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2023.08.08

「ネイプ」が2024春夏コレクションを発表 “neutral position”をテーマに強さをミリタリーのカラーとアイテムに昇華

「ネイプ(NAPE_)」が2023年8月6日、東京・下北沢のADRIFTで2024春夏コレクションを発表した。“neutral position”をテーマにした今回。強さをミリタリーのカラーとアイテムに昇華し反骨精神をパンクディテールに落とし込んだコレクションを見せた。
 
日曜日の夕方。「下北沢盆踊り2023」が下北沢駅東口前特設会場で開催され、駅周辺にはたくさんの人が集まっている。人混みを通り、下北線路街にあるreloadに隣接するエンターテインメントスペースに到着すると、街の喧騒(けんそう)とは対照的に熱帯雨林の森のように鳥や虫の声のような音が静かに流れる、ショー会場は夕日のような赤の光に照らされ、前シーズン同様に、ステージには生演奏のための様々な楽器が並んでいた。

 

 コレクションは、20世紀のアメリカの画家ジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングをほうふつさせる、”アブストラクトカモフラージュ”オールインワンでスタート。ゲリラのように顔を隠したモデルが着るのは、古着の軍服のような雰囲気のカーキのジャケットと、前シーズンも登場していたボディバッグのような立体的ポケットを付けたパンツ。ミリタリーテーストの黒い袖なしジャケットとカーゴパンツにも、ポロックのドリッピングのようなペンキをたたきつけたように色が付けられる。
 
 生演奏が続く中、登場するのは、裏返して着るインサイドアウト風トップスとカーキや、黒とギリシャ神話の”パエトンの墜落”にインスパイアされたアフガンストール柄をドッキングさせたコートやジャケット。そして、立体的ポケットとは対照的な、平面的ポケットをアクセントにしたジャケット。インビテーションやジャケットの背中など、今シーズン繰り返し使われたプリントに描かれた人物は布に覆われ何かを扇動しているように見えるが、赤い旗にはアラビア語で “昼寝”と書かれていて精神的余裕の重要性を強く訴えている、という。

 前回に続き、ミリタリーなど、メンズのベーシックアイテムを素材やディテールで変化させ、通常のファッションショーとエンターテインメントの境界線をなくすことに挑戦したコレクション。山下達磨は「例えば、スイスは永世中立国だが、軍隊は強い。強い意志を持っていないと中立ではいられないというところからミリタリーがベースになり、パンクの反骨精神をファスナーなどのディテールで表現した」と話す。
 

 また、今回下北沢でショーを開催したのは「下北沢盆踊り2023」を意識したのかを聞くと、「それは狙っていますね。ファッションはもっと楽しくあるべきだし、開かれたものであるべきじゃないかと思っているので、あえて日曜日にしたんです。バイヤーも来たい人だけくればいいくらいのテンションで、まずは一般の人に広くファッションを楽しんでほしかったので、今回は有料で見られるようにしました。エンターテインメントがあって収益構造ができればもっとファッションは楽しくなれるんじゃないかと思っています。そのため、有料のアフターパーティーなども行います。フジロックにはいろいろなアーティストが出ていますが、今後はいろいろなブランドにも声をかけていきたい。今回はスペースの関係で一般の入場者は100人弱ですが、最終的にはフジロックのファッション版のようなものができればと思っています」という答えが返ってきた。

 

 エンターテインメントとファッションの融合や有料でのショーは、あの山本寛斎や中川正博と阿世知里香の二人が手掛けたブランド「20471120」なども行っていたもの。だが、パリメンズコレクションに参加するデザイナーやパリの展示会に参加するデザイナーが楽天ファッション・ウィーク東京以前にショーを行うブランドも増え、また、コロナの影響でのデジタル発表を経て、自分のブランドに適した発表方法や会場を模索するデザイナーも増える中で、「ネイプ」が考えるような方向性が今後どうなっていくのかも注目されそうだ。

 

取材・文:樋口真一

Coutesy of NAPE_

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