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2019.02.13

【2019秋冬NYコレ ハイライト3】ネオン、マルチ、アーシー、ストロングカラー…溢れる色の数々

 今季はショーや展示会の数が減ったNYファッションウィークだが、来場者たちのファッションにも、そしてランウェイに表れるカラーパレットも、NYでは今までにはないほどカラーに溢れている。カラーに関しては不景気を感じさせないファッションウィークとなった。つぎの秋冬シーズンも色彩が主役の座に踊り出そうだ。

 ここではフェミニンで華やかなルックを得意とするブランドと、その反対にストリートのスポーツウエアを打ち出すブランドをハイライトでお届けしよう。

アディアム(ADEAM)

 前田華子が手がける「アディアム」は、9日にスプリングスタジオで、2019秋冬コレクションのランウェイを打った。

 今まで一貫して、前田華子は“1920年代の日本のモガたち”や“90年代の原宿ガール”といったように日本のカルチャーをインスパイア源にしてきたが、今季は“アイヌ”をそのインスピレーションにしたという。アイヌといっても、その伝統的な柄やデザインをそのままなぞるものではない。冒頭からターメリック、カカオ、グレーのグレンチェック、シエンナ、チェストナッツといったアースカラーが登場して、色彩パレットからナチュラルさを感じさせた。

 そして「アディアム」らしい構築的なシャツや、フリルを施したスカート、さらに白いシャツの縁に黒いフリルを飾りつけたデコラティブなデザインなど、細部にこだわったピースが続く。後半には、袖を構築的なデザインに作りあげたデニムのドレスや、ツートーンのデニムのボールスカートなどが登場。声高にならない程度に、アイヌの伝統的パターンを利用したシャツやスリップドレスも披露した。

 目を奪ったピースが、人工皮革のボリュームあるトレンチコートで、デニムや革といったハードな素材を、華やかでフェミニンに仕立てる手腕が前田華子らしい。ラストは、たっぷりとスカートにボリュームのある、ブラックのボールガウンがフィナーレを飾った。

「アディアム」2019秋冬コレクション

 

ジョン エリオット(JOHN ELLIOTT)

 「ジョン エリオット」の会場は、もと海軍の造船所跡地であるネイビーヤード。そこにある巨大な倉庫を使って、9日にメンズ、ウィメンズのコレクション、全56ルックを発表した。建築途中の木材が組まれたセットのなかを、モデルがウォーキングしていく演出が、建設現場のテーマ、そしてワークウエアを原点としたコレクションを感じさせる。

 今季の特筆すべき点は、キャタピラー社と初のコラボレーションをしたことで、CATのロゴが入ったフーデッドパーカやカーゴパンツ、セーターなどに表れた。カーキ、ブルーなどの色彩パレットに、建設現場らしく、コートの裏にあしらったネオンイエローや、ジャケットのイエローが差しこまれる。

 またテイラードされたダブルブレストのジャケットやコートも登場して、基本となるストリートテイストの幅を広げてみせた。

 ウィメンズは、よりシンプルさを追求して、ファーストルックはカーキ色のコートに、同じくカーキ色のアノラック、そして細身の膝丈ショートパンツという組みあわせで、スポーツウエアながら、クリーンさを印象づける。

 テーラードされたジャケット、あるいはコートに、ボディコンシャスなワンピースという着こなしや、ボディにぴったりと沿うアシメントリーのワンピースに、「ジョン エリオット」の新しい面を披露した。

「ジョン エリオット」2019秋冬コレクション

トリーバーチ(Tory Burch)

 「トリーバーチ」が10日に打ったランウェイの会場に選んだのは、サウスシーポート。窓の向こうには川と橋が見えるという絶景のロケーションだ。2019秋冬のテーマは“ブラックマウンテン・カレッジ”。これは、1930年代にカリフォルニアで創設されたアートを中心とする実験的な大学で、多くのアーティストを輩出したところだ。

 まず登場したのは、メンズライクなグレーのクラシックなコートで、金具でボタン留める形式になっている。シャープにテイラードされたコートやジャケットが次々と登場して、今季のランウェイの主役を担った。

 グレーのタートルネックニットにプレイドのパンツや、ピーコート風のジャケット、プレイドのウールコート、シアリングのコートなど、クラシックなアメリカンスポーツウエアのアイテムも目立つ。そして拮抗する、もうひとつの主役が、対照的にフェミニンなアイテムだ。

 ピエロカラーがメインのモチーフとなって、素材もシフォンなどの柔らかで繊細なものが多く、ふんわりとしたラッフルや花柄が女らしさを匂わせる。かっちりとしたコートに、フェミニンなドレスを組みあわせるスタイリングが、今季のコーディネート提案になっている。さまざまなプリントをパッチワークしたカフタンは、いかにも「トリーバーチ」らしい。

 テーラードのメンズライクなシャープさと、フリルたっぷりのフェミニンさを組み合わせた世界観を見せてくれたコレクションとなった。

「トリーバーチ」2019秋冬コレクション

アリス アンド オリビア(alice + olivia)

 ステイシー・ベンデッドが手がける「アリス アンド オリヴィア」は、11日にプレゼンテーション形式で、秋冬コレクションを披露した。テーマは「ファンタジア」。デザイナーであるステイシーのイマジネーションを駆使した夢の世界だという。

 その言葉通り、もと教会だった建物の内部は、たくさんの花や蝶のインスタレーションで飾られ、雪山やバラの園も出現した。蝶が飾られた一角には、花や蝶プリントをまとったモデルたちが並ぶ。そしてヒョウやゼブラ、タイガーなどのアニマルプリントが、ダウンジャケットからワンピース、トップス、ボトムズ、ブーツに至るまで縦横無尽に描かれる。コーディネートも花プリントパンツに、ヒョウ柄のトップス、さらに蝶プリントのジャケットと柄オン柄だ。パンツはジョガー型を提案して、クロップ丈のトップスと合わせてみせる。

 中でもワイン色のサテンのストレートパンツと、ベルベッドのジャケットを合わせたパンツスーツが90年代調で目を奪い、また肩パッドや深く胸元をあけたミニが同じく90年代調を打ち出していた。

 カラーパレットは、真紅からジュエルトーン、ブラックアンドゴールドまで、まさに全色展開。コンスタントにレインボーカラーを発表し続ける「アリス アンド オリヴィア」だが、今季はレインボーカラーのスカートをフェザーやスパンコールで表現してみせた。シグネチャーともいえるスパンコールを駆使して、パーティシーズンにむけたグリッタリーなルックが多い。どのピースもトレイシーらしくカラフルで、デコラティブな味つけをしたコレクションとなった。

「アリス アンド オリヴィア」2019秋冬コレクション

取材・文:黒部エリ

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