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2017.03.17

乱立から淘汰へ 日本ブランドも注目するパリのトレードショー2017秋冬

(上段)プルミエールクラス/(下段)パリ・シュールモード

 2017-18年秋冬パリファッションウイーク中に開かれたセカンドセッション(通常3月と10月)のトレードショーは、主なところで「トラノイ・パリ・ウィメンズ(TRNOI Paris WOMEN’S)」「パリ・シュールモード(Paris sur Mode・以下SM)」「プルミエールクラス(Premiere Classe・以下PC)」「ウーマン(WOMAN)」と、SM内の「カプセル・パリ(Capsule Paris)」となる。この他に小規模トレードショーの「ジップゾーン(ZIP ZONE)」、「ヴァンドーム・ラグジュアリー(Vendome Luxuary・以下VL)」も開かれた。

地元パリの強さが顕著 「2強プラス1」の態勢に

ウーマン

 近年パリのトレードショーの動きは、数年前に米国から進出した「ディー・アンド・エー(D&A)」が撤退し、前回から同じく米国のカプセルがSM内に合流するなど、地元パリの主催者の強さが顕著に表れている。また、かつてレディスウェアの「アトモスフェール(Atomosphere)」と服飾雑貨の「ザ・ボックス(The BOX)」を主催していた仏婦人プレタポルテ連盟が、その運営を、PCを主催するWSNデベロップメントに移管。アトモスフェールがSMに、ザ・ボックスはPCへと出展者が引き継がれたことから、セカンドセッションは、トラノイとSM/PCの2強+日本人に人気のウーマンという「2+1(ツー・プラス・ワン)」の態勢となっている。ちなみにWSNデベロップメントは、ファーストセッション(通常1月と9月)に大規模見本市「フーズネクスト(WHO’S NEXT)」も開催している。

 

 さて、今季の会期は、SMとPCが1日早い3月2日にスタートし4日間。3日から一斉に他展も始まり、トラノイジップゾーン、VLが4日間、ウーマンは3日間だった。

 規模は、トラノイが昨年3月に3つ目の会場として使ったオーステルリッツ駅近くのセーヌ河畔にあるシテ・ド・ラ・モード・エ・デュ・デザインを止め、従来のパレ・ド・ラ・ブルスとカルーゼル・デュ・ルーブルの2か所に集約し、455ブランドを集めた。服飾雑貨のみを集めたPCは、チュイルリー公園に長いテントを設営して、484ブランドを集めた。隣接のコンコルド広場横にテントを張ったSMは99ブランド、併催のカプセルには38ブランドが出揃った。ウーマンは、レピュブリック広場近くの会場がセキュリティーの関係で使用できなくなり、ヴァンドーム広場に面した会場に移転し、90ブランドを集めた。VLは、チュイルリー公園向かいのホテルムーリスでイブニングドレスやハイジュエリー、アクセサリーを中心に21ブランドを集積。この2シーズンほど左岸のサンジェルマン・デ・プレ教会向かいの会場で小さく開いていたジップゾーンもチュイルリー公園から程近いノルマンディーホテルに移して開催した。

来場者減も日本勢のチャレンジ目立つ

(上段)トラノイカルーゼル/(下段)トラノイブルス

 全体を通して、出展者やバイヤーの声を聞くと「来場人数が少なくなった」「非常に静か」といった感想が多く、また個別のショールームからも「パリに来なくなっているのでは」との意見も出されていた。2015年のテロ以降、その影響は少なからず出ている模様だが、それ以上に先進国経済の停滞、中国をはじめとした新興国の成長鈍化といった経済要因の影響もありそうだ。またEC(電子商取引)の進展による小売りを経ない取引の増大やオンライントレードショーの台頭、グローバルSPAの市場占有率増加に伴う中小専門店の減少などの環境変化もここへ来てダブルパンチとなっていると考えられる。

 

 このような環境下だが、日本ブランドはJETRO(日本貿易振興機構)の支援を受けた14ブランドがPCに、3ブランドがSMに、13ブランドがトラノイにそれぞれ出展し、この他にも多くのブランドがパリのトレードショーにチャレンジしている(詳報・パリ・トレードショーで奮闘する日本ブランド)。すぐに結果を求めるには困難な道のりではあるが、海外市場開拓が官民挙げての課題だけに今後もトライする企業が続々出てくると予測される。

 

 それだけにパリのトレードショーやショールームの状況や条件、輸出に伴う様々な課題や具体的な事例を学びながら、まずは始めてみることが肝要かと思われる。


 

 

久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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