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2018.05.15

【CEOに聞く】オリジナル社がスマホ起点のサービス開発に注力 急拡大するCtoCマーケットにも対応

オリジナルスティッチ社CEOのジン・コー氏(左)と、日本でジェネラル・マネージャーを務める上垣賢司氏

 オンラインカスタムシャツブランド「オリジナルスティッチ(Original Stitch)」を運営するオリジナル社(米サンフランシスコ、ジン・コーCEO)は15日、衣料採寸アプリ「メジャーボット(Measurebot)」を同時発表した。2日に発表した最新版「スタイルボット(Stylebot)」8日に発表した身体採寸ツール「ボディグラム(Bodygram)」の最新版と併せ、ユーザーが手持ちのスマートフォンで簡単に利用できるサービスであることが強みだ。よりパーソナライズ化されたサービスへのニーズ拡大に応えるため、「オリジナルスティッチ」におけるカスタムオーダーの技術・サービスの精度向上に注力してきた同社だが、フリーマーケットをはじめとするCtoC市場の急成長に伴い、同社の技術・システムを個人や他社向けに提供することにも目を向ける。来日したオリジナルスティッチ社CEOのジン・コー氏と、日本でジェネラル・マネージャーを務める上垣賢司氏に話を聞いた。

 

急拡大するフリマ市場での利用を想定した「メジャーボット」

 

メジャーボットを起動すると同時に、カメラ機能が立ち上がる。必要なのは、A4用紙。紙のアウトラインを読み取り、そこから衣服のサイズを割り出す仕組み。測定結果(サイズチャート)と測定の際に撮影した画像は、出品アイテムの詳細情報として活用できる

 きょう15日にサービスを開始した「メジャーボット」は、スマートフォンで衣服を撮影すると、併せて撮影したA4用紙から衣服のサイズを割り出すAIアプリだ。「オリジナルスティッチ」に搭載している「ボディグラム」の技術を活用したもので、フリーマーケットサービスの台頭に伴い、ユーザーがスマートフォン向けアプリとして利用できるよう開発した。

 ユーザーは同アプリを使用して、あらゆる服のサイズ表を簡単に作成することができる。「メルカリ」や「ラクマ」などのフリーマーケットサービスに自身の衣服を出品する際、サイズ表などより詳細な商品情報を掲載することで、販売機会の向上につなげることができる。米国での特許も取得した。

 「メルカリやラクマ、ヤフオク、ゾゾユーズドなどCtoC市場がグローバルなムーブメントになっていて、日本だけでも1億人が利用していると言われる。そのなかで最も多く取り扱われている商材がアパレル」とコーCEO。「売り手が商品をアップロードしても、サイズがわからなければ売り手は買わないだろう。フリーマーケットサービスなど消費者間で扱われる中古品はサイズがクリアではないことが多く、サイズ問題はCtoCアパレルについてまわる。それを解決しなければ、と考えたことが、「メジャーボット」開発の起点になっている」(コーCEO)。

 「誰が見てもわかるサイズチャートを出品者自身が作成できるのが「メジャーボット」。出品情報の1つにサイズチャートがあることで、購買率が上がり、購入後の返品率を下げることが可能になる。売り手にも買い手にもハッピーな好循環が生まれることが期待できる」(同)と話す。

スマホで簡単に身体採寸ができる「ボディグラム」

 

正面と横向きの写真をそれぞれ撮影しアップロード。コンピュータービジョンが身体のシルエットを認識し、首周りや肩幅、胴囲などの測定場所を読み取り、サイズを測定する。どのような背景であっても身体を検出できるのも特徴。また従来、背中が丸まっている、肩の位置がずれている、直立できていない、といった状態では正確な採寸はできないが、「ボディグラム」はこうした状態での採寸の許容度も向上させた。

  「ボディグラム」は、スマートフォンで身体を撮影すると、プロのテイラーのような精度で身体を採寸・測定ができるというツール。5月8日に出した最新版は、自動的に指定された対象物を認識する従来版の高機能マシンビジョンを踏襲しつつ、より精度の高いコンピュータアルゴリズムを採用。ユーザーの身体を撮影することによって、ベストフィットするアイテムを提供するというものだ。

 テイラーの熟練した技術や測定テープなどの特別な器具を必要とせず、スマートフォンのアプリで撮影するだけで、ユーザー自身が身体を採寸できるのが強み。「従来身体を採寸するには、テイラーによるプロの技術、あるいは特殊な服を着て3Dスキャナーを使う必要があった。いずれも敷居が高かったり、膨大な費用がかかるもの。多くの人が持っているスマートフォンを使える点が大きい」(コーCEO)と話す。

 今夏の正式リリースを予定しており、アパレルブランドや小売り店での利用も視野に入れている。「S、M、Lといったサイズはブランドによっても地域によっても定義が異なる。特にアパレルECを利用するにあたって、身体のサイズを把握することは、売り手にとっても買い手にとっても重要。「ボディグラム」があれば身体のサイズが簡単にわかるため、商品の返品率低下にもつながる。また、アパレルブランドなどに提供すれば、お客に合うサイズをプロアクティブに提案することにもつながる」(コーCEO)。

カスタムシャツのオリジナル社「ボディグラム」最新版を発表 スマホで簡単に身体採寸

似合う色・アイテムを教えてくれるAIコンシェルジュ「スタイルボット」

上垣ジェネラルマネージャーをモデルに試してみた。上垣氏の肌の色や髪の色などを考慮し、パステル系のシャツを中心にリコメンド

  「スタイルボット」は、顔と手首の裏側を撮影し、2枚の写真をアップロードすると、そのユーザーに似合うシャツを自動的に選び出すスマートフォンアプリ。写真をアップロードすると、性別や人種、年齢、肌のトーン、メガネの有無、髪型、鼻の形など全10項目をAIが瞬時に認識。スタイリストが実際に採用しているスタイル理論やカラー理論にもとづき、被写体に合う色や、「オリジナルスティッチ」のアイテム約8,000点の中から似合うシャツの種類を選び出す。実際にそのシャツが買える商品ページへのリンクも表示し、購買機会の創出も促している。

 5月2日に発表した最新版は、昨年11月に発表した同サービスをアップデートしたもので、今回のアップデートで、より正確なスタイルレポート(認識結果)を提供するため、膨大な数のトラフィックとより高精度な顔検出技術を処理できる安定した基盤やサーバ環境を採用した。SNS上でそのレポートを共有できるソーシャル共有機能も追加したことで、友人や家族がそのユーザーに似合うアイテムをギフトとして贈ることも可能にした。

 「将来的には、ファッション企業とのパートナーシップを結ぶことも視野に入れている」(上垣賢司ジェネラルマネージャー)といい、「膨大な商品点数を抱えるファストファッションブランドで導入したり、百貨店の販売スタッフが接客の際などに活用できるだろう」という。(コーCEO)。

他企業への提供も視野に 似合う商品を自動診断するAIアプリ「スタイルボット」をバージョンアップ カスタムシャツの米オリジナル社

アパレルECを使うすべての人がターゲット

 5月に3つのサービスを立て続けに発表した。その背景についてコーCEOは、「ファッションに限らず、パーソナライゼーションを求める流れは今後も続くだろう。アパレルに関していえば、カスタマイゼーションにおけるパーソナライゼーションと、ファストファッションにおけるパーソナライゼーションという2つの大きな流れがある。ファストファッションの場合、数ある既成品の中から、その消費者に適したものを提案する。カスタマイゼーションの場合は、その消費者が好む世界で1つのサイズやデザインを作ることができる」と説明する。同時に、「将来的にはファストファッションはカスタマイゼーションの波に飲み込まれるだろう。テクノロジーによって、マスに対してカスタマイズされたサービスを提供する動き“マスカスタマイゼーション”の動きがますます広がる」と加えた。

 そのマスカスタマイゼーションへの需要に応えるのが、同社のサービス開発。いずれも、スマートフォン向けのアプリであり、アパレルブランドや小売り店での利用も視野に入れている点がポイントだ。「全世界で所有者が20億台といわれるスマートフォンで利用できるサービスであることに、大きなポテンシャルがあると感じている。カスタムメイドの服は、テイラーに出向いてこだわりのアイテムを作るという一部のごく限られた人のためのものだったが、例えば「ボディグラム」を利用して、これまで既成品だけを買っていた人にもぜひカスタムメイドのよさを知ってほしい」(同)。

 「オンラインで商品を買う人には「ボディグラム」や「メジャーボット」を、おしゃれをより楽しみたい人には、「スタイルボット」を利用してもらえる。数値的な目標はないが、近い将来CtoC市場において、誰もが私たちのサービスを利用している、というのが私たちのビジョンだ。おしゃれへの感度の高い人から、おしゃれをすることさえ面倒な人たちまで、すべての人がターゲットになり得る」(コーCEO)。

オリジナルスティッチ 公式サイト

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