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2019.03.11
【2019秋冬パリコレ ハイライト10】ロゴとコピーが溢れた2010年代が終了、独自性とは何か
2019秋冬パリコレクションが終了した。10年代という名前付く最後のシーズンとなった今回。コレクション直前の2月19日、長年「シャネル(CHANEL)」を手がけ、常にパリコレクションの話題の中心となるスペクタクルなコレクションを見せてきたカール・ラガーフェルドが死去したことも10年代が終わり、何かが変わることを象徴しているようにも見えた。
そうした中で、トレンドとなったのはフローラルモチーフなどの自然からのインスピレーションやリラックス、スポーツ、グリッター、チェック、黒ときれいな色。相反するトレンドを共存させ、複数のトレンドをリミックスしたデザインなども目を引いた。
だが、コレクションが閉幕した今、トレンド以上に残っているの「セリーヌ(CELINE)」、「バルマン(BALMAIN)」、「ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)」、「サカイ(SACAI)」、「ラコステ(LACOSTE)」など、ブランドのアイデンティティとデザイナーの個性をぶつけ合わせたブランド。
トレンドを取り入れながらも、それ以上にアイデンティティの強さが際立つ、ある意味、変わらないようにも見えるブランドのコレクションだった。毎シーズン、時代の空気感をプラスしながら一目でそのブランドとわかる一貫したスタイル、それはパリコレクションはもちろん、東京のメガショーなどの他の国でのショーまで、「シャネル」のコレクションでカールが見せてくれたもの。インターネットで色や形が世界中に一瞬にして知られ、コピーされるとともに、ファッションショーをする意味までが問われる今だからこそ、改めて、形や色を超えた空気感や、ブランドの原点とも言える一目でそのブランドとわかるアイデンティティとスタイルが求められている。
サカイ(SACAI)
「サカイ」はシルエットとアブストラクション、ハイブリットを通じて具体化。 実用性の高いフォルムを採用しながら、抽象的な概念から構築された大きなフォルムの上に別のフォルムの要素を重ね、体にフィットするよう新しいハイブリットをリミックスした。ミリタリーやコート、ダウン、ニットなどをつなぎ合わせたデザインやファスナーでつなぐアイデア、ジャクソン・ポロックをたたえ、彼のスタジオの床に残されたアートピースを用いたというアクションペインティング風の柄などを組み合わせ、日常を非日常に変えてしまうようなデザインはサカイらしいもの。だが、春夏らしい軽い素材を使った前回に続き、今シーズンは同じ色や調和する色を使用し、シルエットをフィットさせたことで、更にシックでリアルになっている。
ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)
「ノワール ケイ ニノミヤ」はローズをテーマに、バラのモチーフを使い、とげを持つバラのような美しさと強さ、クラシックなムードとロックやパンクのムードを併せ持つコレクションを見せた。たくさんのバラを配したドレス、黒のライダース、建築的なスカート、花瓶のようなドレス。春夏のタンポポや光のような白とは対照的な赤と黒。一見するとバレンシアガなど美術館に飾られているオートクチュールドレスのようなデザインとストリートファッションのようなデザインが共存するコレクション。
ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)
「ハイダー アッカーマン」もブランドのアイデンティティと相反する要素が共存するコレクション。アニマル柄をドッキングさせたえん尾服のようなデザインやエスニックムードをプラスしたジャケットとパンツなど、シャープなラインとアニマル柄、都会的なムードとエスニック。「ハイダー アッカーマン」らしいデザインと対照的なモチーフがミックスした、アーバントライブという言葉ではくくり切れない独特のムードとデザインに仕上げられている。
ビューティフル ピープル(beautiful people)
「ビューティフル ピープル」は洋服の内側に着目したコレクション。ライナーと洋服の間に体が入るデザインによって新しさを表現したというデザインによって、コートやトレンチコート、ドレス、ニットなどは体に沿い、体そのものを強調する。また、洋服の内側とともに、皮膚の下に隠れているものにも注目し、血液の流れや筋肉、内臓を暗喩したかのようなフラワーやボタニカルモチーフを使っている。東京でコレクションを行っていた頃のクラシックやトラディショナルなデザインでも、インサイドアウトなどのアバンギャルドでもない新しいものを模索しているよう。
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イーチ アザー(EACH OTHER)
「イーチ アザー」はマスキュリン・フェミニンという言葉がぴったりのコレクションを発表した。メンズアイテムとブラトップ、肩を出したニット、ボタンでパーツをつなげたマニッシュなシャツ。スーツやジャケットなどマニッシュなアイテムにもドレープをデザインしたアイテムを組み合わせている。
ジュンコ シマダ(JUNKO SHIMADA)
「ジュンコ シマダ」はフォトグラファーSimon Eeles氏によるムービーとともに、ゆっくり商品を見てもらいたいという狙いからブティックでプレゼンテーションを行った。招待状にティータイム×虎屋と書かれた今シーズン。お茶やお菓子を楽しみながら、ゆったりとコレクションを見るという趣向だ。店内に並ぶボディには島田順子らしいチェックに光沢感をプラスしたジャケットやスカート、コーティングされたコートとニットパンツ、フローラルモチーフのドレス。鳥の脚や唇のモチーフのネックレスなど、シュールレアリスム的なアクセサリーもアクセントになっている。