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2017.03.22

パリ・トレードショーで奮闘する日本ブランド

パリ・セカンドセッションのトレードショー「プルミエールクラス

 パリ・セカンドセッションのトレードショーには多くの日本ブランドが出展した。またJETRO(日本貿易振興機構)は、これらデザイナーの支援を続けており、今回は14ブランドが「プルミエールクラス(Premiere Classe)」に、3ブランドが「パリ・シュールモード(Paris sur Mode)」に、13ブランドが「トラノイ(TRANOI)」に出展していた。

トラノイ

カシラ

 10年前から出展している「カシラ(CA4LA)」は今回、アンゴラ系のフワフワしたものに当たりがあり、ボンボンが取り外しできるものやコームが付いて風に飛ばされないなどの機能性のあるものも人気だったという。

エム・アンド・キョウコ

18年前から海外市場に挑戦し、ここ数年、トラノイに継続出展する山形のニットメーカー、佐藤繊維の「エム・アンド・キョウコ(M&KYOKO)」は、ニット専業の得意技を生かした商品が好調だ。「生地が凝っている場合、形はシンプルに」を心掛けている。デニム生地にニットのパッチワークを施したスカートなど得意技を盛り込んだ布帛アイテムにも当たりがあるという。同時に本社近くに直営店を開き、仕入れを行うようになってからバイヤー視線で見方が変わり、「うちの商品は入るだろうか」と自問自答するようになり、品ぞろえにも変化が出てきたそうだ。

スズサン

 「スズサン(SUZUSAN)」は11回目の出展。3年前から始めたニットに当たりがあり、L型に染めたセーターや佐藤繊維の18ゲージのニットに板締め絞りのチェック柄を表現したものなどが評判良かったようだ。

コケット

 「コケット(COQUETTE)」は、ウーマンに2回、ザ・ボックスに2回出展した経験があり、前回からトラノイに出ている。和紙で作られたレザーに見えるバッグや編み込み風のレザーバッグなど技術力が必要な凝ったものに絞って持ってきているそうだ。特に和紙のバッグは軽さに驚かれるという。

カシュ・カシュ

 婦人服の「タージュ(TAGE)」、傘の「トーキョープリント・カネイ(TOKYO PRINT)」、アクセサリーの「ビジューフルール(BIJOU FLEUR)」、籠バッグの「ララ・アンド・ハート(Lara&Heart)」、スカーフの「イロウタ(彩詩iro‐uta)」の5ブランド共同で出展したのはカシュ・カシュ。ふわっとしたファーの籠バッグが人気で触りも多く、またサイズ展開をヨーロッパに合わせて初挑戦した婦人服もシンプルな中にオリジナル素材を生かしたコレクションに興味を持たれたという。

プルミエールクラス

チャカアズ・ノウ・アズ

 靴の「チャカ(CHAKA) 」とマフラーの「アズ・ノウ・アズ(AS KNOW AS) 」を出展したDJBは、凝ったマフラーにも引き合いがあり、またスニーカーソールにウイングチップなどのビジネスのアッパーを乗せ、バイカラーなどでアクセントを付けたシューズも披露した。「形は見たことあるけど、色や素材で変化を付けていくことが大事」という。

ショセ

 靴で13年前から出展している「ショセ(chausser) 」は、従来の革靴も置きながら、1年前に始めたトラベルシーンを想定したライトな靴を前面に出して反応を窺った。軽さやソールのカジュアル感で新たな取引先獲得に向けて訴求していた。

スミカネコ

 「スミカネコ(sumi kaneko)」は、10年前からパリの展示会に出展しており、プルミエールクラスは5年目となる。華奢で日本人らしい控えめなデザインのアクセサリーで、「日本でも売れているもの(小売価格10,000~1万5,000円)が、こちらでも売れる。ただ見せ筋も無いと売れて行かない」という。

ルーチェ・マッキア

 2回目の出展となる「ルーチェ・マッキア(Luce macchia)」は、スタート5年目のガラスのアクセサリーブランド。「世界中にはいろんな人種がいるので、その人たちが身に着けたら、どんな風に視点が変わるのか興味があった」と出展を決めたそうだ。

ノリコ・ヘロン・グラス・プラス・アート

 「ノリコ・ヘロン・グラス・プラス・アート(NORIKO HERRON GLASS + ART)」も2回目の出展。アーティスティックで付加価値の高い個性的なガラスで作るアートに近いものをアクセサリーとして出した。他にもシャンデリアなども作っているそうだ。

マクール

 ブランド設立3シーズン目の「マクール(MACOOL)」は2回目の出展。折り鶴の分解図や切り子をデザインしたスカーフを披露したが、特に8センチ幅で長さ150センチの細身のスカーフ(小売価格8,000円)に当たりが多かったという。

パリ・シュールモード

ハクエ

 初出展の婦人服「ハクエ(HaQue)」は、3シーズン目だが、ブランドスタート時から海外で販売することをメインに想定して世界観を作ってきた。水彩画のようなブルー系のプリント生地のシリーズが目立っていた。

ウーマン

ツユミ

 NY在住のデザイナーの熊崎つゆみさんの「ツユミ(Tsuyumi)」は、NYのウーマンに出展していたが、パリは初出展。11年前に帽子からスタートしたブランドで、4年前からニットも始めた。3シーズン前からネパールで生産し、日本の検品会社を通した後、NYからデリバリーしている。上質なウールで手仕事の温もりが伝わるニットは、物本位の欧米のバイヤーからも高い評価を受けている。

 この他にも数多くの日本ブランドがトレードショーに挑戦している。近年、韓国や中国のデザイナーブランドの進出も多く見られ、そのクリエーションレベルの高さと価格競争力の強さに圧倒される。日本の大手セレクトショップのバイヤーも、これらアジアブランドの買付意欲が旺盛だ。こうした中、価格競争力で劣る日本勢は、付加価値の高さや更なるクリエーティビティーで勝負しない限り、明日は見えない。官民一体となった日本ブランドの更なる押し出しが必要と言えそうだ。

■ トラノイ  http://www.tranoi.com/
■ プルミエールクラス  https://www.premiere-classe.com/en
■ パリ・シュールモード  http://www.parissurmode.com/
■ ウーマン  http://manwomanshows.com/shows/woman-paris
■ カシラ  http://www.ca4la.com/
■ エム・アンド・キョウコ  http://www.mkyoko.com/
■ スズサン  http://www.suzusan.com/
■ コケット  http://www.coquette.jp/
■ タージュ  http://tage.jp/
■ トーキョープリント・カネイ  http://kanei-tokyo.co.jp/
■ ビジューフルール  http://www.avanceur.jp/
■ ララ・アンド・ハート  http://www.lara-heart.com/
■ イロウタ  http://www.ms-trad.co.jp/irouta/index.html
■ チャカ  http://djb.jp/
■ アズ・ノウ・アズ  http://www.asknowas.com/ 
■ ショセ  http://chausser.net/
■ スミカネコ  http://www.sumikaneko.com/
■ ルーチェ・マッキア  http://lucemacchia.com/
■ ノリコ・ヘロン  http://www.norikoherron.com/
■ マクール  http://www.macooljapan.co.jp
■ ハクエ  http://haque-think.tumblr.com/
■ ツユミ  http://tsuyumi.com/
■ 日本貿易振興機構  https://www.jetro.go.jp/


 

 

久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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