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2017.03.29

米国における次世代リテールとコマースを学ぶ 要注目のカンファレンス「ショップトーク(Shoptalk)」

今年で2回目の開催「ショップトーク」とは?

 世界中で開催されるリテール&テクノロジー系のカンファレンス。そのなかで今、最もおすすめなのが、2016年に米ラスベガスで初開催された「ショップトーク(Shoptalk)」。リテールとテクノロジーを繋ぐ次世代コマースにフォーカスした大型イベントで、有力企業&ブランドのCEOたちが数多く登壇。ウォールストリートジャーナルやCNBCテレビなど大手メディアがこぞって取材に来るなど、第1回目から注目を集めています。前年はスケジュール的に参加できなかったのですが、今年は極寒のNYを抜け出し、取材に行ってきました。

大手企業から注目のスタートアップまで 幅広いスピーカーが登壇

公式サイトでは、登壇者たちをイラスト付きで紹介。日本からは欧米にも進出している「mercari」、米メルカリの石塚亮CEOが参加した。

 ショップトークのコンセプトは、「DISCOVER」「SHOP」「BUY 」。「新たなテクノロジーの導入」や「ビジネスモデルの変化」なども重要な要素です。急速に変化する消費者のニーズにどう企業として向かい合っているのか、また、取り組んでいくべきなのかなどについて、消費者の好みやリテールに対する期待を含めて語られます。

 

 2回目の開催となった今年は、3月19日~22日の4日間に渡り開催。早朝から刺激あるキーノートやセッションが行われ、会場内では最新のテクノロジーやITソリューションを紹介する展示会も同時開催されました。大手企業だけでなく、スタートアップ企業のソリューションの紹介も積極的に紹介しているのが同イベントのみどころです。

 

 第1回目となった2016年度は3,100人以上がカンファレンスに来場し、2017年度は5,500人以上と規模を拡大しています。

 

・ 5,500人以上がカンファレンスに来場。
・ 2,200社以上の企業が参加。
・ 570人以上のCEOが参加。
・ 300以上の企業がスポンサーとして参加。
・ 220以上のメディアおよびアナリストが参加。

 

 330人以上が登壇するスピーカーの多くがCEOやヴァイスプレジデントというのがこのショップトークの魅力。今回は、ターゲットCEO兼会長のブライアン・コーネル氏や、ウォルマート・EコマースCEOのマーク・ローリー氏、米アマゾンペイのヴァイスプレジデントのパトリック・ゴティエ氏、ノードストロムCEOのケン・ウォーゼル氏などの顔ぶれが出揃いました。

最終日には、「Innovations in Consumer Payments(消費者の決済におけるイノベーション)」というテーマでセッションが行われ、サムスンペイやアリペイ、アマゾンペイ、アンドロイドペイのサービスについて、各企業による考えなどが語られた。

開催場所は大型カジノリゾート 各国の参加者と知り合うチャンス

 今年は世界40カ国以上から5,500人以上が参加したわけですが、参加国トップ5は、イギリス、オーストラリア、ブラジル、イスラエル、ルーマニア。会場ではちらほらと日本人の姿が見られたものの、その数は極々少数だったと思います。

 

 カンファレンスの会場となったのは、アリア・リゾート&カジノホテル(Aria Las Vegas Resort & Casino Hotel)。ラスベガスの有名ホテルが集まるエリアの1つで、ラスベガス国際空港からもタクシーで15分ほどの便利な場所にあります。

 

 カンファレンスの参加申し込みは、早ければ早いほど割引率が高く直前になればフルプライスを支払うことになります。また、カンファレンスへの参加申請と併せて、会場となるホテルへの滞在申し込みをするのがおすすめ。カンファレンス参加者には割引や特典が用意されています。

 カンファレンス会期中の宿泊には、朝食と昼食が含まれています。朝食はフルーツやヨーグルト、シリアル、卵料理、ソーセージなど日本人の口にも合う内容で、グルテンフリーのマフィンまでありました。昼食もパスタやサラダ、デザートまであり、かなり内容は充実しています。日本からの短期出張だったとしても、食事が偏ってしまう心配はなさそうです。

 

 ビュッフェスタイルの食事は、大きなテーブル席に自由に座るスタイル。相席になった世界各国の参加者と知り合う場にもなっています。恥ずかしがらず、積極的になればなるほど、カンファレンスに参加した意味が深まります。

実際の“トーク”の話題は?

 

 トークの話題は下記の通り。決済やSNSマーケティング、アプリに至るまで、どれをとっても気になるセッションが初日から最終日まで続き、どれに参加するべきか迷ってしまうほどの内容です。

・ 人口知能(AI)
・ 仮想現実/拡張現実(VR/AR)
・ カスタマーサービスとロイヤリティー
・ フルフィルメントとロジスティック
・ 店舗におけるテクノロジー
・ スマートホームとコネクテッドデバイス
・ デジタルマーケティング
・ マーケットプレイス
・ 測定と解析
・ モバイルテクノロジー

 

 今回は、「グローバル(ビジネス)の視点」、「リテールインサイト」、「O2O」、「デリバリーとロジスティックス」、「店舗でのインタラクティブなテクノロジー」、「投資と企業家精神」、「AI」、「コネクテッドコマース」「マーケティング」「決済」とできるだけ多くのテーマのセッションに参加してきました。

 

 4日間で100以上あるキュレートされたセッションから、参加する内容を毎日選択することとなるので、耳にした内容は参加者それぞれになりますが、カンファレンスで最も注目されていたのは「AI」だったと感じます。昨年は“モバイルファースト(Mobile First)” なんていうフレーズを至るところで耳にしましたが、今回のカンファレンスでは、“AIファースト(AI First)” と言う方もいて、AI時代の到来を意識せざるを得ないと感じました。

 

 また「カスタマーセントリック(=顧客起点)」「フリクションレス(摩擦がない=顧客が手間やストレスを感じないこと)」と言った言葉を多く耳にしました。

 

 そして「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)」の重要さ。パーソナライズしたサービスやアプローチがマストな時代となった今、個々のお客様の情報を管理・分析し、ブランドにとってお客様それぞれが特別な存在であると感じてもらえる関係作りが不可欠です。 SNSの活用やデジタルマーケティングを通じ、オンライン上で消費者とエンゲージする機会を増やす一方で、店舗やポップアップショップなどオフラインの場でにおける顧客との関係作りも忘れてはなりません。

NYを拠点とするブランドも多く参加

 今年も、「ボノボス」や「キャスパー」「アウェイ」「ハリーズ」など、各業界をディスラプト(破壊)したNY発のブランドがスピーカーとして数多く参加しました。

 

 ボノボスCROのErin Ersenkal氏によると、同社がブランドを創設した当初は、これまでになかったタイプのサービスについて、新規のお客様に説明するのに苦労したそうです。お客様はそのサービスの複雑な部分を体験することになるので、それを理解していただくことが不可欠だったのです。

 

 ですが、その後の成長は説明不要でしょう。2007年に創設し、今年で10年目を迎えるボノボスは、今では世界中のリテーラーから注目される企業へと成長しました。あるトークセッションの中で、司会者がいくつかのNYのスタートアップ企業の名前をあげ、知っている企業に挙手してもらったのですが、一番多く手が挙がっていたのはやはりボノボスでした。

 

テクノロジーの進化は加速している “様子見”が手遅れになる時代に

 

 今回のカンファレンスで感じたことは、今のリテールとコマースの変化は、まるでこの数年に見る環境変化にも似ているということ。例えば大雪が降るかもしれないとしましょう。それに対し、実際どれだけ積もるか分からないからと“様子を見る”のか。または、これまでの環境の変化を思い、「真剣に捉えて準備しないとならないな」と動くのか。実際に、そこで大きな差が出てくると思うのです。

 

 仕事を通じ、メディアを通じ、今のリテール業界の変化を皆さんは感じていないわけではないと思います。今はまだ、粉雪が積もるような感覚で暖かい屋内の中からその状況を見ている感覚かもしれません。しかしその雪は止むことはなく、降り続くのです。Eコマースのブームが起こった時のように、多少様子見をしていても追いつけた時代とは今はちょっと違うように思います。テクノロジーの進化やライフスタイルの変化は止まることはなく、加速するばかりです。雪は深々と気付くと降り積もっているのです。気がついた時には企業という屋根に水分を含んだ雪がずっしりと積もり、潰れてしまわないようにしなければなりません。

 

 自分たちでできることは、もちろんたくさんあると思います。ですが、パートナーシップを組んだり、他社に業務を委託・依頼することも選択肢の1つです。まず、自分たちのサービスの強みは何なのかについて明確にすれば、足りないことや進んでいかなければならない方向、改善しなければならないことなどが見えてくるでしょう。

 

 国内・海外で開催されるイノベーションの展示会やセミナーに積極的に参加するのも手です。ハードルが高い内容のものもあるかと思います。でも、知らないよりも、知っておくこと。少しずつでも知識をつけることがマストです。

SHOPTALK


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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