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2018.09.23
【ミラノ2019春夏 ハイライト3】日本人セレブで話題を呼んだトッズ、50周年エトロ、表記を変えたヴェルサーチェなどがショー開催
ミラノコレクション3日目は、「トッズ(TOD’S)」のショーからスタート。アンバサダーである榮倉奈々の来場、俳優樹木希林の孫で本木雅弘の息子、UTAがウォーキングするなどSNSなどで話題を呼んだ。他には「ブルマリン(BLUMARINE)」、「スポーツマックス(SPORTMAX)」、「エトロ(ETRO)」、「エムエスジーエム(MSGM)」、発音と表記を変えた「ヴェルサーチェ(VERSACE)」などがショーを行った。
トッズ(TOD’S)
今回、メンズとの混合ショーを行った「トッズ」。同ブランドにとってメンズのランウェイショーは初。イタリアらしい上質なライフスタイルを追求するトッズの本質は、ウイメンズとメンズを一緒に見せることでより完成されたものになるようだ。今回のコレクションでもテーマを「AN ITALIAN ATTITUDE」としてそんな世界観を強調した。
もちろん主役はブランドのDNAであるレザーだが、それはより軽くソフトに。また様々の種類のレザーのミックスやパッチワーク、そしてクロシェ編み、フリンジなどの手の込んだディテールも加えられてまさに変幻自在。トレンチ、ボンバー、サイドストライプの入ったトラウザーやショーツ、ひざ丈スカートなど一見オーソドックスなアイテムにも、よく見るとその職人技が際立っている。
それをシャツの胸元は大きく開けてウエストイン、袖の部分をロールアップ、首元にはバンダナ・・・とスポーティやトラベルの要素を入れたコーディネートで見せている。また甘いアプリコット色や鮮やかなブルーを差し込んだり、エンブレムのようなプリントを使うことで、モード感も添えている。それに呼応するかのようにメンズもソフトでリラックスしたルックがメイン。スーツもスエードやコットンなどの素材のものをノータイで。デニム風プリントを施したレザー、パイピングやステッチを効かせたジャケットやブルゾンなどスポーティなアイテムも多い。
特に自慢のクラフツマンシップに特化したかのような印象を受ける今回のコレクション。見れば見るほど(多分実際に来たら尚さら)その味わいが増してくる。「トッズ」が謳うタイムレスとはまさにこういうこと言うのかもしれない。
ブルマリン(BLUMARINE)
今シーズンの「ブルマリン」はスポーツギアとロマンチックのミックス。というより、油と水をどんなに混ぜても混ざらないように、対極のテイストが歴然として存在感を残したままのミックスが面白い。それはコントラストというよりあえて作った不協和音という感じ。
ジムでそのまま使えるようなブラトップとショーツやショートレギンスを「ブルマリン」お得意なエアリー素材にラメやスパンコール、刺繍が施されたロマンチックなドレスやトップに合わせる。上からはおることもあれば下から覗かせることもあるが、お互いが存在を強調し合っている。スポーツテイストのテープやブラやショーツのゴム部分のロゴを目立たせるコーディネートも多いし、スポーツウエアに甘いフラワープリントを施しているものもある。
ギリギリのバランスを保った完成度の高いコレクションだが、もともとの「ブルマリン」独特のロマンチックテイストや、職人技の効いた服作りの土壌があるからこそ成功するかなり挑戦的なものだと言えよう。
エトロ(ETRO)
オープニングではサーフボードを持ってモデル達が登場、そこからはカリフォルニアの海、太陽、ビーチ・・・といった楽しく開放的なイメージが続く。そこにはサーフやヒッピー又はボヘミアン的な要素が。例えば、まるでウエットスーツのようなニットフィットスーツ、ネオプレン素材のジャケットやパッチワークのロングローブ、ルースパンツやエアリー素材のボリュームドレス等々。
太平洋をハワイへと渡れば、ハイビスカスやヤシの実などアロハシャツ的なプリントも。大きなつばのハットやエアリー素材のミニチューブドレス、リネンジャケットなどがリゾート感を演出する。
そして向かうは日本。着物に使われるような和風のプリントから藍染のようなテキスタイル。または道着のようなボリューミーなジャケットや着物のようなガウン、または帯、甲冑のようなベルト等々のディテールまで、日本人からの目から見ても違和感がなく、その研究の深さが垣間見られる。お得意のカシミール模様を始めとするプリントもテイストに合わせてポップだったりサイケだったり、オリエンタルだったり。様々な関連性のない要素が一緒になっているのに、「エトロ」らしい世界観は決してぶれることがない。ヴェロニカと共に彼女の父であり「エトロ」の創業者、ジンモやメンズのクリエイティブディレクターの兄キーンも登場し、ハッピームード満載のショーのフィナーレを見ていたら、こんなファミリーの結束が確固たる世界観を築き、崩れない主軸がブランドのパワーとなっているのだろうと納得させられた。
エムエスジーエム(MSGM)
薬箱のようなパッケージングの中に、薬剤情報書のようにして入っていた「エムエスジーエム」のインビテーション。その処方(または薬名?)として明記されているのが「DREAM」。今回のコレクションは、クリエイティブディレクターのマッシモ・ジョルジェッティからの“夢を見るのはポジティブな事。一緒に夢を見よう”というメッセージだ。
それを表現するのが、フラワーモチーフやタイダイ風プリント、ジャージーのストレッチ素材やエアリーで透け感のあるものや光沢感のある素材など、鮮やかな原色やネオンカラーと言った要素を盛り込んだ、楽しくてロマンチックなピースたち。フラワー柄やプリントは透け感や光沢感のある素材でスーツやドレス、セットアップなどでトータルで使うことが多く、一方、ジャージーストレッチはコンシャスなミニドレスやインナー、ドレープを持たせたロングドレスなどで。
お得意のロゴやスローガンは、「DREAM MSGM」などと一部に使われたのみでストリート色も薄い。通常とはがらりと違うテイストはひとときの“夢”のように今回だけで終わるのだろうか?
ヴェルサーチェ(VERSACE)
アーカイブを見直したり、もともとのDNAやオリジンに立ち返ってそれを革新していくというアプローチは、実績のあるブランドならどこもやることだが、最近その傾向は強いように思う。「ヴェルサーチェ」に関しても、ジャンニの没後アニバーサリーの時のオマージュコレクションが記憶に新しいが、今回のコレクションでもアイコン的な要素がふんだんに使われている。
強い原色を多用したパワージャケットやオフショルダーやワンショルダーのボディコンシャスなミニドレス、アニマルやチェック、ドレープ使いのドレスや大きなスリットの入ったスリップドレス、プリントonプリント…それをフラワーモチーフやスポーツテイストなど今シーズンらしい甘さをちょっと入れて「ヴェルサーチェ」らしく仕上げている。
ランウェイにはこちらもジャンニの黄金時代を彷彿させるがごとく、現代のスーパーモデル達が続々登場し、最後は往年のスーパーモデル、シャローム・ハーロウがフィナーレを飾った。
キッカ ルアルディ(CHICCA LUALDI)
また今回初参加の「キッカ ルアルディ」はマンダリンオリエンタルホテルにてサロン形式のミニランウェイショーを発表。もともとは建築家だったデザイナーが作るコレクションはファッショントレンドからは距離を置き、クラス感のある女性のためにクオリティを重視し、着る人のパーソナリティを引き出すタイムレスなピースがメイン。
今シーズンはNYのサウスハンプトンで過ごす上品で洗練されたニューヨーカーたちの、スポーティかつシックでエレガントなイメージ。そこに伊建築家ジオ・ポンティやルーマニアの彫刻家コンスタンティン・ブランクールからのインスピレーションを盛り込んでいるのだとか。ジオメトリックな様々な大きさのドットやストライプを多用した白やブルーを基調とした色使い。構築的なバランスやカットから生まれるシルエットが奇をてらうことなく演出されている。
ブルガリ(BVLGARI)
3日目はプレゼンテーションもラッシュ状態。「B GLAM」というテーマで、黒を基調とした都会的でグラマラスなセルペンティの新コレクションを発表した「ブルガリ」。展示会デコレーションともなっているチェーンは新作バッグのデザインのポイントで、チェーンその幅を計算して変えることで立体的な装飾がなされていたり、フリンジとして動きをもたらしたり。ミラーの付いた若々しいバージョンから、パイソンのうろこに合わせてゴールドを貼ってモチーフを作ったゴージャスなものまで登場。
ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)
「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」はより都会的でフェミニンな女性をイメージし、同ブランドが誇る最高級のクオリティをよりデザインや機能性に広げたコレクションを発表。軽くてやわらかくかつ美しいラインを作るカシミア、シルク、リネンを中心に、ニットやレザー類も充実。または撥水性、防風機能を備えた素材を使ったトラベルジャケットや容量たっぷりのトートバッグなど機能的なアイテムも。
セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)
アンブロジアーナ図書館という1600年代からある古い図書館を会場とし、伝統的なものとアーティスティックなデザインのコントラストを強調したsr MILANOの展示会を行った「セルジオ ロッシ」。今回は白を多用しあえてデザインにあえて余白を残したようなシリーズやヌードカラーのストラップが付いたヌーディなデザイン、フリンジやPVC素材を使用したピースが特徴的だ。
取材・文:田中美貴