2023年6月26日、「マークジェイコブス（MARC JACOBS）」は米ニューヨークの公立図書館で、2023秋冬コレクションを発表した。

 
　29人のモデルが通常のショーでいえばフィナーレのように闊歩し、全体でたったの３分間。史上でもっとも短いショーとなった。そしてまたコレクションのリリースは、ＡＩが作成したものであるのも、新しい試みで、常識の概念をうち破るマークらしい皮肉さが見てとれる。

　今回のコレクションでは、メンズウェアにインスパイアされ、女性用にデザインされたテーラードスーツがキーピースとして披露された。ガウンのシリーズも多く、複雑なドレープ、左右非対称のヘムライン、巧みなディテールに目が惹かれる。

　カラーパレットはブラックとホワイトを基調として、モノクローム・ファッションが印象的だ。胸元をビスチェのように強調したデザインで、女性らしいフォルムを見せながら、レングスはマイクロミニが主流で軽快だ。

 
　その足もとを飾るのが、黒のタイツにフラットシューズの組み合わせだ。黒のシアータイツがフェミニンな雰囲気を出すと同時に、白いソックスとフラットシューズが実用性を備え、速いスピードで闊歩する力強い女性像を演出してみせた。

　現地メディアでは、モデルたちのヘアカットが「ブレードランナーのダリル・ハンナに似ている」という声が多く、たしかにあの強くて、スピーディで、人間離れした美しさを持つ女性像を彷彿とさせる。
 
　メンズウェアを女性向けに再構築することで、従来のジェンダー規範を覆して、優雅さと力強さにあふれた現代の女性像を提案してみせた。
 
文：黒部エリ

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