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2018.09.23

【ミラノ2019春夏 ハイライト4】見せつけるイタリアブランドの力 初公式ショーを行ったゼニアグループのアニオナ、65周年のミッソーニ、圧巻の展覧会を開いたエトロ

(写真:サルヴァトーレ フェラガモ)

 4日目は「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」に始まり、「ロベルト・カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)」、「エルマンノ シェルヴィーノ(ERMANNO SCERVINO)」、「フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ(PHILOSOPHY DI LORENZO SERAFINI)」 、今回からミラノファッション協会の公式カレンダーに入った

「アニオナ(AGNONA)」、「エリザベッタ・フランキ(ELISABETTA FRANCHI)」、65周年アニバーサリーショーとなる「ミッソーニ(MISSONI)」などがショーを行った。

フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ(PHILOSOPHY DI LORENZO SERAFINI)

 今シーズンの「フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ」は、アラブの砂漠の遊牧民のようなイメージだろうか?カフタン、アラビアンパンツ、ショーツ+ショートブーツのコーディネーション、アラブのタイルのようなプリントなどが登場。とはいえ、それはベタなエスニックやアドベンチャーテイストではなく、ドレープ、ルーシュなどのディテールや、刺繍やレース、または透ける素材の多用で、都会的でフェミニンに仕上がっている。

「フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ」2019春夏コレクション

アニオナ(AGNONA)

 ミニショー形式でコレクションを発表してきた期間を経て、前回、初めて本格的ランウェイショーを行った「アニオナ」は、今シーズンよりミラノファッション協会の公式ブランドとしてショーを開催。

 アーティスティック・ディレクターのサイモン・ホロウェイは今シーズン、女性パフォーマーのジョーン・ジョナスの、自身の作品の中心に自らを置くというアプローチ、特に作品の中でファッションと服が合体された表現方法にインスピレーションを得たとか。彼女が実際にパフォーマンスの中で鳥のシルエットを描く姿を撮影する際に鳥のプリントのドレスを着たような感じで、鳥類のプリントやシルクツイルやパール、スパンコールで覆われた植物などが登場している。

 今シーズンも、ビキューナポプリン、ウールカシミアポプリン、ダブルフェイスカシミアなど、エクスクルーシブな最高級生地が重要な役割を果たしており、ブラウン、朱色、スモーキーイエローなどのマットなアースカラーを使ったトーンスタイルを、素材の表情の違いでみせている。アイテム自体はスーツ、トレンチコート、シャツ、ブルゾンなどどちらかというとマスキュリン。かつパッチドポケット使い、エプロン風ベルトやワークブーツなど、ワークテイストのイメージまであるのだが、柔らかく流れるようなボリュームやシルエットで女性らしく仕上げている。また今回はシルクオーガンジーで透け感をだしたり、大きく開襟してブラを見せたりといった、センシュアルな部分が登場しているのが目を引く。・・・が、それはあくまでアニオナらしく。ジョーン・ジョナスからのインスピレーションと言うのは、前出の鳥モチーフなどの具体的な影響だけでなく、“洋服自体が控えめながらその良質さで「アニオナ」というブランドの存在感を示す“という本質的な部分も彼女の中に重ねているのではないだろうか。

「アニオナ」2019春夏コレクション

 

エリザベッタ・フランキ(ELISABETTA FRANCHI)

 今シーズンの「エリザベッタ・フランキ」のテーマは「I WEAR MY DREAM」。

 例えばクラシックなダブルブレストのコートがバックトレーンが付いたようなシルエットになっていたり、ビジネススーツのジャケットとボトムの素材が全く違っていたり、フォーマルなスーツにレタリングプリントがなされていたり・・・と、クラシックなアイテムに素材やディテール、そして鮮やかなカラーで派手さを入れることで、夢の中で起こる不思議でゆがんだ世界を表現しているようだ。またはスパンコール、刺繍、PVCを使ったアクセサリーなどのきらきら光るディテールが、夢の世界のような幻想的な雰囲気を醸し出す。

 実は、奇しくも他にも“夢”をテーマに挙げているブランドはあったが、常に独自の路線を突き進む「エリザベッタ・フランキ」だけに、ネタかぶりの心配など全く不要で、今回も独特の世界観を展開した。

「エリザベッタ フランキ」2019春夏コレクション

ミッソーニ(MISSONI)

今回、ブランド設立65周年のアニバーサリーショーとなった「ミッソーニ」。旧見本市会場跡にできたシティライフという建物のテラスにて、作曲家マイケル・ナイマンの生演奏がBGMという贅沢な趣向でショーが行われた。

 今シーズンのイメージは、世界を超えたクロスカルチャー。異文化が接触することで生まれる融合や反発を、洋服においてのミックスチャーとコントラストで表現しているようだ。ソフトでエアリーな素材を多用し、レイヤードしたり巻き付けたり。全体的にロングフォルムの流れるようなシルエットのアイテムが多いが、ロングONロングや膝丈ほどあるドレスにワイドパンツを合わせるレイヤードがノマドな雰囲気を醸しだす。またルーレックスを多用したり、長い糸を垂らしたようなフリンジが人の動きによって様々な表情を創り出す。

 今シーズンのトレンドのひとつとして、原色やネオンカラーの強い色のミックスが挙げられる中、全体的に柔らかいペールカラーで統一し、もちろんジグザグ、ストライプ、ウェーブなどの柄は登場するものの、すべてが控えめなのが逆に目を引いた。ショーの最後にはナイマンが映画「ピアノレッスン」に使われた代表作を演奏、「ミッソーニ」ファミリー一同も壇上に並び、大喝采の中でのフィナーレとなった。

「ミッソーニ」2019春夏コレクション

ジミー チュウ(JIMMY CHOO)

 4日目も重要な展示会が多く開催された。「ジミー チュウ」は、80年代のクチュールやブランクーシの彫刻をイメージソースに女性の強さ、自信などを表現。女性の体のラインを誇張したような流線的なフォルムが特徴的だ。また夏らしいリネンやラフィアとのコンビや、その一方でゴージャスなベロアを用いたモデルもあり、素材使いも様々。またダイアモンドのソールにはめ込んだようなデザインの「ダイアモンドスニーカー」がデビュー。ジミー・チュウならではのクチュール感溢れるスニーカーだ。

バリー(BALLY)

 「バリー」の今シーズンのインスピレーションは70年代のカリフォルニア。セピアの写真の中に商品だけに色がついたように撮影してあった広告写真からのイメージで、すべてピンクに塗られたフリーマーケットのような空間の中に商品を並べている。ブランドのオリジンを強調した今回のコレクションでは、アーカイブモデルからの復刻、元々はリボン工場だった同ブランドの原点を物語るようなリボンのついたモデル、スイスの自社工場の緯度を入れたスニーカーなどが登場。また先日のメンズコレクションで登場した、テニスプレーヤー、ジャコブ・ラセックが使用して1991年に優勝したアーカイブモデルのスニーカー「チャンピオン」の復刻版のレディスモデルも発表。

エトロ(ETRO)

 夜にはカルチャーミュージアム(MUDEC)にてエトロ50周年記念展覧会のオープニングイベントが。同ブランドの50年の歴史を物語るアーカイブピース、キャンペーン写真、ショーやインタビュー映像のインスタレーションからファミリーゆかりの品々や家族写真までを展示。これらが時間軸ではなく、テーマごとに分けて5つの部屋にて公開されている。エトロファミリーの意向で同展覧会は10月14日まで一般に無料公開される。

取材・文:田中美貴

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