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2018.06.22
【パリメンズ2019春夏 ハイライト2】色と光に満ちたショーが続く一方、グラマラスな提案も
仏パリで開催されているパリ・メンズ・ファッションウィーク(以下パリメンズ)。本格的スタートを切った20日夜には、「ラフ シモンズ(RAF SIMONS)」がシーズン2年半ぶりにショーを開催し、話題となった。明けて21日には、「アミ アレクサンドル マテュッシ(ami alexandre mattiussi)」、「イッセイミヤケメン(ISSEY MIYAKE MEN)」、「リックオウエンス(Rick Owens)」、「ルイ ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」らがショーを開催。また、「ロエベ(LOEWE)」や「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」、「ピガール パリ(PIGALLE PARIS)」などがプレゼンテーションやイベントを行った。
ラフ シモンズ(RAF SIMONS)
「ラフ シモンズ」がパリに戻ってきた。パリでショーを行うのは、2016秋冬シーズン以来2年半ぶり。その後、ピッティ・ウォモやニューヨークでショーを行っていたため、パリベースのジャーナリストや「ラフ シモンズ」ファンにとっては待望のショーとなった。
会場は、パリ郊外の工場跡のスペース。その前のアンダーカバーのショー会場から電車で40分、最寄り駅から歩き15分かかる辺鄙な場所だ。それにもかかわらず、溢れんばかりの人々が来場し、人気の高さを改めて証明した。
ショー会場に入ると、中はまさにナイトクラブ。落とした照明、宙に吊るされたヌードダンサーを想起させるマネキン、ランウェイに被りつきで待つ立見客たちが、妖しい夜の雰囲気をかもし出す。
発表されたコレクションも、夜に映える煌びやかなものだ。ファーストルックに現れたシャイニー素材のチェスターコート、ラメを織り込んだビッグニット、肌を露出したネットトップス、ボール状の金具づかい、ネオンを思わせる鮮やかなカラーなどが目に飛び込む。シルエットは、ラフらしい縦長気味のボリューム&フィット。厚底ブーツが、さらにシルエット長くさせている。
チュニック丈トップス、グラフィックプリント、穴開きニットなど、1980年前後のニューウェーブを想起させるアイテムやディテールもパンチが効いていた。首元に巻いたスカーフの端を収納できるコートの背面のスリット、端空き缶を埋め込んだバッグ、インサイドアウトサイド(表裏)のディテールなどで、ラフらしい捻りテクニックも満載。
ジェネラルトレンドのベースに、スポーツやユーティリティーが定着している今、ラフが放ったアンダーグラウンドの夜の服。トレンドにどのような影響を与えるのか、注目したい。
アミ アレクサンドル マテュッシ(ami alexandre mattiussi)
男性のライフシーンに馴染むファッションを提案する「アミ アレクサンドル マテュッシ」。空港のターンテーブル、学校、雪の街角、砂浜、パリの街の屋根…これまでも様々なセットを組んでショーを行ってきたが、今回は麦畑の広がる丘をつくった。この丘の坂道を歩きながらモデルが登場するという牧歌的なムードの中、ショーが進行した。
モデルたちが着用しているアイテムも、カントリーサイドに映えるものばかり。カントリー調のざっくりした織りのニット、デニムジャケット、フィールドコート、バケットハットなど。それらのアイテムを、ルーズフィットで着こなし、今着たい服にアップデートしている。
そして、目をひくのが、そのカラー。春夏コレクションと思わせない、秋冬色が中心。ファーストルックのブラウングラデーション、オープンカラーシャツに使用した黄土色、ラストルックのマスタードなど、秋冬コレクションを見ているかのような錯覚を覚える。実は、この秋冬色は今シーズンのトレンドワードの一つ。レトロトレンドと相まって、2019春夏での広がりに注目したい。
イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)
「イッセイ ミヤケ メン」今シーズンは、シャツをフィーチャーしたコレクションを発表した。仕事でも休日でも、そしてどんな場所でも活躍するシャツを軸に、大人の男性のカジュアルスタイルを提案した。ファーストルックは、ずばり白シャツ。ライトグレーのドローストリングパンツにインして、VネックのTシャツを覗かせた。このシャツは、コットンポリエステルの混紡糸で織り上げたもので、シワになりにくく柔らかなタッチが特徴だ。その後“太陽の光と影”からインスピレーションを得たという本コレクションを象徴するアイテムが次々と登場した。光のプリズムをイメージしたカラー、シャドーモチーフ、濃淡が織り交ざった組み絣染め、ニュアスンのあるグラデーションを生むろうけつ染め、しぼり染めなどの手法で、光と影が織りなす、リズム感のあるコレクションに仕上がった。
リック オウエンス(Rick Owens)
インビテーションとしてマスクを招待客に送った「リック オウエンス」。1年前のショーと同様に、パレ・ド・トーキョーの屋外スペースに建築現場の足場のようなランウェイを設置しショーを開催した。
ショーの序盤は、フィット&ボリュームのシルエットのルックが中心。上半身裸、シワが出るほどタイトなトップスやデニムジャケットやミドルフ丈のブルゾンなどと、サイドボタン付きワイドパンツやデニムスカートなどを合わせる。
ショーの中盤になると、大ぶりなコートのルックが登場。中でも、切り込みを入れたのか、それともパネルを重ねたのか、特殊な表情を持つオイスターホワイトのポンチョがインパクトを与える。その後、ナイフで切ったかのようなディテール、ポールを入れてテントのような造作のルックでショーを締めくくった。
ところで、今回のショー。事前に必ずマスクを持ってくるようというアナウンスがあった。その理由は、ショーの演出だ。ショーの中盤になると色とりどりの煙幕が焚かれ、むせ返すほど。様々な演出の仕掛けで話題となってきた「リック オウエンス」。今回もSNS上で話題を呼んだようだ。
ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)
「ドリス ヴァンノッテン」は、デンマークの建築家でデザイナー、ヴェルナー・パントンが残した作品とコラボレーションした。ミッドセンチュリーモダンの象徴ともいえる「パントンチェア」を生み出したことで知られるヴェルナー。彼の独特の図柄と色彩を、ドリスがアレンジして服に重ねた。
ヴェルナーの持つ色の強さが全体を包む。カーブ、キューブ、開いた手など様々なプリントを通じて、色の力が伝わる。褪せた色と強い色、強められた色と弱められた色のコントラストも楽しい。目をひくのは海や日差しのような色、そしてレインボーカラー。ハーフパンツなどのサマーアイテムとも相まって開放的なムードが広がる。
シルエットは、リラックスしたものが中心でありながら、肩はジャストに合わせた。これにより、マスキュリンなイメージに。素材では、光沢ナイロンが新鮮。フィールドコートやステンカラーコートなどのアウターに使用し軽やかかつ艶やかに羽織ったり、同素材異色の組み合わせたり、ボトムスやウエストポーチに使用してアクセントとして効かせたりした。
ロエベ(LOEWE)
「ロエベ」は、クリエイティブ・ディレクター、ジョナサン・アンダーソンが子供時代の思い出をコレクションにした。毎回、独特の世界観でゲストを魅了してきたが、今シーズンは誰もが笑顔になる仕掛けを用意した。それは、ボンボン。床一面に、カラフルなボンボンを敷き詰め、まるでおもちゃ箱のような空間をつくりあげた。
コレクションのルックも、ショートパンツがボトムのキーとなり、少年のイメージ。素材もコットンキャンバスやカゴなど子供が着ても嫌がらないような、快適でナチュラルな素材を多くとりいれた。
モチーフも楽しい、ライオンモチーフやカラフルなチェック、太ボーダー、そしてジョナサンお気に入りのディズニーキャラクター、ダンボをあしらったアイテムも。
また、同時に新ラインも発表。ファッショニスタな男性とは別のアウトドアファッションを好むようなリアリティを重視する男性に向けたもので、リュックなどのアイテムを来春発売するという。
ヘロン プレストン(HERON PRESTON)
パリ メンズで2回目となるプレゼンテーションを発表した「ヘロン プレストン」。今回は、ミニショー形式での発表だ。会場には、大工の男性たちが箱を作りながらゲストを迎える。ショーが始まると、モデルが、男性たちがつくった箱を持ってウォーキング。ウォーキングした後は、その箱に立ってポージングするという仕掛けだ。発表したコレクションはワークアイテムが中心。そこに、シリアル番号やコードなどの工業製品ディテールや90年代スポーツを入れ込んだ。そして、中国語で、テイストやスタイルを表す言葉“風格”の文字も目をひいた。「ナイキ ヴィジョン(NIKE VISION)」とコラボレーションしたアイウェアも発表した。
ピガール パリ(PIGALLE PARIS)
「ピガール パリ」は、ミュージカルでコレクションを発表した。ミュージカル形式のショーではなく、ミュージカルの演者が、ピガールのアイテムをまとうというもの。演者は、踊り手、歌い手で分かれており、踊り手は薄いパステルカラーのスポーツアイテム、歌い手はスパンコールなどの煌びやかなアイテムを着用。ネオングリーンのライニング、ボタン部分の縁がいくつにも連なったデニムパンツ、コンバースとのコラボスニーカーなど目をひいた。
取材・文:山中健(Takeru YAMANAKA)