~6月)発表時に同計画を撤回。「構造改革と新経営計画の目指す方向性」を示した10月28日の記者会見では、改革プロジェクトのもと、既存7ブランドの中止や希望退職者250人の募集、売り場170拠点の削減などを発表。2017年2月に新経営計画を公表する旨も発表した。
新社長に指名された岩田氏は、「創業73年の長い歴史を持つ三陽商会の大役を任され、責任の重さをひしひしと感じている。身の引き締まる思い。今後は社長という立場で、三陽商会の5年後、10年後、そして100年先を見据えた新しい方向性を作り上げ、それを実現するための構造改革や成長戦略、経営体制を含めた新経営計画を来年2月に公表する」と話した。
杉浦社長は、10月28日の記者会見後から自身の退任について考えていたといい、退任の理由について、「本年度は赤字に陥るとともに、構造改革に伴う施策として、人員削減やブランド撤退を含むリストラを断行してきた。これらのリストラに一定の目処がたった」と説明。引責による退任か?という問いに対し、「社長にとって、業績は通信簿。そう受け取っていただいて構わない」と答えた。同氏は、来年3月の定時取締役会で取締役も退く予定だ。
■岩田氏「現場の考えに基づいた改革をするべき」
同社はきょう16日、現在進めている構造改革の進捗状況についても説明した。岩田氏は、「メーカーとして自己満足でものを作るのは簡単。マーケットや生活者の潜在ニーズを汲み取り、商品化する力が欠けていたのではないかと感じている」と指摘。百貨店中心の従来チャネルを見直しており、バーバリー後継ブランドの1つ「ブルー/ブラックレーベル・クレストブリッジ」は今秋冬からファッションビルに期間限定店舗を出店している。また、前年比38%増の伸びを見せているEC事業については、データの一元化や接客ツール導入などによるオムニチャネル施策を進め、「現在の42億円から、100億円~150億円事業に育てる。あらゆる可能性を探り、成長にドライブをかけたい」と意欲を見せた。加えて、MDの見直しやサプライチェーンの最適化により、粗利率も3~5%改善する計画だ。
また、事業拡大に向けた組織体制についても着手しており、マーケティング&コミュニケーション本部を設置し顧客・市場を起点とした取り組みを強めること、組織構造を従来の5階層から3階層に減らし、ユニットを統廃合することで、組織をフラット化し、意思決定をスピードアップさせること、フリーアドレス制度導入や従業員が意見を提案できる「SANYO POST」を設置し、職場環境の改善を図ること、顧客の購買動向に連動させるため、シーズンサイクルに合わせた管理会計期間(3~8月、9~2月)へ変更することなどを発表。2017年1月からは、役員報酬額を追加削減(最大15%から最大30%へ)するという。
構造改革・成長戦略実現に向け、すでに現場の若手リーダーによるワーキンググループは70回開催。岩田氏は、「改革プロジェクトでは、若手リーダーを交え毎日のように意見を戦わせている。少し時間はかかっても、皆が腹落ちしながら、現場の考えに基づいた改革をするべきだと考えている」と語った。
◆岩田 功(いわた・いさお)=1959年3月14日生。1982年早大商学部卒。同年三陽商会入社。紳士服企画などを経て、経営企画職へ。2003年事業統轄本部経営企画室担当部長、2005年経営統轄本部経営企画室長兼コンプライアンス室長に就任。2010年から約5年間、ウェブビジネス推進室長を兼務。2011年執行役員、2015年取締役兼執行役員に就く。2014年4月、取締役兼常務執行役員経営統轄本部長兼人事総務本部長。同年7月から現職。57歳。