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2020.10.30

米国年末商戦、セールよりもサービスの差別化で勝ち残る

「Sephora (セフォラ)」の店舗

コスメ&ビューティー:「Sephora (セフォラ)」

 私が普段買い物をするブランドやリテーラーの中で、最初にホリデー関連のお知らせメール配信があったのは「Sephora (セフォラ)」でした。アメリカではクリスマスギフトに、フレグランスやコスメ、スキンケアのギフトセットをプレゼントする人も多く、百貨店だけでなくセフォラの様なコスメに特化したお店でも多くのギフトセットが発売されます。9月28日にセフォラから送られてきたメルマガには、“ホリデー気分を感じるのに早すぎるということはない”とメッセージがあり、内容はセフォラでのみ購入できるギフトセットをプッシュするものでした。

 

 このメールを見た時、早すぎる!と一瞬思ったのですが、セフォラのロイヤリティープログラム「Beauty Insider(ビューティーインサイダー)」では、ルージュメンバーというトップランクの会員限定で、毎年9月半ば頃に店舗イベントとしてギフトコレクションの発表を行っています。ですから実際は、恒例のギフトコレクションのお披露目を今年は店舗で行わずオンラインで開催するというものでした。9月13日の1日限定で開催されたこのオンラインイベントでは、ルージュメンバーに限り先行でギフトセットをオンライン注文する事が出来ました。ホリデーコレクションは、その1週間後に一般公開されています。

ライフスタイルブランド:「Anthropologie (アンソロポロジー)」

「Anthropologie (アンソロポロジー)」の店舗

 毎年ホリデーシーズンともなると楽しみなのがアンソロポロジーのホリデーウィンドウとホリデーギフト商品です。商品の雰囲気は代わり映えしないのに毎年ワクワクさせられるのは彼らのVMD力にあるのだと思います。ホリデーウィンドウやホリデーギフト商品の立ち上がりは、ハロウィンの終わり、11月へ突入するサンクスギビング前に行われます。しかし、今年はすでにウィンドウもホリデー仕様。店内にはギフト商品のコーナーが立ち上がっており、出来る限りソーシャルディスタンスが保てるように、什器の配置が調整されています。10月中旬には、ホリデーの先行ショッピングイベントのお知らせがブランドの会員メンバーに届き、全品25%オフのプロモーションを実施されました。気分的にはハロウィンのイベントが終わって少し落ち着いてから、ホリデーについて考え出すのが一般的なので、やはり今年は早いですね。

グローサリーストア:「Target(ターゲット)」

「Target(ターゲット)」店内の様子

 「Target(ターゲット)」ではこれまでより一足早い10月13日・14日に、ホリデーセービングのイベント「Deal Days」を開催し、家電、ホーム、日用品、おもちゃ、ビューティーなど、お得な価格の商品を取り揃えました。ホリデーシーズンのプロモーションは12月まで続き、昨年よりも多くお買い得商品を用意するそうです。また、ブラックフライデーの特別価格は11月いっぱいまで提供されるそうです。

 

 ターゲットでは品揃えとお得感だけでなく、非接触で商品を受け取る「カーブサイドピックアップ」 、オンライン注文を店舗で受け取る「クリック&コレクト(Order Pickup」、そして「同日配達サービス(Same-Day Delivery」といったお客様に喜ばれるサービスも充実しています。

 

 また、混雑が予想されるホリデーシーズン時の店舗では、店舗の従業員及びお客様の安全対策をさらに強化するため、入店人数の制限を設けます。新サービス「Target.com/line」 では、ウェブサイトで現在地の郵便番号を入力すると、周辺の店舗がリストアップされ、外出前に周辺店舗の混雑状況を確認する事が可能となりました。混雑していなければ “No line (行列なし)”と表示されますが、店舗が混雑し、入り口に列が出来始めている場合は、“順番を確保”し、入店可能な順番がくるとテキストメッセージ(SMS)で知らせてくれるというサービスの様です。

 

 こうしたサービスは、レストランで利用した事があります。ニューヨークの人気レストランではランチ時に非常に混雑し、事前に予約をせずにいくと当然待ち時間も長くなります。その際には、レセプションで携帯番号を伝え、テーブルの準備ができるとショートメールが送られてきます。ターゲット のサービスも感覚的にはこれと同じだと感じます。

 

「Target Circle(ターゲットサークル)」では様々な会員特典が利用できる

 今年、ターゲットでは更にお得なサービスが準備されています。11月1日から12月24日までの期間限定で、プライスマッチという、あらかじめ限定された一部の競合店での商品価格と比較してターゲットの価格が高い場合、購入日から14日以内であれば価格を合わせてくれるというサービスです。さらに、従来プライスマッチのサービスは14日間限定だったそうですが、今年は初となるブラックフライデーのプライスマッチサービスも追加されています。お客様が “ブラックフライデー価格”と書かれた商品を購入し、のちにターゲットの店舗もしくはオンラインストアでより安い価格で見つけた場合、その差額を返金してくれるそうです。

 

 こうしたサービスを享受し、ターゲットでの買い物を店舗・オンライン双方で最大限楽しむためには、「Target Circle(ターゲットサークル)」という同社の無料ロイヤリティープログラムに加入する必要があります。多くの人々が生活の様々な部分で厳しさを感じている中で、ホリデーの喜びだけはいつもの様に楽しめるよう、ターゲットはお得なプロモーション期間を延長し、品揃えだけではなくサービスも充実させることで、競合リテーラーとの差別化をはかっているようです。

百貨店:「Norstrom (ノードストロム)」

「Norstrom (ノードストロム)」の店舗

 百貨店の「Norstrom (ノードストロム)」でも早々にホリデーギフトガイドが準備されています。毎年、女性向けギフト、男性向けギフト、キッズ&ベビー向けギフト、ペット向けギフト、誰に贈っても喜ばれるギフトなどカテゴライズされたギフトガイドを提案するノードストロム。すべてセンスが良く、お手頃な価格から少し背伸びをした価格、そしてラグジュアリーな物まで幅広く取り揃え、ラインナップを見るだけでもワクワクします。

今年は、ウィズコロナという事もあり、ノードストロムでも先ほど紹介したターゲットのような様々なサービスオプションを提案しています。

 

 *店内で安心してお買い物を(Safe In-Store Shopping:「従業員の健康管理」、「お客様そして従業員に対してマスク着用のお願い(持ち合わせていない場合は提供)」、「ソーシャルディスタンスを保てるよう人数の制限」、「清掃や除菌の頻度を増やす」、「試着室は使用毎に清掃」、「一部店舗によっては営業時間を変更」、「非接触型サービスとしてカーブサイドピックアップを用意」、「ノードストロムのカードメンバーに対して、コンタクトレス決済を用意」。

 

 *バーチャルアドバイスのサービス(Nodstrom Styling:希望の店舗とスタイリストを選択し、オンライン上でスタイリングアドバイスを30分間無料で受けられ、体験後にはスタイリストのおすすめ商品が発送されるサービス。送られてきた商品は、欲しい商品は購入でき、気に入らない場合はすべて返品しても構わないというプレッシャー無しのサービスです。

「Ask your stylist to create your look」を利用時の様子

 また、スタイリストに相談してトータルコーディネイトしてもらう「Ask your stylist to create your look」といったサービスもあります。オンラインサイトもしくはアプリから相談したいスタイリストを選択し、チャットで好みなどを伝えると、スタイリストがおすすめ商品をピックアップしてくれます。このサービスはサイトにログインした状態で行うため、チャットページでの会話を通じて利用する形になります。

 

 私も試しに、“セーターを探しているけれど、フィットしすぎず、だけどオーバーサイズでは無いスタイルの物があれば教えて欲しい”とアドバイスを求めてみました。後にチャット画面には6つのおすすめのセーターが掲載されたムードボードが送られ、気になるニットを選択すると、詳細情報が画面右側に表示され、気に入った場合はそのまま購入できるようになっていました。

この他にも、今年のホリデーシーズンには特に嬉しい、ビデオチャットを活用したギフトショッピングのお手伝いも用意されています。

 

 *受け取り(Pick Up Today:欲しいものが決まった際、店舗に行くか、それともオンラインで購入するか、商品の受け取り方法のオプションがアメリカでは複数用意されています。ノードストロムでは、店舗を最初に設定し、その店舗に在庫があることを確認しながらオンライン注文をし、それらを店舗で受け取るクリック&コレクト(Buy Online, Pickup In-Store)と、オンライン注文し、希望の店舗を発送先に選択する(Ship to Store)二つのサービスがあります。また、今アメリカでは非常に人気のサービスである非接触で商品を受け取るカーブサイドピックアップ (Curbside pickup Pickup)にも対応しています。

 

 この様なサービスをお客様に先ずは試してもらうため、ノードストロムではキャンペーンを実施しています。10月25日までにオンラインで買い物をし、カーブサイドピックアップ もしくは、ストアピックアップのサービスを利用すると、$10のギフトカードが11月16日までにメールで送られてくるという内容です。そのギフトカードは11月16日~12月16日までの1か月間利用可能だそうです。

 

 今回紹介したビューティー、ライフスタイルブランド、グローサリーチェーン、そして百貨店。この3つの異なるリテールの共通点は、単に特別な価格や品揃えだけでホリデー商戦を勝ち抜くのではなく、サービスで差別化を打ち出しているように感じます。これからも当分ウィズコロナが続く私たちの生活においては、充実したサービスやこれまでよりも進化した便利なサービスが、店の選択基準となり、商品を際立たせるポイントになるのかもしれません。


 

 

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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