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2018.06.13
第1弾は高機能ダウン オンワード樫山が独自のイノベーション力をブランド化する「Avandced System」事業スタート
(左から)中島篤デザイナー、オンワード樫山の樋口剛宏執行役員宣伝・マーケティング室長、大澤道雄同社社長、江角泰俊デザイナー
オンワード樫山(東京、大澤道雄社長)は今秋、独自開発した技術や機能を“ブランド化”する事業に乗り出す。新事業「Avandced System(アドバンスド システム)」は、特許商材やそれに類する独自の技術・機能を自社ブランドや気鋭デザイナーの商品に導入。他社ブランドへのライセンス販売も計画しており、30代を中心とした新規顧客獲得や、百貨店以外の販路拡大、海外での販売強化などにつなげる。第1弾となる高機能ダウン技術「ADS(アドバンスド ダウン システム)」は、初年度で6万点・25億円の売り上げを目指す。来期2019年度以降は、「ADS」以外の技術・機能の販売も行い、「加速度的に事業を拡大する」(同社)。
「Advanced System」の事業構想について説明する樋口剛宏執行役員宣伝・マーケティング室長
「Avandced System」の第1弾「ADS(Avandced Down System)」は、特殊テープ「Zテープ」をキルトステッチの代わりに用いた新構造ダウン技術で特許も取得。多くの空気を羽毛が含み高保温、針穴がないためダウンが吹き出しにくい、縫い目が少ないため触り心地が柔らかい、といった利点がある。ステッチがないため、通常のダウンよりデザインの自由度が広いのも特徴だ。2017年度にメンズで2万着をテスト販売し、プロパーで消化率70%と好調に売り上げを伸ばしており、「独自技術をブランド化、事業化できる手応えを感じた」(オンワード樫山の樋口剛宏執行役員宣伝・マーケティング室長)
2018秋冬では、レディス11ブランド、メンズ6ブランドで販売する「スタンダード(STANDARD)」と、社内の公募デザイナーや外部の気鋭デザイナーを起用した「ニュー ジェネレーション(NEW GENERATION)」の2ラインでスタート。2019秋には、著名デザイナーやクリエイターとのコラボレーションライン「プレミアム(PREMIUM)」も販売。来シーズンの2019春夏以降はライセンス販売も計画する。価格は、「スタンダード(STANDARD)」で5万円台、ニュー ジェネレーション(NEW GENERATION)」で8万円台後半に設定した。
中島氏がデザインしたのは、MA-1をベースにしたミリタリーブルゾン。「ミリタリーブルゾンに見えて、実はダウンジャケット。デザインの幅が広いのは、ADSならでは」。江角氏も、「デザインの自由度が高いのでディテールにこだわることができる」とコメント。
「ニュー ジェネレーション」ではすでに、「ATSUSHI NAKASHIMA」の中島篤デザイナーと、「EZUMI」の江角泰俊デザイナーが、「ADS」を用いたアウターを2018年秋冬コレクションでそれぞれ発表。「ADS」について、中島氏は、「デザインに広がりができると感じた。将来性のある技術だけにぜひ世界に発信してほしい」とコメント。江角氏は、「ダウンは着ない、という人たちの概念を覆したかった。「ADS」は、デザインの自由度が高いため、テーラードやチェスター、トレンチ、ピーコートなど様々な要素を取り入れた新しいダウンジャケットを作ることができた。昨冬も低気温が続いたので、今冬も需要アップに期待したい」とコメントした。中島、江角両氏がデザインしたアウターは、自身のブランドと「ADS」とのダブルネームでそれぞれ発売する。
「Avandced System」では、「ADS」で2019春夏に春向けダウン、2019秋冬に秋冬ダウンを販売する計画。今後は、第2弾以降も、同社が持つ技術や機能、価値をアイテムに落とし込み販売していくとともに、ライセンス展開も視野に入れる。「トレンドを発信する従来型のブランドではなく、独自のイノベーション力をブランド化していく事業。積み重ねてきた独自の技術開発力はある。それをどう我々が“設計”し、商品、ブランドとして育てていけるかが鍵。2、3年以内に100億、200億円規模に広げたい」(大澤社長)。